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聖騎士と王都に迫る黒い影 その3

皆様の声を聞かせてくださると幸いです

感想、評価お待ちしております

「悪竜エドラ」が竜巻の中から姿を現す

 その姿はまたもや四足歩行型のドラゴンに変わっていた

 アサギは心の中で舌打ちをする

 ついさっき「悪竜エドラ」を転倒させられる術を見つけたばかりなのだ

「悪竜エドラ」が片足を上げた時、ただ剣で斬り付けるだけでは「悪竜エドラ」の姿勢を崩す事はできなかった

 だが地面に着いている方の足を光の腕で引っ張る事で無理矢理に転倒させる事ができた

 問題は光の腕を堂々と発動する事が出来ない所ではあるが剣が足に当たる寸前に発動すれば剣に光属性を付与し斬り付けた時よりすこし光のエフェクトが大きくなるだけだったのでなんとかごまかせそうな気もしたのでこれは使える、と思ったばかりなのである

 だがもうそれは使えないだろう

 空からアサギの方へと舞い降りた「悪竜エドラ」はすでに地面に足をつけていない

 魔法の効果で空中に浮遊しているのだろう

 両前足と牙による攻撃は更に速度を増しアサギのHPを削っていく

 しかもここにきて特殊AIらしい行動を取ってきた

 攻撃にパターンが無くなってきたのだ

 先ほどまでは振り下ろし、薙ぎ払い、刺突、そして噛みつきと順番はバラバラではあったものの同じ攻撃なら同じ軌道で攻撃をしてきていた

 だが今はどこから来るのかがわからない

 どの角度から攻撃されるのかがわからないのでアサギは攻撃を一時諦め「悪竜エドラ」の攻撃に合わせて防御をするので手一杯だ

 右の方からアサギに向け爪で切り裂こうとしてくる「悪竜エドラ」、アサギはそれを感じ盾を右に寄せ攻撃を防ぐ

 だがその攻撃は来なかった

 まずい、そう思った直後にはもう別の方向から来た衝撃によりアサギは吹き飛ばされていた

 簡単に言えばフェイントである

 今までどの敵からもそんな攻撃をされた事がないアサギは持ち前の反射神経で見える攻撃に反応してしまったのだ

 だが盾を向けた所には攻撃は来なかった

 盾がない所へアサギが一番警戒していた攻撃、「悪竜エドラ」が身体を捻り前足で槍の様に突いてくる刺突を食らってしまった

 周りにいるプレイヤーもアサギが吹き飛ばされたのに気づく

「悪竜エドラ」がアサギに追撃をしようと前へと進み始めたからだ

 アサギは真っすぐ後ろに吹き飛ばされていた

 それによりとセッキーやオネ、周りにいるヒーラーの回復魔法が届く範囲から一時的に離れてしまった

 盾によるダメージ軽減ができなかった刺突のダメージは相当なものでアサギのHPは大きく削れている

 しかも吹き飛ばされた事でスタンが発動しアサギは起き上がる事もポーションを飲む事も無敵になるスキルを使う事もできない

「悪竜エドラ」の進行はプレイヤーのそれよりも速い

 アサギの元に辿り着いた「悪竜エドラ」はアサギのHPを全て刈り取ろうと再度身体を捻りそして右前足をアサギに向け突き出した

 アサギのHPが再度大きく削れる、残ったHPはごくわずかだ

 その残りのHPを今度こそ無くそうと「悪竜エドラ」は右前足を高くあげた


 たった2回の攻撃なのにここまで削られる事があるのが特殊AIの怖い所だ

 普通のAIとの戦いとの常識という物が全て覆されていく

 アサギのHPを最初から見てきたヒーラー達からすればなんで2回しか食らっていないのにここまでHPを削られているのか理解できないだろう

 今までは盾で軽減していたとはいえアサギのHPを多くて1割くらいしか削ってこなかったからだ

 だがセッキーとオネは1発目の刺突で大量にHPを削られた時に理解していた

 特殊AIが機動した事、そして今の状況がとてもまずいという事を

 だからこそ二人の行動は早かった

 最初にアサギが吹き飛んで回復魔法の範囲外に行ってしまった時二人が一番最初に走り出していた

 それでも「悪竜エドラ」よりは遅いのは仕方がない

 だがなんとか「悪竜エドラ」の右前足が振り下ろされるよりはやくアサギへの回復魔法が届く場所までたどり着く事ができた


「はぁ・・・はぁ・・・あ、危なかったわ・・・」


「ほんとに・・・ギリギリだったね・・・アサギちゃん・・・よかった・・・」


 回復魔法を受けHPを満タンにしたアサギに「悪竜エドラ」の右前足が振り下ろされる

 ダメージはあったがもう死ぬ心配はないだろう

 スタンが終わりアサギが起き上がる


「ありがとー!二人とも!もうだめかと思っちゃった!!」


「ふふ、私も正直ダメかと思ったわ」


「アサギちゃん、頑張ってね!」


「うん!!」


 アサギはこれからの「悪竜エドラ」の攻撃にフェイントがあると頭に入れた

 今までは攻撃が来るな、と思ったらそちらにすぐ盾を向けていたがギリギリまでよく見る事にした

 攻撃の頻度は少なくなってしまうがまた吹き飛ばされるよりはましだろう

 それによりフェイントを仕掛けられても釣られる事がなく攻撃を防ぐ事ができるようになった

 セッキーとオネは今まではアサギに回復が届き「悪竜エドラ」の攻撃に巻き込まれない所にいたが特殊AIによる攻撃が始まり何があるかわからないのでアサギの元へと近づいた

 それによりアサギは更に安定感を増していく

 だが何が起こるのかがわからないのが特殊AIだ

