聖騎士と裏切られた願い
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部屋には祈っている邪教徒以外の雑魚がいたのでアサギ達はまずはそれを片付けていく
「カクシテル神殿」の最後の部屋なのだろう、部屋の中にいる雑魚は数はそれほど多い訳ではないが密集していて一度に複数の敵と戦う必要があった
アサギが少しずつ敵を釣りだし部屋の中にいる雑魚を全て経験値に変えていく
「これであとは真ん中のあれだけだね」
「そうだな、「防御システム」が動くかどうかは別としてとりあえず支援は完璧にしてからやらないとな」
「そうね、流石に外でみたあの強さではないにせよ同じ事をしてくる可能性がないとも言い切れないしね、背中から敵が一杯でてきたら厄介だわ」
「んー・・・絶対乗り込むと思うんだけどなぁ」
「乗り込むならああやって崇めてる意味がわからないでしょ、というか邪教徒が「防御システム」を崇めてる意味はほんとにわからないけど、あれが信仰の象徴ならなんで外にでて敵を倒してるのかしら」
「んー、逆じゃね?敵を倒してくれてるから崇めてるんじゃないか?」
「んー・・・なるほど・・・」
「「防御システム」は邪教徒の神様からの贈り物なんじゃない?だから「防御システム」にああやってお祈りをしているとか」
「んー、ない話ではない・・・かしらね、あんな石像が動かせる技術がこの時代の人間にあったら王都だってもうちょっと文明が発達しててもよさそうだしね、荷車を押してる人がいたくらいだからあの技術はきっと王都に暮らしているNPCにはないんじゃないかしら」
「だろうな、まあ、海賊が撃ってきた銃なんかも王都の人間にはない技術ではあったけど」
「あれはでも将来新クラスとして導入されそうだけどね、海賊の銃を持っていくクエストがあったじゃない?クエストのテキストに技術を真似したいから持ってきてほしいって書いてあったくらいだからそのうちアップデートでクラスが増えるんじゃないかしら」
「あー・・・銃かー!いいなぁ!でも新クラスとなるとまた最初からレベル上げか、レベルキャップがあるとは言え2キャラ同時に育成は金かかるんだよなぁ」
「でももしクラスが増えたらやり出す人も増えるんじゃない?そしたらパーティーも組みやすいし野良は組みやすいと思うしそこまで大変じゃないかもよ?」
「それに発売されてから結構経つけどまだまだ新規が増えてるみたいだしね、もし実装されたら低レベルに経験値ブーストみたいなのもきっとあると思うわよ」
「確かにありそうだな、でもとりあえずはさっさとクラスチェンジしたいな、目指せハイウィザード!だ!」
「そうね、多分ここを周回してれば行けると思うから頑張りましょう」
「よし、じゃあやろっか!」
「「「「「おー!」」」」」
アサギ達は立ち上がり支援魔法や食事などでバフをかける
全てのバフが終わるとアサギが未だに祈り続けている邪教徒の方へと足を向けた
「よし!いくよ!頼むよー!乗り込んでくれー!」
アサギはそういうと邪教徒のお尻向かって走り出した
『貴様等!?何者だ!?賊か!?』
祈りを続けていた邪教徒の索敵範囲内にアサギが入ると邪教徒は横に置いてあった杖を手に取り立ち上がった
そして残念ながらその杖を振るいアサギ達に攻撃をし始めた
「ほら、やっぱり乗らなかったじゃない」
「いや!多分こいつは死にそうになったら「防御システム」に入って動かすんだよ!」
「ここのボスは回復ばっか使ってきたからなぁ、無いとは言い切れないな」
「そうね、それも無いとは言い切れないわね」
「うんうん、だからさっさとこいつのHPを削って「防御システム」に乗り込むところを見よう!」
「はいはい、魔法攻撃っぽいから油断するんじゃないわよ」
「うん!大丈夫!!」
アサギは邪教徒と「防御システム」の間で足を止めると挑発スキルを発動する
ヘイトをしっかりと固定すると邪教徒の背中へ攻撃が開始された
アサギの目の前にいる邪教徒の頭上に3つの色違いの球がゆっくりと回りながら浮かんでいる
邪教徒が杖を1度振るとその球のどれかから魔法がアサギへと発射されている
タンクからしてみたらとてもやりやすい相手と言える、攻撃の発射口はほぼ同じ所なので盾での防御がしやすいのだ
しかも魔法自体がそこまで速くはないのでそれもやりやすさを後押ししている
ただ流石にボスとしての火力は兼ね備えているので油断はできない
受け損なえばヒーラーの負担を増やしてしまう、なにがあるかまだまだわからない以上それは避けていきたい所だ
「なんかそこまで強くないね」
「ああ、というかこのHPの減り方、もう確定だろ」
「そうね・・・死んでから動くのか、死ぬ前に乗り込むのかはわからないけどダンジョンのラスボスがこんなに弱い訳ないわ、まあ、まだ最後かどうかわからないけど・・・」
「とりあえず注意するのは半分かな?強くなるのか乗り込むのか、どっちかなー、乗ってくれないかなー」
そんな事を考えながらアサギ達は邪教徒のHPをどんどんと減らしていく
HPが減ってくると頭上で回っている球の速度が速くなっていき一振りで2個の球から魔法が発射されるようになったがそれでもアサギのHPを0にするには数と威力が足りていない
