聖騎士は許可され神官は舞い上がる
あれから私達は稽古と狩りに明け暮れた
最近では団長や他の団員に褒められる事も増えてきたので狩りに費やす時間が増えてきた
3人ともレベルは初期職の上限の半分くらいになった所である
風の噂ではトップを走り続ける人でもまだクラスチェンジができていないようではあるのだがそう時間もかからずクラスチェンジする人は増えていくだろう
今しばらくはパラディンだー、って言えないね、と三人が話しながらも狩りをしているとそこに
『我が子らよ、呼びかけに応じて召喚されし外遊人よ、我が声が聞こえるか?我は光の神ヒッカリー、予言を与えるものである』
「え?なになに?」
「イベントか?」
「あー、なるほど、アサギ、敵連れてくるのちょっと休憩」
「うんうん!」
アサギだってイベントが気になって狩りどころではない
『我が子らよ、外遊人達よ、今より1ヶ月後に王都が闇に包まれる、手を取り合いこの世界を守るのだ』
「え、1ヶ月後ってどっちだ?こっち?」
「しっ!まだ終わってないかもしれないでしょ!」
『本日も「まおクエ」をプレイしていただきましてありがとうございます、GMのゲマスです、皆様今の予言をお聞きになりましたでしょうか、現地の時間で1ヶ月後、ゲーム外の時間では十日後の日曜日、○○月○○日にストーリーミッション「王都襲来」が開催されます、ストーリーミッションではプレイヤーの皆様が一致団結して設けられている課題をクリアしていきその結果次第で未来が変わっていく、といった仕様になっております、尚プレイヤーの皆様の当日のログイン数で敵の数などの難易度は変わっていきますのであまりにも難易度が高い、なんて事はなく皆様に楽しんでいただけると思われます、そして当日参加できないプレイヤーの皆様の為にストーリーミッションの結果に基づく流れになる1パーティ用のストーリーミッションを実装させていただきます、1パーティ用なので6人でも十分に楽しめる難易度を予定しております、ストーリーミッションも1パーティ用のストーリーミッションも併せて特別なアイテムは1人1つまでしか取れませんのでそこはご了承ください、イベントについての詳細はシステム、お知らせ、イベントからご確認下さい、「まおクエ」をプレイしてくださっている皆様に楽しんでいただけたら幸いです、では、こちらはGMのゲマスでした』
「えーと、話をまとめると来週の日曜日に王都にモブが押し寄せる、現地の人と協力してそれを食い止める、その結果によっては・・・王都壊滅!?」
「いや、アサギ、ダンチョーとかを倒せるほどの相手がくるならまだプレイヤーには勝てないわよ、だからまあ・・・今の所は大丈夫ね、ただしプレイヤーが強くなって行ったら・・・その時は頑張って壊滅しないようにしなきゃね」
「確かにダンチョーを倒せるモブなんて想像できないよなー、と言うかそんな相手と戦う想像もしたくねーぜ!」
それもそうだと少しほっとする
そうか・・・NPCと協力するイベントか・・・
「ダンチョーに話さないとまずいかなぁ・・・?」
光の神予言、つまりイベントの告知はNPCにも大きな騒動を巻き起こしたらしい
稽古に来たはずの私達はダンチョーがあまりにも疲れた顔をしていたので一緒にお茶を飲んでいた
「でな、今回の予言でなにかが王都を攻めてくるのがわかったんだが、俺達現地人は王都の守りを固める役目なんだとよ」
「そうなんですか、ダンチョー団長、頑張ってくださいね、私達は多分前の方に行くと思います」
「あー、そうだろうな、城のお偉いさんが言うにはどうせ死なないんだから敵に思いっきり当たらせろ!だとよ、いや、まあ、そこまで直接的には言ってないけど言いたい事はそう言う事だ」
「ま、まあ、確かにそう考えて当たり前かも知れませんね、私達は死なないけどこちらの人達はそうはいきませんから」
「俺だってそれはわかっている、だがそれは俺の「聖騎士道に反する!ですよね、ダンチョー団長」
「その通りだ」
「そこまで心配しなくても大丈夫っすよ、団長!俺達だけでなんとかしてみせますって!!」
「マーリン、ダンチョーの聖騎士道はそう言う事じゃあないんだよ!」
わからないかなぁ?聖騎士道
「まあ、そうなると現地の人との共闘はなさそう、って事なんですね」
セッキーが念を押すかの様に聞く
だったらパラディンロードの事は言わなくていいのではないか?そう言っているのだ
「ああ、外遊人には迷惑かけるがそうなるな」
「いやいや、皆稼ぎ時だー、くらいにしか思ってないっすよ、きっと」
それは私達も同じなのだが
「んー、そうか?それならお前達も稼げる様に今日から1ヶ月は更に厳しくしごいてやるかな」
「はいっ!!!」
「「ええーー!!!」」
あれ?2人は嬉しくないのだろいか?大分身体の使い方が上手くなってきたって言うのに