「悪竜エドラ」が炎の弾を吐き出そうとするモーションを取ったのでアサギは盾を構える

 ドン!と衝撃が盾に伝わる

 炎の弾が盾に当たったのだ

 アサギは盾を下げ他の場所へ炎の弾を吐いている間にも攻撃をしようと思ったが嫌な予感がしたので下げかけた盾をまた構えた

 ドン!と盾にまた衝撃を受けた

 先ほどまでは広範囲に吐き出していた炎の弾がアサギのみに集中して襲い掛かる

 そして「悪竜エドラ」はダメ押しとばかりに翼を大きく動かし竜巻を呼び起こした

 竜巻が大量に発生した、そしてその竜巻が一気に動き出す

 その動きは誰の目から見てもアサギの元へ向かっている事がわかった

 この量を一度に喰らってしまえば回復魔法は追いつかないだろう

 そして竜巻は誰かに当たったとしても消えはしない

 アサギは生き残るだろう、無敵スキルはまだ使っていない

 だがアサギを飲み込めなかったとしても竜巻は他のプレイヤーも襲うだろう

 発生した竜巻の数が多く逃げるとこいう事もできなさそうだ


『あの竜巻がこっちへ来る前に「悪竜エドラ」を倒すんだ!!「悪竜エドラ」のHPももう少しだ!全力で攻撃をしろ!!』


 アーサーの叫び声が響き渡る

 火力陣がHPやMPを気にせずに出せる最高火力を発揮していく


『無敵スキル使います!回復なしで大丈夫です!!』


 アサギの叫び声にそれまで回復をしていたヒーラーも数少ない攻撃魔法を撃ち始めた

 今、この場にいる全てのプレイヤーが「悪竜エドラ」のHPを削っていく

「悪竜エドラ」も必死の形相でアサギを攻撃しているがその攻撃はアサギのHPを減らす事はない


 そして竜巻がアサギを、プレイヤーを飲み込む前に「悪竜エドラ」はうめき声をあげ地に落ちた

 アサギが周りを見渡すと周りにあった竜巻がすべて消えている


『あー・・・おわったぁ・・・』


 アサギは先ほど全体チャンネルで発言したのを戻さずにいたようだ

 アサギの言葉がその場にいる全員に届いた


「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」」」


 アサギは力が抜けたのかその場に座り込んだ

 その時雲が割れ「悪竜エドラ」の身体を包むかのように光が差し込んできた


『我が子らよ、呼びかけに応じて召喚されし外遊人よ、我が声が聞こえるか?我は光の神ヒッカリー、予言を与えるものである』


「お、天の声だ」


『我が子らよ、此度は「悪竜エドラ」の討伐に力を貸してくれた事感謝する、だが「悪竜エドラ」は死んではいない、「悪竜エドラ」は死という概念から外れているのだ、だから我が封印しよう、これで王都は無事だろう』


『皆!イベント成功だ!おつかれさま!!』


「「「「「「「「うおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」」」


 その場にいたプレイヤーが歓喜の声を再度上げる

 中にはアサギに対してお礼を言っている声もあった


『ああ、そうだ!今回の勝利はアサギさんのお陰と言ってもいいだろう!!』


 アーサーの声にそうだそうだと追従する声があがる


「うえー・・・やめて、アーサーさん、そういう事は本当に・・・」


 アサギはこの場から消えてしまいたくなった


「まあ、でも実際よくあの攻撃をさばききったよ」


「ほんとほんと、お疲れ様、あっちゃん」


「お疲れ様、途中しんどかったけどなんとかなったよ」


「あそこはほんと焦ったわ、ね、オネさん」


「ほんとね、でもほんと間に合ってよかったよ」


「二人ともありがとうね、やっぱり二人は最高のヒーラーだよ!!」


「アサギさんも最高のタンクだったよ、全体チャンネルで皆がお礼言ってるし一応答えたら?」


「うえー・・・うーん・・・わかった」


 アサギが立ち上がると全体チャンネルでの声が止み静まり返った

 そうなると変に緊張してしまう


『えー、っと、皆さんのおかげでなんとか耐えきれました!ありがどじょふ!あ、ありがとうございました!!』


 緊張のせいか途中で噛んでしまった

 その途端に周りから爆笑が巻き起こる

 現実世界であったらアサギの顔が真っ赤になっていただろう


「ふふ、やらかしちゃったわね」


「うー、セッキーもう私「まおクエ」やれないー」


「何言ってるの、世界を救うにはアサギが必要なのよ」


「そんな事言ってもー、恥ずかしいよー!!」


「最後のは完全に自爆だけどな、はっはっは」


「マーリンの馬鹿!!馬鹿馬鹿馬鹿!!!」


『プレイヤーの皆さん、「悪竜エドラ」封印成功おめでとうございます!ストーリーミッション「悪竜飛翔」は終了いたしました!参加された皆様には特典を後程ゲーム内メールにて発送させていただきます、また「悪竜飛翔」のパーティ用クエストが解放されました、詳細はシステム、お知らせ、イベントからご確認ください、本日はイベントへのご参加ありがとうございました、引き続き「まおクエ」でお楽しみください』


「天の声も聞いたし帰るかー」


「そうしよ!はやくしよ!今すぐここからでよう!ね!ね!」


「はいはい、じゃあ行くわよ」


「うん!帰るね!!」


 アサギはすぐにウインドウを開きイベントフィールドから出るを選びその場から消えるとアサギの教会に走っていった

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