黙っていてもお腹は空くのです。
不定期連載の予定が、意外と簡単に書けてしまったので投稿します。
あれから一週間が経ちました。
魔法が使えることで、興奮したのは一時的でした。
その後には、お母さんとの別れを思い出して涙を流したものです。
そして、考え方を変えました。
別にお母さんは死んだ訳では無いのですから、私が泣いてばかりいたら、お母さんが悲しむと思ったのです。
神様にお願いしたのに、自分でそれを裏切る行為をしていたら意味がありません。
そうなると問題が発生しました。
お腹が空くのです。
食欲魔人なのか! 等と言われそうですが、空いてしまうのもは仕方がないのです。
人間、衣、食、住と言われるように食事は大事ですよ!
まぁ、私は人間では無いですけどね。
リリム先輩に聞いたところ、見習い期間は普通に食事を必要とするらしいです。
なので私だけ特別、食い意地が張っているという訳では無いと声を大にして言いましょう。
聖天使になると、食べなくても問題は無くなるそうですが、味気ないので口に入れているということでした。
現在の私は森になっていた果実を食べて生活をしています。
しかしですよ、一週間もこの食生活ですと、現代日本に生まれた私としては物足りなくなってくる訳です。
そこで、美味しいものが食べたくなり、人の住んでいる町を探してみることにしました。
勿論、これもリリム先輩に聞いておいたのです。
このイヤリングはとても高性能でした。
電波障害や、音声が途切れることなくクリーンな声が聞こえます。
携帯電話が玩具みたいなモノですね。
その時に聞いたこの世界の概要は。
この世界をアスティアと呼び、世界の大半を占める大陸には、大まかな4つの大国があり、それに細々とした小国が乱立しているそうです。
オルフェン王国、人間が建国した国であり、人口が一番多く発展している。
ガイアス帝国、人間が建国した国であり、オルフェン国と長年に渡る争いを繰り広げている。
アイヤール国 エルフが建国した国であり、魔法技術が高くそれを生計としている。
ルニア共同体、ドワーフが元の国であり、職人さんが数多く生息しているそうです。
文明レベルは、平たく言えばヨーロッパの中世の頃らしいです。
少し物足りないですね。
ですがまぁそれはそれで楽しいかもしれません。
此処で気付いたのは、なんて素敵ワールドでしょう。
エルフと言えば、美男美女が相場ですし、ドワーフの職人さんかっこいいです。
そんな想像上だと思っていた種族が暮らしているなんて、アスティア、思いっきりファンタジーしています。
更に、魔法というのが日常に存在するのも、とても在り難いじゃないですか。
私が使った魔法を説明するのに、トリックですと言い切るのは多少辛いものがありますしね。
さて、善は急げです。
今いる場所がプレラの森と言われる深い樹海の中なので、一番近くにある北の方角のオルフェン王国を目指してみることにします。
魔法を使って空を飛んでいけば一瞬な気もしますが、そこはあれ、目立つじゃないですか!
そして、まだ羽も生えて無い訳ですし、落下したら怖いのです。
天使なのに小市民的な考え方ですいません。
私は誰に謝っているのでしょう?
2日程森の中をルンルン気分でハイキングした後でした。
やっと森から抜けることが出来ます。
頭上を遮られることなく、太陽が注いでいるのはとても気持ちが良いですね。
私の背丈ほどの雑草を越すと未舗装な道がありました。
手入れされてないのでしょう、雑草が道の方まで侵食してきています。
ですが、私の心は明るいです。
道というものは村や町との間を繋いでるものなのです。
もし、洞窟とかに繋がっていたら――急な山崩れが起こる可能性があるかもしれません♪
それぐらい、ご飯が食べたいのです!
少し、道なりに北の方に進んだ時でした。
何か鍔迫り合いをする音が聞こえてきます。
金属の打ち合わせる音と緊迫する叫び声、アスティアは平和じゃないんですね。
本来は係わり合いたくは無いのですが、久しぶりの人の声に興味が沸いてしまったのでしょう。
そちらの方に進んでいきました。
どうせ通り道なので行くしかないのですけど。
どうやら、一つの馬車を複数の武装した悪役面の人達が襲撃しているみたいです。
何故悪役面って判るかと言いますと、どうみてもヤラレ役じゃないですか。
そんなものは見なくても悪役面と決まっているのです。
ですが、このヤラレ役は中々手強そうです、馬車を守る護衛の人達も苦労しているのが手に取りように判ります。
さて私はどうしましょう?
私が本気を出せば一瞬で決着が付くと思うのですが、こんな可憐な見た目の私が暴力なんて、美しくないです。
やっぱり乙女思想的に、こういう場面は白馬の王子様が来て助けてくれると思いたいのですが……
ここで、一つ気付いてしまいます。
もし、助けたら感謝されること請け合いじゃないですか。
そしたらご飯ぐらい奢ってくれるのではないでしょうか?
私は考えてみたらお金というものを持っていないのですから、此処は恩を売ることが正解な気がします。
ですので、急がないとです。
走りだして近付いても、未だにヤラレ役の方達は気付いてくれません。
まぁ私は背後ですから、中々難しいのでしょうが。
お陰で、怯える商人風の人と護衛が2人、ヤラレ役が6人というのが判りました。
近くに潜んでいる人は居なそうです。
多勢に無勢ですし、隠れる意味は無いのかもしれません。
護衛の人達は私の存在に気付いたようですが、正直落胆した顔をしています。
まぁ、この容姿にヒラヒラした洋服ですから、判らなくはないです。
どちらかといえば、襲われている方が似合いそうなものですし。
ですが、そのせいで悪役達にバレテしまいました。
それについてはどってことは無いですが、案の定な見た目の人達だったので、少しは想定外なことを期待したかったです。
「なんだお前は!」
そうです、私が変な天使です! とは言えないので他の台詞を言います。
「通りすがりの善良な市民Aです」
「は?」
悪役Aが固まりました。
※ 誤字、脱字、修正点などがあれば指摘ください。
評価や感想、コメントも是非にです。