プロローグ 2
先程私を突き落とした飛行生物の名前はリリムと言うことが判明しました。
自分から名乗ったのでそうに違いないです。
リリムは、私を湖から引き上げると、どうして探していたのかを説明してくれました。
「全く! 君は見習い天使なんだから、先輩のアタシに手を焼かせないでよね」
以上です。
なんといいますか、後は自分で悟れということなのでしょうか?
少ない単語から判るのは、どうやら私は見習い天使らしいです。
そして、リリムも天使で先輩ということなので、リリム先輩と呼ぶのが正しいのでしょうね。
「あのー、リリム先輩? その天使とか見習いとかさっぱり判らないのですけど?」
「え? なんで? ああああ、又神様が手抜いたのかぁ! これだからあの髭親父は駄目なんだよなぁ」
リリム先輩が、頭を掻き毟っています。
器用に、頭の輪が手の位置を察知してよけるのをみると、中々高性能ではないですか。
一家に一台欲しいものです。
私が、物思いに浸っていると、
「キューーーーーーン!!」
という音が空から聞こえてきます。
まるで飛行機が空を飛んでるような音です。
その音が徐々に近付いてきて、
「ガコン!!」
リリム先輩の頭の辺りで盛大な音がしたと思ったら、リリム先輩がうつ伏せに倒れました。
その近辺が大きなクレーターになっているので、威力がいかに凄いものだったかが判ります。
後頭部には、此処からでも判る大きなたんこぶが出来ているのが見えました。
近くに、湯のみの残骸が転がっているので、あれがぶつかったみたいですね。
「すいません神様。もう言いません。アタシが悪かったです。もうぶつけないでください!」
リリム先輩は、慌てて土下座のような格好で空に向かって頭を下げています。
意外と丈夫そうです。
助けようとしたのですが、必要なさそうですね。
「ええと、コホン。では順番に話すな!」
リリム先輩は咳払いをして、先程の光景を無かったことにしたようです。
そこは私も空気を読める子なので、軽く見なかったことにしてあげました。
「まず、君の名前はと――」
リリム先輩が、小さな光を空間に発したと思ったら、白い紙みたいなモノを取り出しました。
便利です。ちょっと私も使ってみたいです。
「ああ、ユイ シンジョウだな。アタシはユイと呼ぶことにする」
その紙には私の名前が書いてあったのでしょう。
リリム先輩がそれを読みながら話していきます。
「そして、ユイの前の肉体が消去されているのは、もう教えられてるよな?」
消去? 前の肉体も何もやはりさっぱり判りません。
「リリム先輩、その辺りも正直意味が……」
「うわ、そこからかぁ、本当に手抜きだよなあの親父は……」
リリム先輩は慌てて四方を見て、今度は何も飛んできてないのを確認すると話しを続けてくれます。
少し見てて楽しいのは内緒です。
「この資料によると、ユイの居た世界でいうと6月28日に、交通事故でユイは亡くなっている」
「はい? いきなり死んでると言われても……」
「うーん。現状さっぱり判ってなさそうだからしゃーないか。今からユイが死ぬ時の光景を思い出させてやるわ」
今サラリと恐ろしいことを言われたような。
もし、死んだというのが事実なら、再び死の恐怖を味わえというのです。
堪ったものではないです。
「ええと、遠慮したいような……」
「ああ、別に簡単なことだから気にするな、それじゃちょっと目を瞑れ」
わたしは勿論、逃げようとしましたよ。
だって恐いものは嫌ですから。
しかし、あっさりと身動き封じられました。
両手、両足に光の輪みたいなものが出来てわたしを拘束しています。
「ううう、酷いですよリリム先輩。恐いのは嫌ですって」
「はじめてなんだな? 優しくしてやるから安心しろ」
まるで処女喪失の時のような台詞を言われて、私の意識は無くなりました。
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