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スカートの中身は見ちゃ駄目なのです。

 翌日、ノイマの町を出て、快晴の中を最終目的地に向かって歩きだします。

 癒しの森亭の女将さんがお弁当を持たせてくれたので、今からとても楽しみです。

 今日中には、赤、緑の古代竜に会えることでしょうし、どうやって遊ぶか今から考えないといけませんね。



「そういえばエクレアさん。古代竜達をどうしたいのですか?」


  

 エルフと自然にとっては迷惑でしょうが、彼? 彼女らにも言い分があるでしょうし、公平な立場で接しなくてはいけません。

 それが仲裁者というものですよね。



「あ、はい、出来たらですが、今迄通りに健やかに暮らしていただければと思います。古代竜様達が暮らしておられることで、各国のバランスが取れているのです。なので、赤竜様にオルフェン国にお戻り頂ければ十分です」

「なるほど、それなら簡単ですね。一応これも聞いておきましょうか? 討伐してしまったらどうなりますか?」

「それは……」



 エクレアさんが苦渋の表情を見せています。

 私も殺したりする気はないのですが、物事には最悪という状況が付きまとうので、こればかりは確約出来ません。


  

「私も故意に倒す気はありませんよ。クロちゃんの仲間ですから、出来るだけお友達になろうと考えています」

「お友達ですか――」

「そうです。エクレアさんと一緒ですね!」


 

 ニパッと素敵な笑顔を向けてみます。

 エクレアさんは恐縮する素振りを見せてますが、それでも耳がピコピコ動いているので、結構嬉しいのかもしれませんね。


 

「ねぇ、主、赤と緑のことだけど、そんなに心配することは無いと思うよ?」

「どういうことですかクロちゃん?」

「緑は元から温厚だしね。赤はちょっと子供っぽい処があるけど、道理は判ってはいるよ。そもそも、なんでこんなことが起きてるのかが判らないぐらいだからね」

「ふむふむ、クロちゃんは他の古代竜達と喧嘩をしたことがあるのですか?」



 素朴な疑問ですが、この世界に5匹しか居ない古代竜なら喧嘩ぐらいあってもおかしくないですしね。


 

「うーん、僕は無いね。だって一番強いから、誰も向かって来なかったんだよ。古代竜は本能的に相手の強さが理解出来るんだ」

「なるほど、では、もしエクレアさんが相手だとどうなりますか?」



 クロちゃんはエクレアさんを見るとフッと鼻で笑いました。


 

「話にならないかな。エクレアの性格は好きだけど、実力が足りてないから修行が必要だね。せめて、主の趣味ぐらいに付き合えるぐらいにならないと」


 

 エクレアさんが情けない表情を浮べて落ち込みました。

 今、気のせいか余計な言葉が入ってたような……



「クロちゃん! どういう意味ですか!」



 私は頬を膨らませます。


 

「ふふふ、そのまんまだよ。温泉や水田の件を忘れたの?」



 痛いところをついてきます。

 エクレアさんは、さりげなく私達の会話に耳を傾けているようです。

 興味はあるみたいですね。

 今度は、耳が動いてませんけど。



「あれは……皆喜んでくれたじゃないですか。クロちゃんもお風呂とご飯大好きでしょ?」

「うん、お風呂って気持ちいいものだったし、ご飯は食べたことなかったから、少し驚いたよ。但し、一歩間違えれば大惨事だったのを忘れちゃ駄目だと思うんだ」


 

