プロローグ 3
私は、父を幼い頃に失くし、母1人娘1人の母子家庭で暮らしていました。
お母さんはとても優しく、私はお母さんが大好きでした。
その日も、お母さんの給料日だった為、外で外食をしたのです。
我が家では、お母さんの給料日に少し贅沢をするのが決まり事だったので、美味しいものが食べれる日だったのです。
その帰り道、お母さんの運転する車の助手席で、他愛も無いことを話しながら過ごしていた時でした。
信号待ちをしていた処、急に背後から凄い衝撃を感じたのです。
そこで、私の意識が途切れました。
気付いたら、一面真っ白の世界でした。
どうして立っているのかすら判らない、上下感覚が狂いそうになっていました。
しかし、体がふわふわしていて、重力に関係無く浮いていることが判ってホッとします。
現状、そこで安心していいのか判らないですが、やはり落下するというのは恐いものなんですよ!
時間にして、数分、いえもうちょっと経った頃でしょうか、いきなり頭の中に声が響きます。
声は落ち着いていて、どこか渋みのある男性の声でした。
「ワシは神だ。新庄 唯よ。今お前たち母子は瀕死の重体に陥っている。このままでは間違い無く二人共死ぬだろう」
「え、嘘! 嫌! お母さんが死ぬなんて!」
私は声を震わせて叫びます。
後になって考えると、良くそんな一言で神なんていう怪しいものを信じたモノです。
でも現状がファンタジーな状況だったのでつい信じてしまったのです。
「そう叫ばなくとも聞こえている。聞こえるという言い方も本来はおかしいのだがな。まぁそれはいい。もし、お前が望むならお前の母親である、新庄 琴音の命を救うことが出来るが……」
「お願いします。どんなことでもしますから、お母さんを助けて下さい」
「お前ならそう言うだろうとは思っていた。しかし――」
神様は、ここで言葉を区切ります。
その間に私は覚悟を決めます。
とても言い難いことだというのが判るからです。
「なんでもおっしゃってください。私は此処までお母さんに何も恩返しを出来てないのです。家事を手伝ったりして自分なりには頑張ってきました。しかし、そんなものはお母さんに与えられたモノから比べたら大したことではないのです」
「……うむ。そなたの決意は判った。なら言おう――もし、お前の母親を生き返らすというなら、代わりにお前が死ななくはいけないのだ」
神様の言わんとしてることは、母親を生き返らす為には私が死ねば良い。
逆に私が生きる為には母さんが死ぬということなのでしょう。
でも、疑問が沸いてきます。なんで私にそんな話しをするのでしょうか?
本来、神様といわれる方が、個人に一々干渉するというのが変だと思うのです。
「話しは判りました。どうして私にそんな話を教えてくれるのですか?」
「ふむ。その疑問は最もだろう。簡単に言うとそなたの魂がとても美しいのだ」
「意味が判りません。魂とは何なのでしょう?」
「お前達はどう考えているか知らないが、世界というのは一つではないのだ。多数の世界が平行してなりたっている。そして、死ぬと魂といわれるものが体から抜けて、新たな器を多数の世界の中から見つけて転生を繰り返すのだ」
「はぁ……失礼ですが、良く判らないです。ですが死んだ時に魂というものになるというだけは理解しました」
「うむ。今はそれでいい。そして、それが重要なのだ。稀にすごく澄んだ魂というのが存在する。その者達をワシは集めているのだ。そして、お前の魂はとても美しいのだ」
「そういわれましても、私は普通の女子高生ですし、そこまでの評価を受けるいわれが……」
「まぁ、そうだろうな。普通には見えないものだ。だが、そういうモノだから、そうと認識して欲しい」
「判りました」
私は此処で覚悟を決めます。
お母さんを救う為なら何でも出来るといったのは嘘ではないのです。
「その条件で構いませんので、急いでお母さんを助けて貰えませんか?」
「……本当にそれで良いのだな?」
「――はい、お願いします」
「承った。お前の肉体に残る生命力を全てお前の母親に捧げることにする。それで母親は助かるだろう。その後、お前はワシの使徒となり、新たな肉体に転生する。最後に一つだけ望みを叶えてやる。これは死んだ際に誰でも一つだけ叶えるシキタリなのだ」
「それでは、お母さんが悲しまないようにして下さい。一人になったお母さんが、その後幸せになれるのが私の望みです」
「うむ。了解した――」
お母さんが泣く姿は見たくないのです。
悲しい話は苦手なのですが……
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