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7:虚弱な石灰をまかれて

※変態注意。

 音もない、光もない。誰もいない。

 我に返れば真っ暗闇。その中に少年は一人佇んでいた。


(ここは……どこだ?)


 ファイデは辺りを見回すが、その場所には何も見えない。夢から目覚めたばかりのような、怠い身体。熱があるのだろうか。酷く、息苦しい。風がぶり返したのか。


(でも……)


 僕は道化師と旅をしていたはず。幾つかの街と夜を通り過ぎ、また新しい夜がやって来る。

 あいつを殺すつもりだった。でも幻想を殺すことなど出来ない。憎む相手を憎んでも、何の解決にもならないと知り、僕は現実を殺すことにした。そう、現実世界の犯人を。

 その時からあの道化師は、僕にとってよくわからない存在に変わった。あいつは味方の様な口ぶりで、僕を案内する。現実ではどこをどう旅してあの街まで来たのかわからない。あいつと変な世界を旅する内に、いつの間にか破落戸共の根城街までやって来ていた。


(そこから僕はどうしたんだっけ?)


 上手く思い出せない。だけど騒がしい旅の道連れ……あんな奴でも居ないとなると何だか少し寂しいような、心細いような。

 こんなのはおかしい。姉さんはあいつに殺されたのに。


(でも)


 口を開けばろくでもないが、あいつ……不気味なくらい旅の間は優しかったんだ。長年慣れ親しんだ友のように、僕の影のようにひっそりとどこまでも一緒にいる。

 何を企んでいるんだろう。疑ってもあいつの穏やかな声が耳から離れない。姉さんを死なせた奴が、何故か僕の復讐に協力するような格好を取る。さぁ、こっちだよと標的の所まで運んでくれる。


 「いやいや、君は本当に可愛いね」


 不意に現れた声。暗闇の中、確かに輪郭を持ったあの男がファイデを笑う。更に此方を馬鹿にするような響きで、道化師が言う。


 「君は何故ここにいるのかがわからない。ここは君が作り出した夢なのに」

 「僕の、夢!?」

 「ああ、そうさ。君が望んだ世界がこれだ。美しいだろう?何たって君の理想だ」

 「そんなわけ……」


 そんなはずはない。僕にはもっと、夢が、未来がある。やりたいこと、したいこと。欲しい物とか願いとか、いっぱいあるよ。

 街一番の仕立て屋になりたいとか、もっと大勢の人に喜んで貰えるような服を作りたいとか、思い浮かんだデザインを、そっくりそのまま形に出来るようになりたいとか。

 それにいつか健康になったら行きたい場所がある。それは何処かって明確なイメージは無いけれど、それでも思う。昔みたいに……一人で街を歩きながら、何の意味もなくぶらぶらと彷徨きたい。知らない間に出来た店、新しい流行やファッション。そういった物を眺めながら時間を浪費してみたい。僕がそう思うなら、僕の夢は賑やかな街中の風景であるはずだ。それなのに何故、こんな真っ暗な場所なんだ?


 「あるんだよなぁ。忘れちゃった?気を失う前まではちゃんと覚えていただろうに。何度目だろうなこのやり取り。君って意外としぶといんだねぇ、いや彼らが悪趣味だとも言うのかな。僕は実に目の保養」


 道化師の言葉の意味が、いつにも増して不可解だ。ファイデの様子に気付いたのか、道化師は順を追うように説明をし始める。


 「君が復讐を遂げたところで彼女は戻らない。復讐には何の意味もないのさ」

 「そ、そんなことない!」

 「そう?それじゃあ君は今幸せ?胸がスカッとした?そうか、それは良かったね。それじゃあ笑ってご覧?君の復讐が終わったことを祝して乾杯だ!え?笑えない?それはどうしてかな。ああ、僕はこの件でなら笑っても君を殺さないよ」


 それなのにどうして笑えないのかと問われても、自分でもよく分からない。何故か笑えないのだ。口の端は痙攣しているように引き攣ることは出来るのに。

 そんな僕に追い打ちを掛けるよう、幻想の住人が現実についてを語り出す。


 「普通復讐者は色々考える。復讐が終わったらどうするかとか。前向きか後ろ向きなことをね」

 「あ……」


 そうだ。僕は考えていなかった。

 そいつを殺したら全てが終わる。僕は姉さんは悪くない。悪くないって事はつまり正しい。僕らが正義だ。正しいことをして負けるはずがない。人殺しは悪いことだけど、あいつらが先にもっと酷いことをしたんだ。僕らは間違っていない。

 間違っていない僕が、正しく復讐を遂げた。あの男をナイフで刺した。そう、あの銀のナイフで。「でも、思い出してご覧」と道化師が笑っている。

 ああ、僕は奇襲をかけた。それは成功した。だけど、あの時僕とあいつの傍には大勢……あいつの手下はいやしなかったか?


