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王都で情報収集

「おいあんちゃん! 見えてきたぞ」


ポルトさんの声に体を起こし荷台から乗り出す形で外を見る。 すると、街が見えてきた。


ーー王都だ。 やっと着いたか。


王都はその巨大さがわかるほど城郭に覆われておりどのほどの規模なのかは一目で分かる。 外敵を防ぐには十分な防壁だな。


「どうだ? すごいだろ?」


「はい、なんだか威厳がある感じですね」


「街の中のもっと凄いぞ。 楽しみにするんだな」


「はい」


やがてキャラバンは王都の門まで辿り着き、立ち入り許可をもらうため手続きを済ます。 不法な物がないか荷物は検査され、商人と俺はボディーチェックまでされた。 流石に王都の警備は結構厳しいようだ。


内心、脱獄犯の俺は顔が知れ渡っているかと思いヒヤヒヤしたがバレてはないようだ。


(言っただろう。 門番となると人の出入りを管理するからな。ここは出入りが多い、よっぽどの凶悪犯でなければ先ずバレることはない)


カーズが得意げにこぼす。


(そうは言っても焦るもんは焦るって…)


まあ、すんなりと侵入できたことはいいことだ。 左腕のことも聞かれることはなかったしな。


布を取れって言われてたらヤバかったよ。


ポルトさんと門を超えて先を進む、すると人の数が一気に増え見渡す限り無数の建物が広がっている。 さらに見上げると立派な城が建っている。 国王の城か?


今までいた街は中世ヨーロッパ風の街並みだったから首都も似たようなものなのかと考えていたが、やはり規模が大きく異なりこの国の首都なんだなって再認識させられる。


やがて広間にたどり着くと、ポルトさんが開口一番。


「さ、ここからは別行動だ。 俺は人と会う約束があるからな。 悪いがここでお別れだ」


「はい、色々とありがとうございました」


ポルトさんに深々とお辞儀をする。 世話になったしな。


「はは、いいってそんな堅苦しいの! あと、ハイよこれ」


さっと、何かを俺に手渡す。 布の袋に何か入ってるみたいだが…


「あの… これは?」


「何ってお金だよ」


「え!? お金…」


「最初に俺にモンスターの素材を渡してくれたよな? それは王都までの運賃と思って受けとったが君は特別だ。 その素材は俺が正式に買い取ってあげるよ。 それがこのお金」


「ポルトさん…」


「ははっ! いいっていいってこれも何かの縁だ受けとってくれ。 それに路銀はあった方が何かと都合がいいしな」


正直一文無しだったので助かる。 ぶっちゃけ物乞いでもして暫く食い繋ごうと思ったほどだ。


てか、王都に到着する時に売る分の素材やらアイテムやらとっといてもよかったな。 考えなしだった。


「ありがとうございます! 大切に使います」


「いやいや、商売人として当たり前のことをしただけだよ。 …それじゃ、俺はそろそろ行くよ。 元気でな、また会えるといいな」


と言いながら、手を振り去っていくポルトさん。


「はい、お元気で!」


手を振り返す、彼が見えなくなるまで俺は見送った。


「ふう…」


(…さて、この後はどうする?)


カーズが今後の行動に伺う。


(どうするって、情報を集めることが先決だし… あ、でももうじき夜になるしな。 宿探しが先か)


(確かに宿を探すことが賢明かと思うが、先ずは)


(服を買え。 その格好じゃ何かと怪しまれる)


(確かにな。 …ボロっちいしな)


(後は身だしなみも整えた方がいいな)


そういや、奴隷になってからは髪も切ってないしヒゲも無造作に伸びている。 すれ違う王都の人は皆見た目が小綺麗だ。側から見ても俺の格好は怪しいことこの上ないだろう。


(服屋と理髪店か… 分かった。 日が暮れる前にさっさと行動しなきゃな)


(それがいい)


道行く人に聞き、服を買える場所を教えてもらう。 ギョッとした目を向けられるが親切に市場を教えてもらい。 俺は市場を目指した。


市場はほど近かった。


「活気があるな…」


大通りから近く、この場所は人や店が密集していた。 常に賑やかな喧騒が聞こえてくるのは栄えてる証拠だ。


「すげえ、見たことないのが売ってるな。 何に使うんだこれ?」


初めて目にするような道具や食べ物、物騒な武器屋や小煩い飲み屋まで、まるで通行する俺を楽しませてくれるかのように様々な露店が数多く立ち並んでいる。


(夢の国に来たみたいだな… 某千葉の)


(観光気分で来たのではないぞ。 目的を履き違えるな)


(分かってるって)


