絶望を希望に変える者
楽しんでいただければ幸いです。
昔、小さきものあり。
光に焼かれ、闇に呑まる弱きものを哀れに思い、手を差し伸べたものあり。
小さきもの、次第に大きくなり。
強さは大きさに非ず。
それ忘るるば、小さきもの地に帰る。
導くは、大いなる暁色。
それ夜明けを告げる風を纏い、現れる。
◇
「噴火するぞ!」
誰かが放ったその一声が、さらなる混乱への火種となった。悲鳴と怒声。必死に逃げようとあがく者は、自分の身を優先するあまり、幼子を蹴りあげてしまったことに気づかない。いや、気づいていても悪びれる余裕すらない。泣き崩れる者は、自らの運命を呪い、恐怖で硬直する者は、考えることを止めた。まさに地獄絵図。一人ひとりあげる声は違うけど、そこには共通点があった。
絶望だ。
歳も性別も関係ない。必死になって走る人の群れは、暴走した家畜となんら変わらない。背後から迫り来る火砕流、雨のように降る噴石。それから逃げ切れる可能性なんてゼロに近い。なのに、己の欲望に従い、必死になって逃げ惑う姿は目も当てられない。
本当、なんて醜い。
はあ、と息を吐いた。
本来なら禁忌だ。でも、仕方がないとも思った。
自分の醜さを知るには、生きなければ元も子もない。
右手首を小さく回せば、杖が現れた。木の枝とあまり区別のない杖。それを襲い来る火砕流や噴石、そして火山に向けて振った。