(そうだ、僕は……)


 僕は子供。そんな大勢の大人相手に勝てるはずがない。僕が間違っていたもいなくても、勝てるはずがないのだ。何を馬鹿な、夢みたいな事を。


(僕は、僕はあれからどうなった?)


 考え込むことで、暗やみに変化が生じる。ぼんやりとした光。四角く縁取られたそれはどうやら窓のよう。窓の向こうは薄暗く景色などわからないが、そこには金髪の少女が見える。髪にはリボン、そのシルエットが姉に重なって、ファイデは窓へ駆けて行く。


 「姉さんっ!」


 近付くことで見えてきた。それは、あの日の風景だ。姉が殺されたあの日と同じ……


 「よく見てご覧、ファイデ」


 背後からファイデ歩み寄り、ぽんと肩に手を置く男。その男は喜色満面の笑みを窓硝子越しに向けて、窓の中と内側の人物を見つめていた。耳元で道化師が笑う。


 「あれは、君だよ」


 何を言われたのか理解できない。振り向いた先で、突然身体に痛みが生じる。

 何事かと奴を見れば、あの変態は指揮者のようにいつも持っていた弓を別の何かに変えている。今奴が振るったのはヴァイオリンの弓ではなく、もっとよく撓る鞭。

 言われたこともまだ解らないが、突然打たれた理由が解らない。


(僕は笑っていないのに)


 それでも道化師は此方を嘲笑いながら再び指揮を執り始める。


 「だってあれは窓硝子じゃない。鏡なんだ」

 「う、嘘!」


 そんなのおかしい。窓の外と内側とでやってることが全然違う。姉さんを襲っている奴は此方にいない。此方にいるのは突然僕を打った道化師だけだ。


 「そうだね、確かにここは夢の世界だ。故に本当じゃない。だけど無から有は生まれない。だから忘れたい君のために、僕がこうして嘘を見せてあげて居るんだよ」


 現実でも僕は痛みを感じている。それは夢の力でも誤魔化せない。だから道化師は僕を打つ。走って逃げることも出来ない。何かに縛られているわけでもないのに身動きが取れない。それは現実の僕が、動けないからなのだと解る。その上で道化師が問う。


 「ファイデ君。君はまやかしの僕を見ながら死ぬのと、現実を見て死ぬののどちらが良いだろう?」


 *


 巻き戻された記憶が止まる。そして僕が忘れた場所から、記憶の箱は流れ出す。


 「さぁ、見てご覧ファイデ君」


 夜を渡る内に、道化師は幾つもの街を通り過ぎる。その間あいつが僕に見せた物はなんだったろう。一番最初の街では、奴は確か僕に飾り窓を覗かせた。

 暗い窓の中、睦み合う二つの影。彼らが纏うのは白い服。裸の王様がオーダーメイドしたようなのと同じ服。要するに何も着ていない。


 「ぎ、ぎゃあああ!」

 「嫌ぁあああああああああああっ!見ないでっ!」


 ファイデが悲鳴を上げると同時に、窓の中の娘が泣き叫ぶ。そんな反応を目にした道化師は、美味だ美味と頷いて悲鳴を反芻して笑う。


 「はっはっは!初々しいねぇ」


 例の破落戸達、盗賊団に関わりのある娼館らしいが、子供にこんな物を見せるなんてこの変態何を考えて居るんだ。生前のこの男には血液の代わりに違う液体でも詰まっていたんじゃないのかと邪推したくなるまでに、この男は変態だ。


 「な、何て物を見せるんだ!」

 「これこそ夜のあるべき姿さ。僕らもどうだい?」


 何食わぬ顔で人の腰に手を回す変態。銀のナイフを突き付ければ、道化師がセクハラを止める。それでも僕の手を離しはしない。


 「寄るなっ!お前が変態だということはよく分かった」

 「お褒めに預かり光栄です。さて、連中はここには戻っていないようだね。それじゃ、次の街に行こうか」


 刺激の強い物を見せられて、嫌がり顔を赤らめる僕を見て奴はにたにたと嫌らしい笑みを浮かべ嗤った。

 お前は子供だなと馬鹿にされているような気がする。だからって、ああいうことを知っているから、しているからって、それだけで大人はみんな偉いのか。それが大人の世界の常識だとしたら、大人って生き物はみんな気が狂っている。この、ピエロみたいに。


