可愛いは最強なのです。
商人さんの名前はブラフさん。駄目親父Aがバランさん、残りの一人がライネルさんと教えてもらいます。ライネルさんは、皮鎧を身に着けていますので、素早い動きが得意そうです。
「私はユイです。短い間ですがヨロシクお願いします」
「ああ、ヨロシク(よろろん♪)」
ブラフさんとの会話を聞いていたのでしょう。
2人はあっさり歓迎してくれました。
気のせいか、変な声が混ざっていたような……
「皆さんは、どこで知り合ったのですか?」
手頃な質問からしてみることにします。
「ああ、俺とライネルの2人はギルドで依頼を受けたのだ。その雇い主がこのブラフさんってとこさ」
駄目親父Aもとい、バランさんが答えてくれます。
「そうなんですか、そのギルドって何でしょう?」
ドリルに似ていて嫌な名前です。宿題? なんですかそれ、写すものですよ。
「おいおい、ギルドも知らないのか?」
バランさんに呆れられます。
コッチの世界に来てから、まだ日が浅いのです。
全て知ってたら神様じゃないですかと反論しときます。
でも神様というと……あの人ですか。うーん。
渋めな声でしたが親父趣味じゃないので、どうなんでしょう。
高○健さんみたいだったら良いですよね。
「まぁ、バランさんそう言わないで。彼女は森のエルフに育てられたと言ってたじゃないですか、俗世のことに疎いのは仕方ないと思いますよ」
ブラフさん良い人です。ちゃんとフォローしてくれます。ケチですけど。
「それもそうだな。変な質問も納得ってもんだ」
「それで、そのギルドとは何でしょう?」
いい加減に教えて欲しいです。
焦らされてるみたいじゃないですか。
「ああ、悪いな。ギルドとは、冒険者の組合みたいなものだ。加入した者に仕事の情報、斡旋をしてくれる。興味があるなら登録すると良いと思う。お嬢ちゃんの腕ならさぞかし喜ばれるだろうよ」
ふむふむ。つまりはハロー○ークみたいなモノですね。
でしたら、生活基盤を得る上で、登録しておくのも良いでしょう。
「判りました。どうしたら登録出来るのですか?」
「それは、簡単だ。16歳以上であれば誰でも出来る。登録費用が少し掛かるが、一度登録すれば一生物だし、添付されるカードが身分証明代わりになるぞ。それ目当てに登録する者も居るらしいな」
おお、免許証みたいに、便利ですね!
ですが、気になる一言があったような……
「今、登録費用って言いましたよね? 幾らぐらい掛かるのです?」
「幾らだったかなぁ――」
「50Cだよん」
バランさんの代わりに、ライネルさんが教えてくれます。
ええと……初めの挨拶は聞き間違いじゃなさそうです。
この人、装備だけじゃなく、性格も軽そうですね。
「あの……50Cとは?」
エヘッと笑って尋ねます。
もうこうなったら、聞くのは一時の恥というアレです。
リリム先輩のせいで要らない恥を掻いてる気がします。
「単位も知らんのか――」
バランさんの解説によると……
B、C、S、という通貨の単位があり、1000で繰り上がるそうです。
1000Bで1C、1000Cで、1Sとなります。
100Bで、大体パン1個を買うことが出来るそうです。
50Cもあれば、1人で一ヶ月、飲食するのに困らないぐらい。
1Sともなれば、半年は遊んで暮らせるみたいです。
となると、50C結構高いですね。
日本円にすると5万円ぐらいですもの。
――さて、困りました。
私は一文無しです。
これからのことを考えるなら、やはりお金は必要になるでしょう。
手っ取り早くお金を入手しなくては……
チラリ……ブラフさんを眺めると、急に身震いを始めました。
別に襲うなんて思ってないのに、どうしたのでしょう?
でも、『完全犯罪』をすれば……
うーん。魅力的な言葉の気もします。
確か中学の歴史の先生が言っていました。
歴史というのは、勝利者が作るのだ。
ならば! 私に勝てる者などこの世界に居ない筈!
しかし、そんなことしていいのでしょうか?
虫も殺せない乙女。この設定の方が可愛くないですか?
可愛いこそ最強です。止めましょう。
いつの間にか、ブラフさんの身震いが止まってました。
きっと、寒かったのでしょう。私には関係なかったのですね。
そうなると、どうやってお金を稼げば……
そうだ! 少し名案が浮かびました♪
この小説、予想以上の高評価に、正直驚いています。
これは、サド天使(あっ言っちゃった)頑張れということなのでしょうね!
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