服屋はすぐ見つかり、服を買う。 なるべく安価な物を買いたいため少しダサいがこの布の服を購入することに決めた。 色は上下黒色。セットの方が安かったからな。


それとポケットが多めのジャケットも買った。 これに関しては利便性もあるが何より一目で気に入ったのもある。 黄色、好きなんだ。


着ていた服は服屋の店員に処分してもらい真新しい服を着て次は理髪店に向かう。


店員に場所を教えてもらい目的の場所にはすぐたどり着いた。


程なくして身嗜みも整えて、宿に向かう。宿の場所は市場を通る時に見かけたのでその宿に泊まることにした。 値段も5ゴールドと安かったしな。 食事付きだし。


通貨の単位はアシュリーに教えてもらったことだからこれに関しては特に問題はない。 1ゴールドを円で換算すると幾らかは分からないがだいたい五百くらいの単位なのだろうと思う。


ちなみに先ほど買った服のジャケットは10ゴールドだ。


カーズに小言を言われた。

だって欲しかったんだもん…



「さ、明日から情報集めだな。 カーズはどこに行けばいいと思う?」


包帯を左腕に巻きながらカーズに問いかける。 この包帯は宿の売店に売ってたから買ったものだ。 晩飯の最中に見つけた。


流石にこの先、布を巻きつけるだけでは何かと不便かと思いちゃんとした包帯を買ったわけだったが、これは正解だった。


こっちの方が身軽で違和感がないだろう。 怪我をしたと言えばどうとでもなるしな。


(ふむ…そうだな。 その前に先ずはこの王都の説明からしようか)


「説明?」


(そうだ。 お前が今日見た王都の様子、どうだった?)


「様子も何も、活気があっていい場所としか」


そうだ。 この国の評判が悪いことは外から来た行商人も知ってるくらいだ。 王都はさぞ酷い有様なのかと思っていたが、どうやら違ったみたいで違和感があった。


(それはこの国の表の顔だ。 いいか教えてやる。 ここは大まかに上層、中層、下層に分かれて民は暮らしている。 先ほど貴族のような派手な衣装の人間をみただろう)


「ああ、確かにみたよ」


(その人間たちは上層に暮らしている。 いわゆる一等身分というやつだ。 次いで中層。 お前がいるエリアだな。 ここは一般的な市民が多く暮らす場所だ。 外から来るほとんどの人間は大抵ここしか訪れない。 だから違和感を覚える)


(…最後に下層だ。 ここはいわゆる貧民街といえばいいか。 暴漢、詐欺師、売人、物乞いが数多くひしめき多くの物が貧しい思いをしている。 いわば負の街だ)


「下層…」


アシュリーは王都に住んでたって言ってたよな。家は貧乏で両親に売られて奴隷になったとも。


と言うことは実家は下層にあるってことか。 下層に行ったらまずは両親をぶん殴ってやらなきゃな。


(…と、王都はこのようにハッキリと差別意識が蔓延しているところだ。 お前に身だしなみの事を先ほど言ったのはそれにある。 本来はお前に実際にその目で見てもらった方がいいと思ったが真実を知った方が賢明かと思ってな)


「…情報ありがとな。 分かった、明日は上層に行ってみる。 その後、下層だな」


(ああ。 ……お前に使命も教えねばならんしな)


「使命?」


(時が来たら言おう。 今は現状の情報を把握しておけ)


「…わかったよ」


(さて、私はもう寝る。 お前も早くに睡眠をとれ。 明日は歩くぞ)


「ああ、すぐ寝るよ」


カーズ自体にも睡眠はあるらしく俺がアドバイスをもらう時やカーズが意見を言う以外は基本寝ているらしい。 なんでも魔力の補給だとか。


一旦考え事をしまい。 ベッドに横になる。 やがて俺は眠りについた。




(さあ、行くぞ)


朝だ。 天気はいいし絶好の探索日和だな。


朝食も食べたし、元気いっぱいだ。


「上層は広間のとおりを北に行けばいいんだよな?」


(そのとおりだ。 その先に上と繋がる階段があるからそこを道なりに進めば時期に上層だ)



広間につきカーズに言われた通りに大きな階段を上げっていく、時期に中層のような密集した建物の光景はなくなり1つ1つの建物が大きく豪華で美しい建築物が散見される。


道行く人もそれに合わせてドレスを纏った麗人や派手なヒラヒラした服を着た貴族や甲冑に身を包んだ衛兵までいる。


(なんだか、すごい雰囲気だな)


(そりゃそうだ。 王の城は目と鼻の先だからな)


(ああ、やっぱりこれか)


中層にきてから一番目についた建物を見上げる。


威厳ある建物だ。


巨大なこの城は白亜の美しい色合いに精巧な力強い彫刻が城壁に散りばめられており、この国一の象徴された建物であると物がっているようだ。 まさに王の居城、だな。


(なあ、カーズ)


(なんだ?)


(あの中には流石に入れないよな?)


(不審者と疑われ殺されたいと思うなら入れ)


(…だよな。 だったら目の前を通るだけだったらいいよな?)


(…それはいいが、怪しい挙動は取るなよ)


(分かってるって)


城を間近に通る。やっぱ近くで見ると迫力が違うな。


…と、変にキョロキョロしてちゃマズイか。 チラ見チラ見。


城の入り口付近に差し掛かるその時、声が聞こえる。 男の声と女の声だ。


見ると、一人は兵士のようで、一方は女のようだ。 女の方は何か焦りのような一際大きな声をだしている。 何だ?