 「ご覧、ファイデ」


 それは幾つ目の街だったろう。奴が僕を呼び捨てにするほど馴れ馴れしくなったのだから、幻想の中で僕らは随分と長い旅をして来たのだと思う。それを現実時間で数えるならば、何日になるかは解らない。初めは馴れ馴れしくなった道化師の態度に怒っていた僕も、それに慣れてしまったくらいだ。

 もっともそれは僕が感じたよりもずっと短い期間であったのだと思う。季節はまだ春にはなっていない。秋が通り過ぎて冬になっていたことからして、二……三ヶ月程度の旅だったのだろう。

 道化師が最後に覗かせた窓。それは、僕がかつて見た記憶。部屋の中には幾人もの男。そいつらに鑑賞されているのは一人の少女。


(姉さんっ!)


 窓硝子越しに目があった。姉さんが僕を見た。

 彼女が纏うのは素肌というドレスだけ。白い彼女の素肌を汚す、白い刺繍の糸の数々には、見ているこちらが吐き気を禁じ得ない程。光を失った暗い目で、それでも彼女は僕を見ていた。声なんか届かない。それでもその口は、微かに震えてこう言った。「助けて」と。

 いつも強かった姉さんが、初めて僕に助けを求めた。僕は何時だってそれを願っていた。力になりたいと、助けたいと言っていた。それなのに、どうして僕はあの日あの店に飛び込めなかった?


 「姉さんっ!」


 これは夢だ。解っている。それでも今度は僕は飛び込んだ。部屋の男達をナイフでめった刺しにして、殺してやった。赤い色を纏いながら、それでも僕は今度こそ姉さんを抱きしめた。


 「姉さん……」


 姉さんの身体はまだ温かい。生きているようだ。ほっと息を吐いて僕は、鋭い痛みにのけぞった。その一瞬、夢の中に違う風景が流れ込んで来る。


 *


(殺した!殺したっ……やった!やったんだ……)


 ファイデはその刹那、確かに歓喜した。手に残る鈍い感触はそれでも、得物伝えに仇を仕留めたことを教えてくれる。


 「あ、兄貴!駄目だ……もう息が」

 「この女ぁっ!何て事をしてくれたんだ!」


 女と言われたその瞬間、ファイデは意識を取り戻す。どこを見ても道化師が居ない。居るのは倒れているあの破落戸、それから殺気だった室内。


 「こっちが油断してやったらいい気になりやがって」

 「だが袋の鼠だ! ()るぞ!」

(あっ!)


 視線を彷徨わせた先には硝子窓。それを見て思い出した。


(僕はファウストさんの所で着替えをさせられたんだ)


 彼女は可愛らしい女の子。当然、男物の服など持っていない。


(ぼ、僕は……)


 道化師に騙された。彼奴の幻覚によって、自分は男物の服を着ているものだと思い込んでいた。


(あ、ああああああ!)


 女の子に着替えをさせられたとか、眠っている内に裸を見られたとかそんなことはこの際もうどうでもいい!問題は今自分が女の格好をしているってこと。

 思い出すのはあの日の姉さんの姿。これから僕を、奴らは直ぐに殺してくれない。少なくともあの日の姉さんと同じ格好にさせられる。そこで僕の正体が明るみに出る。


(い、嫌だ)


 恥ずかしいとかそんなレベルの話じゃない。このままでは卒倒どころか憤死しかねない。


(それなら、いっそこのまま)


 視線を落とした銀のナイフ。それを自分の胸まで持って行く。これを突き刺せば、ここから逃げられる。ちょっと我慢すればそれ以上、僕は何も感じなくなれる。震える手でナイフを胸先へと付けてみた。一筋の血が服を汚す。僅かな痛みにも震えが増した。このまま胸の奥まで突き刺す勇気はない。それならもっと勢いを良く!振り上げた腕。それを誰かに蹴り飛ばされた。


