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憧れの聖騎士

「ああ・・・今日も空が青い・・・」


 私は教室でそう呟く

 良い事があった日は気分がいい

 全てが私を祝福してくれている気がしてもう1度空の青さを確認しようとした


「ああ・・・今日も空が」


「ニヤニヤして何言ってんの?」


 そう話しかけてきたのは隣の席の隣野席子だ


「ん、ちょっと良い事があってね」


「ふーん、ま、いいけど、ちょっとにやけすぎて変な顔になってるよ?」


 そんな失礼な事を言われても今の私はご機嫌の絶頂なのでまったくお構いなしだ

 本当にしばらく善行を積んできたかいがあるというものだ、くふふふふ


「所で聖剣オタクでゲーム好きの貴女は今度始まるVRゲーム「魔王クエストオンライン」はやれるようになったの?ヘッドギア買うお金がない、って言ってたけど」


 ふふふ・・・・くふふふふ・・・・


「よくぞ聞いてくれた、席子ちゃん!そう!私は「まおクエ」で聖騎士になるのだ!!」


「相変わらず聖剣だの聖騎士だのが好きね、あなた・・・で、聖騎士様はどうやってヘッドギアを手に入れたの?まさか・・・聖騎士なのに、あなた!?」


 聖騎士はまだなれていないんだけどな・・・


「何を想像してるかわからないけど法に触れるような事はしてないよ!知ってる?駅前の商店街でクジやってたの」


「ああ、そう言えば凄い話題になってたね、確か1位がヘッドギアだったんだっけ、おもちゃ屋さんが商店街の会長になったからってどうなのかしらね、2位以下が大分しょぼくなったって話もあるし、え、当てたの!?」


「ふっふっふ、このクジの為に私は善行を重ねに重ねたからね!!はぁ・・・私のお父さんに妹が12人くらいいたらお年玉で買えたかもしれないのになぁ・・・」


 そんなにいる訳ないよね


「そんなにいたらきっと五月蠅いだろうね、で、やっぱり聖騎士目指すの?聖騎士マニアさん?」


 先ほどから席子ちゃんから聖剣オタクとか聖騎士マニアだとか呼ばれているほど聖騎士と言うものに憧れている

 きっかけはなんだっただろうか、小さい頃に親がくれた絵本だったろうか、色々プレイしたゲームだったろうか、神話などを題材にした小説や漫画だったろうか

 もう今となってはきっかけなんかは思い出せない

 でも私は聖騎士、聖剣、パラディンに憧れている

 バーチャルと言えども夢が叶う


 私はパラディンになれる!!!!


 何年か前にどこかの会社の誰かが開発したフルダイブ形式のゲームは最初はそこまで快適ではなかったらしい

 高いし、親がそこまでゲーム好きって訳じゃあなかったから当然うちにはそんなものはなかった

 昔はヘッドギアタイプなんてなかったから狭い我が家に置く場所なんてないしね

 それでもプレイしている人はどんどん増えてまたどっかの誰かが技術を大幅に進化させて安く(それでも高校生には高いけどね!!!)場所も取らないヘッドギアタイプが開発された

 本当にありがたい、この平和な2xxx年、聖騎士になんかなれる訳もないけどゲームの中でなら私は盾を持ち、重厚な鎧を着こみ敵の前に起てる

 今までのゲームだって私が操作している訳だけどフルダイブなら臨場感は格別だろう

 ああ・・・今日も空が青い・・・くふふふふふふ


「またにやつきだしたわ、この子ったら・・・やれやれ・・・」



 キーンコーンカーンコーン

 ガタッ!ガタガタッ!!


「席子ちゃん!じゃあね!とりあえず帰って遊ぶからまた明日色々話そうね!」


 返事も聞かずに私は駆け出す

 そう今日は待ちに待った「まおクエ」の記念すべき稼働1日目なのだ!

