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エルフのお家は木製なのです。

「はいどー、シルバー!」

「…………」



 クロちゃんが冷たいです。

 私達はクロちゃんの背中に乗りアイヤール国に向かって飛んでいます。

 古代黒竜の鱗がゴツゴツしているので、座りやすいようにクッションを取り付けてみました。

 本来なら鞍の方が良いのでしょうが、可愛くないから却下です。

 どうせ魔法で寒さ等の保護をしますし、私は落ちても死なないですしね。

 上空から見る、アスティアの大地はとても美しく、流れる景色は濃い緑と美しい青に彩られています。もう少しクロちゃんが速度を落としてくれれば、生い茂る木々と水量豊かな大河を楽しめるのですが、仕事熱心で困っています。

 エクレアさんなんて、がたがた震えて私の背中に張り付いてるぐらいです。

 ドラゴンの背中に乗る経験等滅多に出来ないので、きっとドラゴン酔いなのでしょう。

 吐く時はクロちゃんの背中にして欲しいですね。

 しかし、どうして反応が無いのでしょう? 

 シルバーがいけなかったのでしょうか?

 ならば、



「はいどー、ロシナンテ!」

「…………」



 更に速度が上がりました。現地に早く着きたいのですね。

 これはひょっとして、私にジェットコースターを味合わせてくれてるのでしょうか?

 クロちゃんはサービス精神が旺盛です。

 もっと喜ぶように声を掛けるべきですね。



「はいどー…………」

「ユイ様! お願いします。もう言わないで下さい」


 

 私のやる気をエクレアさんが止めました。

 声色が非難めいています。何故でしょう?

 後ろを軽くみると、エクレアさんの顔色が悪いです。



「どうしたのですか? クロちゃんの期待に応えてる途中なのですが」

「いえ、クロロスフィア様は怒っておられるのです!」

「そうなのですか、クロちゃん?」

「…………」



 クロちゃんは無反応です。問題ありませんね。



「ほら、怒ってませんよ? エクレアさんの勘違いですね」

「いいえ、どう見ても怒っておられます」

「本当は、怒ってるのですかクロちゃん?」

「…………」



 やはり、反応がありません。



「大丈夫そうですよ?」

「……いいえ、私の考えですと、そのハイドーほにゃららがいけないと思うのです」

「オカシイですね。私の国では有名なお馬さんの名前なのですが?」

「それが、問題なのかと、古代黒竜様を馬なんていう下等生物と一緒にされるからですよ」



 お馬さんは、愛嬌があって可愛いですし、下等なんかじゃないと思いますが。

 エクレアさんがそうとまで言うなら少し賭け声を変えてみましょう。


 

「クロちゃん可愛いですぅ」

「う…………」



 微かに反応がありました。

 脈がありそうです。それならば、、



「エクレアさんも一緒に! さん、はい!」

「「クロちゃん(様)可愛いですぅ」」 

「ああ、もう! 主止めてよ! それに、エクレアまで……」

「すみませんクロロスフィア様、ユイ様の命令は無碍に出来ないのです――」



 クロちゃんの念話が私達に届くと、エクレアさんが慌ててぺこぺこ謝っています。



「エクレアさんは悪くないですよ。クロちゃんがダンマリしてるからです」

「……主、僕が怒ってたのに気付いて無かったの?」

「スピードを上げるのに集中してたからじゃないのですか?」

「はぁ……すごい無力感を感じるよ」

「クロちゃんは無力じゃないですよ。お料理が得意じゃないですか!」

「主だって上手じゃないか!」

「なるほど、私の手料理が食べたいのですね。クロちゃんは甘えんぼです」

「違うから!」



 素直じゃないですね。



「本当に要らないですか?」

「いいよ……」

「本当に本当に要らないのですか?」

「そこまで言うなら何か作ってくれてもいいよ?」

「ふふふ」


 

 思わず笑みが零れでてしまいます。



「もう、別に食べたい訳じゃないからね!」



 クロちゃんはツンデレですね。

 エクレアさんはというと、私の腰を握る手が弱くなりました。酔いを克服したのですね。

 でも、私が寒いので魔法で防御してますが、もし解いたらエクレアさんの尖った耳は風でどうなるのか気になります。プルプル揺れてたら可愛いかもですよね!



 そうこうしている間に、目的地であるアイヤール国の首都が見えてきました。

 美しい湖の周りに町が広がってます。その真中に白亜のお城があり、全体的に丸い形がどこか女性的な感じがします。

 治めているのが女王という話なので似合っているかもしれません。

 しかし、エルフといったら森の民というイメージがあります。

 やはり木造がいいような……一回壊して木造に建て替えてくれた方がぴったりな気もします。

 赤と緑の古代竜さんにここで争って貰えば……なんて思ってませんよ。


  

 ――お城の正門を飛び越し、沢山の花に囲まれた中庭にクロちゃんは降り立ちました。


 

「とぅ!」


 

 私がクロちゃんの背から飛び降りると、エクレアさんもそれに倣います。

 一面の芝生の匂いを感じ思わず寝転がりそうになりますね。

 その間にクロちゃんも人間型に戻ったようです。私のクッションは何処に行ったのでしょう?

 すると、沢山の皮の鎧と槍を手に持った長耳族な人達が近付いてきました。

 流石エルフさんです。全員が整った容姿をしています。


  

「何者だ!」


   

 その中の一人が誰何するように私達を見てきます。


 

「クロちゃんと愉快な仲間達です!」



 胸を張って名乗ります。 



「……クロちゃんとは誰だ!」

「この子です!」


 

 私はクロちゃんの背中を押して、ずいっと前に出しました。


 

「お前がクロちゃんか! さっきの竜はどこにいった!」


  

 そんなに気になるとは、ひょつとして、竜が好きなのでしょうか?

