お金は銀行に預けとくです。
私が期待すること、約1日。遂に来ました私のお金!
馬車が急停止し、複数の馬の蹄の音が近付いてきます。
こんな昼間に、お金を届けてくれるとは、とっ~ても親切ですよね。
「この前は世話になったな、エルフから買った薬をよこしな!」
悪役さんの誰かがテンプレの台詞を吐きます。
バランさん。ライネルさんが慌てて外に飛び出しました。
勿論、私は外に出ませんよ?
私を見て逃亡されたら困るじゃないですか。
お金なんですから、大事に扱わないと駄目なのです。
横で、ブラフさんが助けて欲しそうな目を私に向けてきます。
ですが、もう少し引き付けないと悪役達は逃げてしまいます。
ここは食らいつくまで、馬車の中に待機です。
「てめーら、こないだの裸族じゃねーか! また恥を掻きに来たのか?」
おお、バランさん。中々上手い啖呵です。前回苦戦してた人とは思えないですね。
「うるせー。おめーは何もしてねーだろ。あの小娘がいたから負けただけだろーが!」
その通りです。悪役誰さんか知りませんが、もっと言ってやって下さい。
どうもこの人達、私の価値に気付いていませんから。
「はん、いつまでそんな台詞が吐けるんだろうな」
「どういう意味だ!」
バランさんの意味深な台詞で、悪役達さんが少し浮き足立ちます。
「お嬢ちゃん、出てきてくれ!」
「ま、まさか!!」
ええええ、そこで私を呼んじゃうのですか? それだと作戦が……
ここはアレです――うん。聞かなかったことにしましょう。
「………………」
シーンと音が流れます。このままだと鳥の囀りも聞こえそうです。
平和って素晴らしいですね。どうせなら鳩の方が良いかもしれません。
「てめー。脅かしやがって、デマかよ!」
悪役さん、安心したようですね。
攻める気満々なのはいいことです。
「ちょ、な、お嬢ちゃん?」
バランさんの慌てる声が聞こえます。
ですが此処は心を鬼にして耐えなくてはいけません。
そういえば、ライネルさんの声が聞こえません。何をしているのでしょうか?
まっ、あの人が話すと、場の雰囲気が駄目になりそうです。
黙っててくれた方が正解な気がします。
「よし、やっちまえー!!」
悪役さん達が、一斉に攻撃を仕掛けてくるみたいです。
「ユイさん、助けてください!」
遂にブラフさんにもお願いされました。
そこで、お礼は幾らでもという台詞は無しですか。
まぁ、今回はお金が外に居るので簡便してあげましょう。
私は、人差し指を口元に当てて、黙るように指示します。
ブラフさんは素直に聞いてくれました。
もし聞いてくれなかったら――強引な手段も考えていたので、ブラフさん自身に良かったですねと言っておきます。
「お嬢ちゃーーーーーん!!」
バランさん切羽詰まってますねぇ。
そろそろ頃合でしょう。フィッシュ! と叫びたいぐらいですね!
『魔法! バインド!』
あっ、腕の動作忘れました。もう止めましょうメンドイだけです。
この馬車を中心に、私のイメージした木の弦が、動く者全てを拘束していきます。
「な、なんじゃこりゃーーー!」
「はっ?」
「何が起きた!」
「動けねーー!」
「うぉ!!」
「何処から!」
「すごぉーい!」
悲鳴の数は7。
全員捕獲出来たようですね。作戦大成功じゃないですか♪
状況を確認する為、ブラフさんを残して外に出ます。
「おお♪」
悪役さんが5人、見事に拘束されています。余計な人も絡まってますが気にしません。
悪役さん達のお馬さんも、無傷なのが素敵です。
お馬さん売ると高そうですし。
いやーグッドジョブじゃないでしょうか?
「「「「「てめーは!!」」」」」
悪役さん達の驚く声。ふふふ、お金の匂いがぎゅん○ゅんします。
「ちょ、お嬢ちゃんこれは無いだろ?」
「ユイちゃんひどいにゃ!」
バランさんの悲痛な声はこの際無視です。
ライネルさんやはり話すと駄目ですね。
「さて、悪役さん達、有り金全部出してください♪」
「「「「「「「は?」」」」」」」
別にバランさん達まで驚かなくてもいいじゃないですか。
「で、す、か、ら、全財産く~だ~さ~いな♪」
スマイルをつけて可愛く言ってみます。
「「「「「へっ?」」」」」
うーん。5人相手するのは大変そうです。
『魔法 シャラップ!!』
悪役Bさん(勝手に名付けた)を除く4人に、沈黙の魔法をかけます。
なんでもありですね天使。
「私はお金に困っています。ですから下さい」
「アホか!」
Bさん以外は口をパクパクさせるだけ、声が出せないようです。
魔法の効果バッチリですね。
拘束されて喋ることも出来ない、いい加減諦めて欲しいです。
ちなみにバランさん達は、もう私の好きにさせることに決めたみたいです。
苦笑いを浮べてますから。
「それは、くれないと言うことですか? う~ん、困りましたねぇ。でしたらアナタには死んで貰って、他の人と交渉しましょう♪」
冷たい微笑とやらを浮べてみます。
「ま、待て、慌てるな。何もそんなことは言ってない!」
結構効果がありました。私やれば出来る子みたいです。
「ではくれるのですね♪ 助かりましたぁ♪」
「……………」
何故沈黙するのでしょう?
「それでは、近くのアジトに向かいましょうか? どうせお宝は、そこに保管してるんでしょ?」
「どうして判るんだ!!」
「そんなの、悪役さん達の行動を見れば一目瞭然。全身火傷の人を連れて戻り、すぐ襲ってきたのです。近くに無いと無理ですよ」
バランさん達、その見直したみたいな視線、気になるんですが……
「くぅ……判った――その代わり条件がある!」
この状況で、まだそんな台詞を吐けるんですか。関心します。
「なんでしょう? 聞ける条件なら叶えてもいいですよ」
これは本気です。交渉には飴と鞭が必要なのです。
「ああ、簡単なことだ。代わりに俺たち全員の命の保証をしてくれ。そしたら、金目のモノは全部くれてやる!」
目が血走ってます。心底嫌そうに見えます。
一瞬にして、全財産失ったらそうなるでしょう。
でも、元々は他人の物でしょうし、所有者が変わるだけなので、私の心は痛みません。
条件は、妥当な線ですね。
「ふむふむ。隠し場所に案内してもらってから判断しましょうか。嘘をつかれても困りますし」
「ああ、判ってる……」
「それでは、Bさんだけ開放します」
弦のイメージを変化させ、Bさんの両腕のみ拘束するように変化させました。
『あっ、バインドチェンジ!』
少し遅れたけど、セーフですよね?
一々宣言するのも疲れます。
――この後、悪役さん達のお宝は根こそぎゲットしました♪
といいましても、余り量は無かったのですが。
大きなお宝はかさばるみたいで、宝石に換金し、運びやすくしていたみたいです。
私にとっては好都合ですね。
小さな小箱分の宝石と貨幣、大体10S程でしょうか。
臨時収入です。
まぁ、弱そうでしたし、よく此処まで貯め込んだと、誉めるべきかもしれません。
あ、ちゃんと約束を守って逃がしてあげましたよ。
考えてみたら、これって銀行みたいなものじゃないですか。
勝手にお金を貯めてくれるのです。
必要になったら貰いにくる。財テクです!
やってることが天使っぽくないと言っちゃ駄目ですよ♪
少し、村田基さんを思い浮かべたのは内緒です。
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