『くっ・・・貴様等・・・こうなったら・・・』
「お!来るか!?」
「乗り込めー!乗り込むんだー!」
『神よ・・・この命を捧げるっ!!』
アサギ達の目の前でまったく予想してなかった事が行われていく
邪教徒が叫び杖を掲げたと思ったら邪教徒の姿が変身してしまったのだ、当然HPも全快している
それを一言で表すとすれば悪魔のような、とでも言えばわかりやすいだろう
身体は大きくなり頭から2本の角を生やし背中には竜のような翼が生えた
手に持っていた杖は空中に浮かび杖の上に3つの球がぐるぐると回っている
「まさかの・・・」
「ええ、まさかの変身ね」
目の前に起きた変化に唖然としているアサギに向かって悪魔が右の拳を叩き込んだ
アサギは防御をするのが若干遅れてしまったがなんとか盾を合わせる事ができた
だがすぐに来た左の拳を防御する事ができずにアサギは後方へと弾き飛ばされる
「うっ・・・攻撃にノックバックついてるかも、ちょっと壁使うね」
アサギは悪魔に挑発スキルを使いながら壁、というよりも「防御システム」の近くまで来た
「防御システム」の足元は近寄れない仕様になっているので部屋の途中なのではあるがアサギは壁際でそれ以上後ろに吹き飛ばされないようにしたのだ
ノックバックの効果は若干のスタンと後方へ押し出される事だ、だがこれで押し出される事はなくなった
位置が変わってしまうと背中から攻撃するのがやりにくくなる為にこの場所を選んだのだ
「これで敵がフラフラしなくなるはずー!」
だがそれはアサギの後ろに逃げ場が無くなるという事でもある
いつもなら横にも避けたりするが今回はそうも言ってられない
悪魔の攻撃範囲は前だけにある訳ではないからだ
流石に1回の攻撃で全てをカバーしている訳ではないが左右の拳での攻撃を合わせると攻撃を喰らわないで済むスペースはあまりにも狭い
それこそ人が2人横に並んだらダメージを食らってしまうくらいだ
アサギが横に動くと悪魔の攻撃の範囲も横に動いてしまう
すると近距離で攻撃をしているまぁちゃんとダガーに攻撃が当たってしまう、アタッカーがダメージを食らってしまうのは好ましい事ではない
もちろんヒーラーの負担が大きくなるという事もあるし攻撃が鈍る可能性もある
耐えきれず死んでしまったら蘇生しなければならない、そうするとデスペナルティも発生し火力が落ちてしまう、蘇生には詠唱が必要なのでその間回復もできない、消費するMPも大きいという事もある
だからアサギは悪魔の攻撃を全て真正面から受け止めると決めた
右拳、左拳、その後爪による前方範囲攻撃
アサギは攻撃を受け何度も押され背中に壁の感触を感じながら盾を動かしていく
左から、右から、次は真正面、そうやって順調に攻撃を防いで行った
その時ただプカプカと悪魔の近くを浮いていた杖が部屋の中央に向かって動き出した
「杖が動き出したわ!注意して!」
杖が動きを止めると杖の頭上でぐるぐると回っていた3つの内の1つ、先ほどまでアサギに向かって炎の弾を吐きだしていた赤い球が更に浮かび上がる
その時杖にはHPバーが、弾には詠唱バーが現れ杖を中心に部屋全体が攻撃予兆の魔法陣に覆われた
「マーリン!まぁちゃん!ダガー君!杖叩いて!!」
「おう!」
セッキーの声にダガーが答え走り出す、まぁちゃんは杖に向かって瞬間移動をし、マーリンは詠唱を始める
三人は攻撃の対象を悪魔から杖に変える、そしてオネも杖を叩くのに参加した
さっさと杖にあるHPバーを減らさないと全員に大ダメージがある、この流れで動きを迷うはずもなかった
「やれやれ、炎の球って事はあんまり炎魔法効かないんじゃないか?他でやるか」
「最低三回はこれやるんだよね、杖が動いたらすぐ移動始めた方がいいかもね」
「そうだな、まぁちゃんは移動できるけどダガーはちょっと動かないといけないしな」
「これがあるのに攻撃にノックバックあるって割と卑怯じゃない?ねぇねぇ、私参加できないよ」
「そうね、アサギはそこで耐えるしかないわね、攻撃範囲と言いノックバックと言い完全にタンクは杖を殴れない仕様だわ」
「まあ、楽でいいんじゃないか?」
「こいつに集中してればいいから楽と言えば楽だけど、でもなー」
「大丈夫よ、アサギちゃん、私も叩いてるから魔法の発動よりははやく倒せるわ、だからそっち頑張ってね」
時間制限がなさそうな時はオネは攻撃に参加する事はそこまでなかった
オネは最終的にドルイドにクラスチェンジする予定なので直接殴ってもそこまで強くはない
モンク狙いならSTRやAGIなども上げるのだがオネはそれらにポイントは振っていないからだ
ただプリーストよりはシャーマンの方が攻撃魔法は多いので戦闘中使ってはいる、だがもちろん回復魔法や支援魔法の方がはるかに使用頻度が高い
アサギは確かに防御力はあるしセッキーのヒーラーとしての実力は高いがこのパーティーの強さはオネの下支えがあってこそと言えよう
セッキーはアサギを集中的に回復しなければならない為になかなか他へ手が回らないがそこをオネが視野の広さでカバーしているのだ
早く皆で専門職になってもっともっと色々な所へ行きたい
アサギはそう思いながら
「うん!わかった!任せて!!」
そう答えた瞬間、パリンという音を残し赤い球が割れ杖が悪魔の方へ移動していった




