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VERTEX−ヴァーテクス−  作者: 塩そると
BLACK BEGINS
11/67

用意されたルール

 ウラヌの投げた神々しい光の槍は、アトルムに向けて一直線に突き進む。まるで空間という岩盤を貫いているかのようだ。


 それを見据えたアトルムは、ウラヌの手から槍が離れた時には既に腕を動かしていた。両手で漆黒の槍を凪ぎ払い、高速で飛来する光の槍を最適なタイミングで先端が捉え、左前方へと弾き飛ばした。


 互いの槍が一瞬、微かに色の純度を下げる。強力な光と闇が衝突した事による現象。


「避けると思ったがそう来たか? 決まったと思ったんだがな!」


 先程槍を投げたウラヌの手が白く輝き、新たな光の槍が形成された。


「……甘く見るな」


 闇の槍を握りウラヌを睨みつけるアトルムだが、彼の視線はまたも少し逸れる。


「ふうむ……今の速さはなかなか優れている」


 槍を弾いたスピードに感嘆するプロトン。彼の周囲には、うっすらと紫色の煙のようなものが浮かんでいる。少なくとも、ただの煙では無い事は確かだ。


 あの煙は何かあるに違いないと確信し、サンディコスはそちらに目を向けた。大地に両足をしっかり付け、大剣を構え様子を伺っている。相手は三人、下手に距離を詰めようとすると大打撃を受けるかもしれない。


「何をする気だ、一体?」


 煙の詳細も分からず、彼は警戒を続けた。


 一方、ウラヌやプロトンとは違いネプトは未だ行動に移れていなかった。迷いが表面化した顔で相手側を見ると、アトルムと視線が合った。


「あ……」


 細めた目で睨み付けられているような感覚を覚え、顔が引き攣る。この様子は幸い、ウラヌには見られなかった。


 すると突然、ウラヌは何を思ったのか態度を一変させ光槍を消した。


「待ちな。プロトン、一旦煙解け」


「何?」


 指示通り、プロトンの周囲の紫煙が消滅する。命令主は軽く笑い口角を上げ、こんな事を口にした。


「おい! 俺、今面白え事考えたぞ!! 俺達とお前達はお互い三人だ! だったらよ、一人ずつタイマンってのはどうだ!!」


 ここに来て唐突に提示される、競技的なルール。これに一番驚いたのは、アトルム達ではなくネプトであった。事実上、闘いの強要だ。


「片方の陣営が二回勝ったら、それで決着だ」


「……何の為そんな事を」


 手に纏わり付く水を消さずに問うルテウス。


「そうだな……ただの気紛れ、つったらキレるか?」


「一方的過ぎるよ、ただでさえこっちは寝込みを襲われた側だというのに。ルールまで決められるとフェアだとは思いたくないね」


 そんなルテウスの活気のあまり無い目は、彼の機嫌の悪さを物語っていた。同調者も有り。


「同感だぜオレも」

 

 提案を批判されたウラヌは大袈裟に腕を組み、言う。


「そうか……まあ、仕方ねえな。だったら、せめて闘う組み合わせだけはお前達で決めさせてやるよ! それでいいな!」


 妥協案のつもりで提示された言葉に、いまいち納得し切れない素振りで微かに唸りつつもルテウスとサンディコスは頷いた。そんな彼らの前に出、アトルムは細い人差し指を突き出し一言発した。


「……お前を相手にする」


 指の延長線には……ウラヌ。


 指を刺されたウラヌは、「へぇ」と声を挙げ愉しげに薄ら笑いした。


「早いな。もう決めたのか! それとも最初からその気か? 正直、俺も闘うならお前がいいと思ってたぜ! で、他はどうだ!」


 大声を背景に、残る二人はどちらと闘うか話し合う。プロトンか、ネプトかのどちらにするか……。


「なあルテウス……どっちがいいんだお前は」


「僕はどちらでもいいよ。サンディコスは希望あるのかい?」


「オレは……アイツだな。アイツと睨み合ってたら止められたんだからな」


 サンディコスが顎で示したのは、先程紫煙を浮かべていたプロトン。


「……分かったよ。じゃあ僕はあの子だね」


 アトルムがウラヌと、サンディコスがプロトンと闘う為ルテウスの相手はネプトとなった。


 指を鳴らす音が快く響いた。


「決まりだな! さあ、最初に闘うのは誰だ!!」


「オレだっ!!」


 片手で持った大剣・炎剣ヴァーミリオンの刃先を地に叩き付け、サンディコスが前に踏み出た! その瞳は炎そのもののように揺らめいて燃えているかのようだ。彼が一度振り向くと、後ろではアトルムが握り拳を胸に当てサンディコスを見据えていた。そのジェスチャーの意味は即座に理解した。


「……ああ、任せとけよ」


「頑張ってよ、サンディコス」


「任せな」


 神妙なルテウスの声音を背で聴き、歩みだした。


「さあプロトン! お前の番だ!」


「あまり期待はするな」


 背を乱暴に押されたプロトンは顔色一つ変えず、緩やかに歩み出た。そんな彼の大きな背を心配そうに見守るネプト。


「プロトン兄さん……」


 サンディコスとプロトンの間合いは徐々に狭まり、10メートル程で収縮は止まった。ウラヌの声がまた響く。


「分かって当然だろうが、外から干渉はナシだぞ!!」

 

 ただでさえ澱んでいた空気が更に張り詰める。対峙する二人の周囲は、完全な敵意によって満たされた。

 そして開戦の合図代わりに、朱い炎と紫の煙が、同時に噴き出した。

 話の展開がいまいち遅いですね……。

 うぅむ、どうしたものか。

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