 正論ですね。ですが、どうしても手加減というのは苦手なのです。

 大は小を兼ねると昔から言いますし、牛丼は並より特盛りの方がお得感があると思います。

 玉子とお味噌汁をつけると、結構な値段になるのが微妙ですよね。



「そうやって、皆して私を責めますけど、サボってると仕事をさせるじゃないですか。実は仕事してる私を見るのが好きなのですね。全くツンデレなんですから」

「僕はツンデレじゃないよ!」

「クロちゃんは素直じゃないので、そんな話は聞いてあげません!」



 私を苛めた罰です、少し意地悪をしないとですね。



「むむー。主だって天邪鬼じゃないか!」

「昔から、美少女はお茶目なものなのです。その点私は絶世・・の美少女です。お茶目を極めないといけませんね」

「お茶目って……」



 クロちゃんが疲れたように、溜息をついています。

 その代わりに、今度はエクレアさんが話し掛けてきました。

 さすが耳が長いだけあってよく聞こえてたみたいですね。



「ユイ様に質問なのですが? ひょっとして、ユイ様がお住まいの処の温泉と、広大な湖はユイ様が作られたものなのですか?」

「ええ、隠しておいても仕方ないので言いますが、私が作ったのです。中々良い出来ですよね」

「え……」



 エクレアさんが言葉を失っています。

 私は何も間違ったことを言ってないですよね。



「どうしたのですか?」

「あっ――いえ、失礼しました。確か火山が噴火したことで、天変地異から河川が氾濫して湖が出来たと聞いていたものですから……」

「世間ではそうなっていますが、実はちょっとばかし恥かしいので内緒にしているだけのです」

「ちょ……ちょっと、ですか――」

 エクレアさんが乾いた声を出しました。

 喉が渇いているのですかね。



 お昼を過ぎた頃になると、森の緑が濃くなってきました。

 それに伴ない、今迄静かだった森から大きな破壊音が聞こえてきます。

 鳥や獣が逃げ出す気配が無いところを見ると、もうこの辺りには居ないのでしょうね。

 エクレアさんも苦しそうに顔を歪めています。

 エルフは森の精霊の声が聞こえるそうなので、精神にダメージを受けてしまったようです。


 

「エクレアさん、これならどうですか?」


 

 私は緩和するように、魔法を使ってみました。

 効果は、精霊からの干渉を失くすものです。

 精霊の行使も出来ないと思いますが、エクレアさんに戦ってもらうつもりはありませんし、見物するだけなら十分でしょう。

 私の魔法は想像魔法みたいなモノなので、なんでもアリみたいなスキルなのです。

 一種のチートですかね。

 但し、出力が高いのが問題です。

 昔はよく制御していたものだと関心します。

 疲れは美容の大敵らしいですし、無理はよくないですよね。



「はっ! ありがとうございます。急に声が止みました」

「どういたしましてですよ。それと、魔法が使えなくなってますので、危険な真似をしないで見ていてくださいね」

「判りました、お任せします」



 うんうん、素直ですね。


 

 そのまま、音の震源地に向かい近付いて行くと、破壊の後が見えてきました。

 樹齢の長い沢山の木々が倒され、折れ曲がっています。

 草や花は炎により焼けただれた姿を晒し、さながら戦争映画の一シーンのようです。

 之だけの量の木材が在れば、家が沢山作れそうなのに、勿体ないことをしていますね。

 そう思っていると、



「うわっ!」



 エクレアさんの悲鳴と共に、赤い光線のようなものが高速で此方に向かってきました。

 光線は高熱と眩しい光を伴ない、私達の横をすり抜けた後に、はるか遠方で弾けたような爆音を轟かせました。

 背後を振り返ると、この位置からも黒い煙が見え、火の粉が届いていますから、その勢いがどれくらいのモノだったか容易に想像出来ます。



「これは、確かに迷惑ですね」

「うん、ちょっとやりすぎだ」


 

 私の呟きに、クロちゃんが頷きました。

 そして、再び前方を見ると、今度は遠くから大きな赤い物体がその重量を伴なって飛んできました。

 ぱっと見たところ、体長だけで30mはありそうですね。


 

「ええええ!」



 エクレアさんが絶望の声を上げています。

 このまま何もしなければ間違いなく潰されてしまうでしょうし気持ちは判ります。

 さて、どう見ても竜ですね。

 こんな色の竜は他に居ないでしょうし、これが古代赤竜なのでしょう。

 折角会いにきて、先程の光線みたいに通り抜けられるのも嫌です――



「ユイちゃーん! キック!」

「うがっ!」



 私の華麗な蹴り技で、再び元来た方向に跳ね返してみました。

 ちゃんと背中を蹴るあたりが私の優しさですね。

 その際に少し変な音が聞こえましたが、口癖でしょうから気にしてはいけません。

 そして、気付きます。

 視界から消えてしまいました。

 こんなことなら、ユイちゃん踵落としにすべきでした。


 

「主、スカートでキックは中身見えるよ」

「クロちゃんのエッチ!」

「別に主のパンツなんて見たくないよ」



 むむ、今の台詞は忘れませんからね!


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