 サーバーが開く時間は授業中ではあったから本当は今日くらい休みたかったのだけどそんな事をしたらお母さんにゲームを禁止されてしまう

 いつも休まない元気な前の席の前野人男君は今日休んでいたからもしかしたらゲームの為のずる休みかな?まさかね?でもそれならちょっとずるい、羨ましいな


「まあ、人の強さとか進行速度とかは私には関係ないけど」


 そう、私は聖騎士になれればいいのだ

 聖騎士になってゲーム内で壁役をやる!

 きっちりヘイト管理がして後衛さんに「やっぱ壁が聖騎士だと安定しますよねー」とか言われるのだ!

 くふふふふ!!

 そしたら「いやいや、私もすっごいやりやすいですよー」とかなんとか言っちゃって!!

 くふふふふふふふふふ!!


「ああ・・・今日も空が青いなぁ!!!」


 私はもうすぐ聖騎士になるのだ!!










「空の青さが憎い・・・・・・・・・」







 意気揚々と帰宅した私

 フルダイブでゲームをするのでお母さんに夕飯の時間を確認し、今日宿題はないから夕飯まで邪魔しないでね!!と念を押す

 ヘッドギアを持つ手が震える

 夢の瞬間である、待望の瞬間である

「まおクエ」のソフトをセットしヘッドギアを被りベッドにごろんでスタートだ!!


「・・・ここは最初はなにもなかった・・・ある時そこに光の神と闇の神が生まれた・・・」


 オープニングが始まった、本当はさっさと飛ばして聖騎士になりたいけどストーリーを読むのが好きな私はドキドキしながらオープニングを聞いていた


「・・・光の神と闇の神は協力して天と地を作った・・・そして火、水、風、土にそれぞれに力を与え神を作った・・・」


 ふんふん、ありきたりっちゃありきたりだけどこう言うのを王道、とでも言うのかな?

 嫌いじゃない、むしろ好きだ、聖騎士だもん


「・・・神々はその後生まれてきた生命に力を与え知恵を与えた・・・」


 ふんふんふん


「・・・光の神は言う・・・将来魔王がこの世界にやってくる、世界は闇に包まれる、だが安心するのだ、我が子らよ、その時遠い世界から外遊人が現れこの世界に協力してくれるだろう・・・・」


 がいゆうじん・・・?外遊・・・ああ、プレイヤーの事かな?

 そっか、このゲームAIがものすんごいらしいからNPCも人格みたいなものがあって普通に生活してる人みたいってβテストをやった席子ちゃんが興奮しながら言ってたな

 なんかどっかの国の王子様がめっちゃイケメンとか・・・

 聖騎士だったらなー、イケメンと合わせ技で一本!って感じなんだけど

 王子様じゃなぁ・・・いや、でも王子様って聖騎士なゲーム多かったかも?

 いやいやいや、私がなるんだからいいんだ、いくらイケメンだろうがなんだろうがいいんだ


「・・・外遊人よ、この世界は魔王に脅かされている、どうかこの世界に光を・・・」


 ふむふむ、魔王倒すのが目的のゲームなのか

 でもオンラインだからなー、どうせ倒しても第2、第3の魔王とか邪神とか魔神とか出てくるんだろうね

 この世界の人よ、強く生きてくれ!私が聖騎士になったら盾になるからね!!


「魔王クエストオンラインへようこそお越しくださいました、私はキャラクリエイト担当AIでございます」


 おっとオープニングがいつの間にか終わっていた

 傷ついた市民の前に颯爽と現れる聖騎士、つまり私を想像していたら時間が結構すぎていたみたいだ

 くふふふふ、もうちょっとで聖騎士だ!


「あのー?もしもーし?」


「あ!よろしくお願いします!」


「はい、よろしくお願いします、では早速ですがプレイヤーネームを教えてもらえますか?」


 プレイヤーネームはもう考えてある

 聖騎士と言えば聖剣、聖剣と言えばエクスカリバー、エクスカリバーと言えばアーサー!