 「……っ!」


 今の攻撃で頼りの綱であったナイフも手元から離れ、ファイデは冷たい床へと転がった。そこをすかさず盗賊の手下共に取り押さえられる。


 「何の騒ぎだ?」

 「お頭!」


 今僕を蹴った男の方を見て、破落戸達は固まった。それを追ったファイデも固まる。

 新しく室内に現れたその男は、道化師にそっくりな男。その所為でここが夢か現実か、その境界が揺らぎ出す。何故ならその男は、こちらを見て確かに笑っていたのだ。


 「なるほど。後のことは私がしよう。お前達は下がれ」

 「ひゃあ、珍しい!お頭が女に興味を示すなんて!あの時以来だ!」

 「そうそう、数ヶ月前に一回あったきりだな」

 「馬鹿!お前殺されたいのか?」

 「お前達、何か言ったか?」

 「ひぇええええ!いえ、何もっ!」


 大慌てで退室していく破落戸を一瞥し、男はふっと笑った。そうして床に転がった仲間の死体を足で扉の外へと転がした。


 「さて……」


 扉に鍵を掛け、振り向いた男。笑っているのに此方に恐怖を感じさせるその笑みは、あの道化師に本当によく似ている。


 「馬鹿な弟分を始末してくれたことに礼を言っておこうか、少年?」

 「えっ!?」

 「連中は愚かだなぁ。女と見れば見境無しだ。だからこんな失態を招く」


 女装した復讐者を酒盛りに呼ぶなんて、馬鹿な奴ら。殺されても仕方ないと男は笑った。そいつは別段、仲間の死を悼む風でもなく。


 「おや、もう私をお忘れかい?前に君とは会っているだろう?あの店で」

 「……?」

 「店先で店を覗いている君を見かけた。中に行きたいらしい君を見かねて私の連れだと言って裏口から招いてやったじゃないか」

 「裏口……」


 あれは夢だと思った。だけどそんなことが現実にあったなんて。僕は道化師の夢を見ていた。だから現実で何をしていたかがまったくわからない。唯、断片的に見たくない記憶の一部を思い出すことがあるだけ。


 「それじゃあ……」


 どこからが夢でどこからが現実?それを問うように、ファイデは男を仰ぎ見る。その顔に答えが書いてあるのではないかと思って。男の顔には一つの表情がある。それは嘲笑。それも一つの答えではあった。


 「君たち姉弟には随分と楽しませて貰ったよ。まさか、この私に向かってありがとうとはなぁ……姉を傷物にした男に向かって、ありがとうとは」


 自分達を嘲笑う男に、ファイデは怒り狂った。この男は言ったのだ。攫ったのは自分だ。最初に彼女を襲ったのも自分なのだと。この男はもう少女に飽きて店を出た。そこで自分と出会ったのだ。そうしてこいつは僕に見せた。嫌がり泣き叫ぶ姉さんを!逃げだそうとした僕の肩をしっかり押さえ、僕が気を失うまでそれを見せ続けた。無関係の客を装いながら、助けるなら今は耐えろチャンスを待てと……さも、味方のような言葉を僕の耳に囁いて。

 目が覚めた時、外はまだ薄暗かったがその頃姉さんは……もう絶望に染まった目をしていた。


(そうだ……あれは)


 あれは「助けて」じゃない。「殺して」……だ。こんなの夢だ。嘘だと僕は現実を否定して、泣きながらその場を逃げ出した。だけどすぐに高熱で倒れ込んだのだ。そして目覚めたときには……都合の良い夢と現実の記憶を捏造した。最初からあの店には入れなかったのだと、助けられるはずがなかったのだと自分の罪をなかったことにするために。姉さんを死なせたのは、殺したのは僕じゃないか。でも、そんなの認められない。だから僕は叫ぶんだ。少なくとも自分たちを陥れたのは自分ではないと言うために。


 「お、お前がっ!お前が姉さんをっ!!」

 「ああ、その顔が見たかった!良い声だ少年!」


 怒りに肩を振るわせるファイデを見、男が歓喜の声をあげる。このために、数ヶ月前あの少女に手を出したと言わんばかりに。


 「は、離せっ!」

 「無力だなぁ、君は」


 力で振り払うことも出来ない子供の未熟さを嘲笑いながら、男はファイデを暗い部屋へと投げ込んだ。


 「ぐぅっ……!」


 部屋の中は階段になっていた。突き落とされた時に足を捻ったし、身体のあちこちが痛い。それでも何処かへ逃げようと動いた先で頭に何かがぶつかった。何だろうと思ったところで男に追い付かれ、ひょいと身体を抱き上げられた。


 「うぁっ!」

 「さ、鬼ごっこはこの辺で終わりにしよう。次はもっと、楽しいことを……ね」

油断すると15禁を通り過ぎそうになるので困ったもんだ。

猟奇殺人とか性犯罪が入っているためソルディの死もファイデの死も詳しくやると18禁になる。

それでもこれそれがテーマじゃないから程ほどにぼかします。

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