「流石アサギはダンチョー団長の聖騎士道を理解してるだけあるわね・・・」
「今以上厳しいってまた殴られんのか、俺はぁ・・・」
「はーっはっはっは!!!厳しくするとは言ったが厳しくするのは俺じゃあないぞ!」
「え、じゃあフクフ副団長ですか?」
にやり、ダンチョー団長が笑う
「お前らには墓地の迷宮に潜ってもらう!!」
その発言に驚きアサギはフクフ副団長を見る
「ん?ああ、別にダンチョー団長の独断じゃあないよ、私もそろそろと思っていたからね」
「お前らは運がいい、全員が全員教会が管理しているこの迷宮に相性がいい!アサギも光属性の攻撃手段が増えてきたからな!だから団長の名の下に迷宮入場を許可しよう!!」
「アサギ、マーリン、集合!!」
セッキーが囲んでいる机から立ち上がり部屋の隅に移動する
「ちょっと!ダンジョンよ、これ!」
鼻息を荒くして話てはいるがパーティ会話なのでこの3人以外には会話が漏れる事はない
「しかも墓地の、って言ったわよね!?今出回ってる情報にそんなのないわよ!?団長の許可って言ったから入場制限の解除の条件は教会との親密度かしら!?いえ、3人ともが相性がいいとも言ってたわ、攻撃手段も条件に加わるの?それとも強さ!?」
今の会話だけでよくそこまで考えが広がるな、とアサギとマーリンは1人盛り上がるセッキーを見ていた
「おーい、そろそろ続きを話していいかー?」
「あ、ごめんなさい!お願いします!」
ここまでセッキーのテンションが上がるとは思わなかった
「で、だ、この墓地の迷宮は教会が管理してると言ったな?墓地の裏の方にパラディンが立っていて入場規制をかけている場所があるのは知っているか?」
「あー、墓地は行った事ないですね」
2人を見ながらアサギが言うと2人とも頷いた
「そうか、まあ、死なないお前らじゃ行く必要もないだろうからな、そこにいるパラディンにこの許可証を見せろ、1人1枚ずつだ、見せないと入れないから必ず持っていけ、無くしたらまた出してやらない事もないが頻繁に無くすようなら信用も失うと思え」
そう言われて渡された物を確認してバッグに入れる
「よし、3人とも受け取ったな、ではこれから墓地の迷宮の説明をする、出てくるモブは全部スケルトン系、色が黒くなればなるほど強い、道は一本道、以上だ!」
「わかりました!」
「アサギ!待ちなさい!ダンチョー団長、敵の攻撃手段とか罠があるとかボスはどんなのとかドロップはなんなのかとかそういうのはないんですか!?」
「ん?ああ、そうだ、言い忘れてた、この墓地の迷宮は最大で6人でしか一緒に行動できない、それ以上はいると同じ場所なのに別の場所に行く事になる、あと入った時から数えて3時間以内なら外に出ても同じ場所に出る、倒したモブの復活はない、しかし3時間経つとモブが全て復活する、たまに宝箱も発見できる、これも3時間で復活だ」
「あー、インスタンスダンジョンなのね!」
「ん?外遊人はこんな造りの迷宮をそう呼ぶのか?」
「はい、所で先程の質問についてはもう良いのですが2つだけ質問させて下さい、その迷宮はこの教会だけで管理しているのですか?あと教会以外で迷宮を管理している所はありますか?」
「一つ目の質問については答えは違う、だ、全教会で管理をしている、だが許可証の発行は各教会で行ってよいとされている、二つ目の質問の答えは残念ながらわからない、だ、この墓地の迷宮も教会関係者以外で知ってる奴はいない」
「わかりました、ありがとうございます」
「んむ、質問はそれだけか?なら準備をしっかりしてから出かけるんだぞ」
「「「はい!」」」
「大変よ、2人とも、多分だけどこのダンジョンの情報を持ってるのは私達だけよ、インスタンスダンジョンだから秘匿する必要性がないのが残念ではあるけどね、まあ、情報を流した所で教会でお茶をご馳走になるくらい仲良くなるにはどれくらい時間がかかるかはわからないけれど、そうだ、マーリン!やっぱり貴方研究所の職員と仲良くなりなさいよ!あっちもダンジョンを管理している可能性が高いわ!」
「あー、なるほどなぁ・・・でもあいつらとどうやって仲良くなればいいのかわかんねぇなぁ・・・アサギはどうやって仲良くなったんだ?」
「んー・・・最初に会った時に稽古つけてください、って頼んでー、後は気合と根性と聖騎士道かな?」
「聞いた俺が馬鹿だったか・・・」
「この子ゲームの中ではわりとポンコツになるわよね、いや、聖騎士関連ではかしら?」
んーむ、聖騎士関連ならやむを得まい・・・
「何納得してるのよ、さ、準備しましょ!十日後のイベントまでに出来るだけ強くなっていたいわ!」
3人は駆け出した
6人用のダンジョンに3人で行く事が出来るのかなどとは誰の頭にも浮かんでいないようでその足取りは大分軽かった
ダンジョンなら敵が出るに違いない!