 まさか、クロちゃんの隠れファンなのでは!


 

「主、僕に何を期待してるの?」


 

 クロちゃんは、兵士さんの質問を無視して私をジトーと見ています。


 

「私のクロちゃんがいかにプリティかを全世界に紹介したいだけですよ!」

「……ふーん」


 

 ちょっと耳が赤い気がします。


 

「こら、無視をするな! 歯向かうようなら此方にも考えがあるぞ!」

「ちょっと煩いですね。黙ってて貰えませんか?」

「…………」


  

 私が文句言うと、兵士さんは呆気に取られたように静かになりました。

 素直で大変よろしいです。


 

「さて、悪者が大人しくなりました。お茶でもしましょうかクロちゃん?」

「ちょっと待て! 話を聞け!」


 

 兵士さんが喚いています。

 ああ、そういえばエクレアさんが居ましたね。何とかしてもらいましょう。


 

「エクレアさん、どうして黙っているのです? ひょっとして、私の理想に協力してくれる気になったのでしょうか?」


  

 クロちゃんに頑張って壊してもらわないといけませんね。


  

「あっ、違います、ユイ様! 少し固まっていました。おいお前達! 私の顔を見忘れたのか!」

「あ! 近衛隊長エクレア様! どうしてこのような者達と一緒におられるのですか?」


  

 エクレアさんの台詞に兵士さんは驚愕し、私達を怪訝な目で見ています。

 しかし、今の一言は気に入りません。

 そこまで言われるなら帰ることにしましょう。

 赤と緑の古代竜さんには是非ともお城を破壊するまで頑張って欲しいものです。


 

「エクレアさん。どうも私達はお邪魔みたいなので、観光でもして帰ることにします。クロちゃん、この辺だとどこが楽しそうですか?」

「そうだね。主ならルニア共同体が好きかもしれない。色々なからくりとか作ってそうだよ」

「おお! 良さそうですね!」

「ちょ、ちょっと待ってくださいユイ様! 私達を見捨てるのですか!」

「所詮私とクロちゃんは『このような者』らしいので、自分達の事はそちらでやって貰おうと思っただけですよ。私のクロちゃんを馬鹿にするような人なんて知りません」

「こらお前等! 今すぐ詫びないか!」

「ですが……」


  

 エクレアさんが叱責しますが、兵士さんは嫌そうです。


 

「アイヤール国までの空の旅も楽しかったですし、エクレアさんともお友達になれたのですが、無理強いは良くないですよ。さぁクロちゃん行きましょうか?」

「主、本当にいいの?」

「当然です。クロちゃんは私の家族なのです。家族を侮辱されたのですから知らないです」

「判った。じゃ行こうか!」


  

 なんだかんだ言ってもクロちゃんは嬉しそうです。


 

「ユイ様お願いします! あーもうお前が余計な事言うから!」


 

 エクレアさんが、大股で兵士さんに近付いて行くと、思い切りガンッと殴りつけました。


 

「うがっ!」


 

 そのまま、兵士さんは地面に倒れます。

 女の子はそんな歩き方しちゃ駄目だと思いますよ。


  

「エクレアさん酷いですね……」

「エクレア鬼……」

「いえ、これはしつけです! 今ので無かった事にしてもらえないですか?」

「「「エクレア様ひでー」」」


 

 見ていた他の兵士さんも言ってますね。


 

「それなら、エクレアさん? クロちゃんをどう思いますか?」


 

 エクレアさんは少し考えるようにすると笑顔を向けました。


 

「可愛いです!」


 

 う、そうきましたか。


 

「むむむ、仕方ありません。エクレアさんに免じてもう少しだけ居ましょうか」

「エクレア……覚えてろ……」


 

 エクレアさんは私の言葉にホッと胸を撫で下ろしましたが、クロちゃんの台詞に今度は顔を引き攣らせていました。


 

「さぁ、ユイ様此方です!」

「仕方ありませんねー」


 

 私がエクレアさんに付いていったので、クロちゃんも従います。

 私達の後ろには、兵士さん達が鎧の音をさせて追従してきました。

 蟻さんみたいですね。

 エクレアさんは途中ですれ違った侍女に何か話しをすると、迷う事なく進んで行きます。

 そして、一つの扉の前に止まりノックしました。


 

「女王様、エクレアです。ユイ様をお連れしました。よろしいでしょうか?」

「あ、エクレア、待ってたわ。すぐにお通しして下さい!」


  

 エクレアさんの声の数秒後、綺麗な声が部屋の中から聞こえてきました。


  

「失礼します」


  

 エクレアさんがドアを開けると、中には大きな机がありその横に、小柄な長い銀色の髪をした、青い目のエルフ女性が立って居ました。

 一人しか居なかったので、この人が女王様なのでしょう。服も飾り気は無いですが上質な物を使っているのがすぐ判ります。見た目的には20歳ぐらいにしか見えませんが、エルフは長寿な種族なので実年齢は不明ですけどね。


 

「ユイ様、さぁー此方に!」

「お邪魔しますですよ」

「たのもー!」

 

 私達が中に入ると、エクレアさんがドアを閉めました。

 外に居る兵士さんが何をしているのか気になりますね。


 

「態々遠いところ、良くぞおいで下さいました。ユイ様、そして、クロロスフィア様」


 

 女王様は華麗に頭を下げました。

 そして、顔を上げ、私を見た瞬間、口をポカーンと開け目が点になっています。


 

「あらあら、まぁまぁ」


  

 とりあえず、お約束ですので言っておきます。


 

「主、それ気に入ってるでしょ?」

「ふふふ、判ります?」


 

 女王様は、私とクロちゃんが話している間も、そのままでした。





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