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僕と彼女は

遙かなる時空の中で僕は彼女に出会った。その出会いは偶然か必然か。そんなの今更よく分からない。だが、彼女は今ここにはいない。


✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎


時は大正。僕の名は倉科(くらしな)(けい)。今の歳は‥20代前半ぐらいだ。

「何をしているの、圭。」

彼女の名前を僕は知らない。

「あぁ、人を見てた。」

「そういうの好きだね。」

彼女は、ただじっと壁にもたれている僕の隣に寄り添っているだけだ。

「そろそろ、(しょう)さんところに行く」

「そっか、じゃあ私も挨拶がてら行こうかな。」

僕たちは、何も話さずただ無言で父親の友人のところへ行く。

将さんは道場の師範で僕は小さい頃から剣を習っていた。だが今の時代、刀ではなく銃を使うようになったためあまり意味はない。

「こんにちは、将さん」

「圭か。そっちの嬢ちゃんは久しいな。」

「お久しぶりです、将さん。」

「おう。そうだ嬢ちゃん。久しぶりに(りゅう)と遊んできてくれないか」

「はい、分かりました。」

竜は将さんの弟。たが、20歳も歳が離れているため、まだ10か11歳くらいだ。将さんは30歳くらい。将さんは、親父とは20歳も離れている。教師と生徒で出会ったと言っていた。

「助かるよ。」

「それじゃあ、竜くんこちらにおいで。」

彼女は将さんの後ろにいる竜に手招きをした。

「そうだ、圭。久しぶりにやらないか、あれ。」

僕は剣をとった。

「いいですよ」

「やる気だな。」

「久しぶりですから。」

僕たちは剣をふるう。もちろん木刀だ。

試合中に、将さんはあれこれ聞いてきた。

「圭、あの嬢ちゃんの名前まだ教えてくれないのか?」

「教えるも何も、知りませんので。」

「聞かないのか?」

「聞いても教えてくれません。」

一度ここで将さんは剣を止めた。

「なぜ止めるんです?」

「いや、少し忘れていたことがあってな。」

僕は聞き返した。

「そういえば、あの嬢ちゃん。毎週2.3日しか会えないんだったな。」

「はい、毎週どの曜日にくるか分かりません。」

そう、彼女はいつ来るのか分からない。毎回ひょっこり現れては夕方には帰る。2日連続の日もあるが、4日間来ない日もある。いつも、同じところで同じ時間に僕はいるのだから。

「しっかし、あの嬢ちゃんかなりの曲者だぞ。俺が一回足もとすくわれたからな。」

「そうですか。」と僕は興味なさそうに答える。

将さんが負けることはまずない。それを勝ったとなると、かなりの達人だろう。そういえば、将さんが言いたいことってなんだったのだろう。


✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎


「圭」

「圭兄ー」

後ろで声がした。

「おお、帰ってきたみたいだぞ。」

「そうですね。」

彼女と竜は手を繋いで、帰ってきた。

「圭兄、お久しぶりです。」

「あぁ、そうだな。」

「相変わらず、愛想ないなぁ圭は。」

彼女は笑う。僕がなにかしたわけでもないのに。

「悪いか?」

「悪くは、ないけど。少しは笑ってもー、ね?」

そうやって、僕の顔に彼女の手が触れる。

「口をこうやって、笑うんだよ。」

無理矢理、笑わせられる。

「圭兄、変な顔ですね。」

竜は必死に笑いをこらえている。それに対して、将さんは真顔。というか、考え事をしているような顔。

「圭、さっき言い忘れていたことがある。少し、いいか?」

すぐに、話題を変えれらた。僕は返事をし、将さんについて行く。

連れてこられたのは、将さんの部屋。

「なぁ、お前。婚約者はいるか?」

「いませんが、なにか」

「あぁ、いや、その、えーとな。」

なかなか言い出さない。それを僕は待ち続けた。

「俺っ、お見合いがあるんだが、お前が代わりに行ってくれないかっ!」

慌てて言う将さんに俺の顔はどう見えているのだろうか。

「実はな」

勝手に将さんは語りだした。

「お見合いの話が来たとき、いつものことでテキトーに年齢を書いたんだよ。そしたら、是非って」

一応、話を聞くと将さんは最初から断るつもりだったそうだが、位が高い人とのお見合いで断れなくなったらしい。

「何歳にしたんです?」

「えっとな、お前と同い年くらい。こんなこと頼めるのはお前しかいないんだよ。」

将さんがこんなにもダメな人だとは思わなかった。

「分かりました、」

「早いな、助かる。」

ここで断るのも面倒だ。

「今度から、気をつけてくださいよ。」

「ああ」と将さんは苦笑いをした。


✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎


「えっ?圭、お見合いするの⁈」

どうせ隠す必要がないと思い、僕は彼女に話した。

「お見合いって‥」

「だから、明日は来ないでくれ。」

「え」と彼女は一瞬動きが止まった。

「あ、うん。分かった。」

どうしてか彼女の顔はどんどん暗くなってきた。

「もう、日が暮れそうだから帰るね」

明るい声だが顔の表情はさっきのまま。彼女はそのまま歩き出した。

たが、ふと何かを思い出したようでこちらを見て「お見合い、うまくいくといいね。」と言われた。

僕が驚く暇もないくらい、走り去って行った。


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