「アーサーでお願いします!」


「あー、その名前は既に登録されているので使えませんね、前になにか入れるとか・・・例えば†とかどうです?†アーサー†素敵じゃないですか?」


 そんな厨2な名前いやああああああああ


「いや、それはちょっと・・・あー、アーサー・・・あーさーさー・・・あーさーざー・・・」


 え、どうしよう、全然決まらない


「あ!アサギ、で!」


「はい、かしこまりましたアサギ様、では次はしょくぎょ「聖騎士で!!!!!」


「アサギ様、残念ながら最初に選べる職業に聖騎士はありませ「じゃあパラディンで!!!!!」


「アサギ様、そちらも最初から選べ「な、なんだってえええええええ!!!??」


 空の青さが憎い・・・・・・・

 空見えてないけど


「アサギ様、初期から選べる職業はソードマン、クレリック、シーフ、マジシャ「ソードマンで・・・」


「はい、畏まりました、もうそんなにしょげないでくださいよ、この世の終わりみたいな顔になってますよ?」


 実際終わったようなもんだ、もうログアウトしてやろうか・・・


「聖騎士という職業は勿論存在しますけど初期からは選べないんですよね、あの職業は「じゃあどうやったらなれるのか教えてください!お願いします!早くなりたいんです!1分でも!1秒でも早く!」


「あはは・・・えとー・・・本当は私はキャラクリエイトの為のAIですので教えたりしたらいけないんですけど・・・あまりに必死なので・・・まあ、中に入ればわかる事ですし教えて差し上げますね」


 あまりに必死て・・・・まあでもこれはラッキーだ、多分この話がなければ今日はログアウトして席子ちゃんに愚痴のメールを数十件していたかもしれない

 多分ゲームしてるから気づかないだろうけど・・・


「えっとですね、まず聖騎士、パラディンになるにはソードマンに転職してもらいます、そしてその後レベルを上げある一定の強さになるのがまず条件の1つです」


 ふむふむ、1つだと・・・?


「そして次の条件がこの世界にある6つの教会のどこかに在籍していただいてそこでクエストを受け信仰度を一定まであげてもらいます、そうしたらクラスチェンジNPCがアサギ様をパラディンへとクラスチェンジさせてくれますよ!」


 頑張りましょう、そのような表情でAIは私に言った・・・

 いや・・・長いわ・・・そんなの待ってられないよ!!

 私は今すぐにでもパラディンになりたいのに!!

 多分強さと信仰度が上がり切らないとクラスチェンジNPCは出てこない・・・

 賄賂を渡したって・・・いやいや、聖騎士はそんな事はしないのだ


「もしもーし、アサギ様ー?もしもーし」


 ああ・・・はやく聖騎士になりたいのに・・・6つの教会に所属って・・・いや、どれか1つでいいのか、それは

 ん・・・じゃあ教会作っちゃう?

 自分だけの教会作っちゃえば自分でアサギお前は今日からパラディンであーるー、とか言えるんじゃない?

 教会の関係者がクラスチェンジNPCなんでしょ?

 まず教会を作る、そしてそのNPCの職になる、そしたら自分で自分をパラディンに任命できるんじゃない!?

 これだ!!!

 なんて素晴らしい策だ!!!


「アサギ様ー?なんで笑ってるんですかー?アサギ様ー?」


 ああ、やはり今日の空の青さは素晴らしい

 できる、きっとできる、これで私は聖騎士になれる!

 よし、そうと決まればまずはそのクラスチェンジNPCの職業と教会に居る他のNPCの職業をリサーチだ!!!

 そしてそして、教会を作って私自身をパラディンに任命!くふふふふ!これが「まおクエ」における私のプレイングだ!

 よぉーっし!


「アサギさ「情報ありがとうございます!!!早速教会に行ってみたいと思います!!!」


「あ、アサギ様、一応チュートリアルでこの後身体を動かしたりスキルを使ったりとかあるんですけどやっていかれ「いいえ!教会に行きます!!!」


「あ、は、はーい、じゃあアサギさま「まおクエ」における始まりの地「ハッジマーリ」へ、いってらっしゃいませ~」


 暗転していく意識の中私はなんだそのネーミングセンスはああああああと絶叫したくなっていた・・・・

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