「っなんでですか!? 貴方じゃなくて上の人を呼んでくださいっ」


「ダメなものはダメだ。 この国は人族以外は士官なんてもってのほかだ」


「けど!」


「ダメなものはダメだ! さっさと散れ! いくら魔法に心得があろうともこれは国の決まりだ。 これ以上食い下がらないようだと牢にぶち込むぞ」


「っ……分かりました…」


トボトボと踵を返す女。 てか、女の子だな。


涙目になりながら歩く姿がなんだか気の毒に見えた。


「…」


あ、目があった。


「…何?」


先に口を開いたのは少女。 やけに攻撃的な口調を俺に向ける。


「あ、ええっと、べつに」


思わずキョドる。 仕方ないだろ、まさか話しかけられるとは思ってなかったんだよ。


「……ふんっ」


と、ズカズカと俺の前を通り過ぎていった。



ーー怖えぇ。


透き通るような綺麗な金髪と翡翠色の大きな瞳が特徴的な少女だった。


フードを被っていて髪型までは判断付かなかったが身なりは魔法使いのような上等な白のローブを羽織っておりいいとこの子なのだろうなと思った。


それにしてもあの眼力というか、迫力あったなぁ。


「と、いけねえいけねえ。 俺も情報を探さなくちゃ」


城を早々に去り上層の情報を探すことにする。 ここら辺の広間を探すか。 いい人たちだったらいいけど。




「なんだよ上層の奴ら! 人を見た目で判断しやがって!」


声を荒げる。 結果は散々だった。 上層の人間に声をかけようものなら無視されるか身分のことで罵倒されるかの二択しかなかった。


しかなかったんだよ! 中層の人たちは明るくて親切な人ばかりだったのに金持ちの奴らときたら!


ああ、イライラする。


怒り心頭だ。俺は早足で昨日の宿に向かう。歩き疲れてクタクタだ。



早めに食事をとり今日は早めに寝よう。そう考えていると、宿の少し先に誰かが座り込んでいる。


体調でも悪いのだろうか? 声をかけることにした。


「…あの、大丈夫ですか?」


「……へ?」


…見覚えがあるなと思ったら城の前で見た女の子だ。 窮屈そうに体育座りの格好でボンヤリとしていた。



「なんでここに…」


彼女は奇異な目で俺に問いかける。


「なんでって、ここの宿に泊まるからだよ。 君は? なんでここでうずくまってたんだ?」


「それは…」


これは、所謂訳ありなのだろうか。 多分、宿に泊まる金もないのだろう。 老婆心ながら彼女の身の上を案じてしまう。


「あー、そのなんだ」


「…来るか? どうやら訳ありみたいだし」


「……嫌よ。 知らない男の部屋に行くなんて死んでもごめんだわ」


まあ、そりゃそうだよな。 俺もどうかと思ったよ。


「だよな。 …じゃあ俺は行くな」


「ええ…」


玄関の扉を開ける。 まあ、多分何とかするだろ。 そう結論を出す事にした。


扉に手をかけようするタイミング、突如バタッと何かが倒れる音がする。


慌てて後ろを振り返ると目の前で少女が倒れていた。


「おい! 大丈夫か!?」


倒れている彼女を起こす。 するとぐうーと大きな腹の音が聞こえた。


ああ、空腹なのか。 だよな、腹減ると力出ないもんな合点がいった。


「……っっ」


赤面する少女。


「…来るか?」


「だ、だから行かないってば…」


第2波がやってきたかのようにまた大きな腹の虫が鳴る。


「……うぅ…」


やがて涙目になり顔を背ける少女。



ーーああ!まどろっこしいな!



「っ! ああもう!」


俺は強引に彼女の腕をとる。


「部屋に来い! 飯ならあるから! 決定だっ、決定事項だ!」


「え、ちょっ!」


このまま宿に帰ってもきっと夢見が悪い。 俺は強引に彼女を持ち上げ部屋に連れて行くことにした。 邪な感情とかは一切ないぞ。


誓って。



(隼輔… 何故、損得勘定抜きで動こうとする… 私にはとんと分からん)


(何でって、困ってる人がいたら見過ごせないだろ)


(それはお前の美徳かもしれんが… 少々強引すぎるぞ)


(それは…まぁ)


これは所謂お人好しなのだろうか? いや、お人好しなんだろうなぁ。


自惚れてるわけじゃないんだけど、つい体が動いちまう。



まあ、少しは蓄えがあるし一人分増えたところで大丈夫だろう。


そう頭の中で結論づけながら少女を運ぶ。 彼女は暴れる気力もないようで俺にされるがままだった。


余程腹が減ってたんだろうなぁ。



今日の晩飯なんだろ。 久しぶりに肉食いてえなぁ。


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