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カツアゲは良くないのです。

「クロちゃーん、いつまでその格好でいるのです?」



 オルフェン国の人達が消えたにも拘らず、クロちゃんは未だドラゴン形態のままでした。



「最近、僕の威厳が無くなってる気がするんだよ。暫くこのままで居てカッコイイ姿を見せようと思うんだ」 

「クロちゃんは普段でもカッコイイですよー!」

「主のカッコイイはあてにならないもん!」


 

 酷い言われようです。ちなみに今は念話による会話なので、地面は揺れていません。


 

「そんなことないですって、私の審美眼は天才的だと言われたものです」

「じゃー試しにどんな物がカッコイイか言ってみてよ」


 

 うーん。そう言わると困ってしまいます。


   

「では、アレとかどうでしょう。お茶を注ぐ時に出る茶柱! あの『レアだぜ』と自己主張してる姿がいい感じですよ」


 

「………………」


  

 あれ? 返事がありません。そればかりか、クロちゃんの視線が痛いです。

 話を聞いていないバランさん等は居心地悪そうにして、クロちゃんの雰囲気に戦々恐々という感じになっています。

 古代黒竜のガン飛ばし攻撃みたいなものなので、普通は耐えれませんよね。

 さて、茶柱は駄目みたいです。仕方ありませんね奥の手を披露しますか――


 

「マジカルステッキはどうでしょう? あの可愛カッコイイ物は他にありませんよ!」

「ああ、主が趣味で作ってる唯の棒のことだよね。僕あれ何なのか未だに判らないよ」

「唯の棒ではありません――マジカルステッキです! あのステッキを持つことにより、女の子は魔法少女に変身出来るのです!」

「主が変身したところ見たことないよ?」


  

 クロちゃんが意地悪言います。


 

「それならば衣装も作らないといけないですね。今度、衣服の注文をしましょう……」

「そこまでしなくていいと思う。そもそも、その魔法少女になってどうするの?」

「ええとですね……可愛くなるのです!」

「ふーん……他には?」

「ですから、可愛くなるだけです。可愛いは正義ですよ!」

「主は十分可愛いと思うよ?」


 

 流石に面と向かって言われると照れますね。


 

「クロちゃんも可愛いです」

「僕は可愛いよりも、カッコイイがいいの!」


 

 これは思春期を迎えた者がかかるという、アレでしょうか? ドラゴンにも厨ニ病みたいなものがあったのに驚きです。


 

「大体、主は僕のことどう思ってるの?」

「大好きです!」


 

 クロちゃんの顔が心なしか赤くなってるような……

 黒い鱗に包まれているので、あくまで勘ですけどね。


 

「主、ありがとう、よく判ったよ。とりあえず此処にちょっかい出さないように、僕の雄姿を人間共に見せてくるよ。お家でお留守番してて!」


 

 それぐらいは仕方ありませんかね? 偶にはお外を散歩しないと健康に悪いですし。


 

「早く帰ってきてくださいね。クロちゃんが居ないと寂しいです」

「了解だよ」


 

 クロちゃんはそう言って舞い上がると、東方の空に向けて飛び去っていきました。

 それにしても、翼がついてるのに羽ばたかないのは何故でしょう?

 クロちゃん七不思議の二つ目ですね。

 すると、理由が判らないバランさんが私に怪訝な顔を向けてきました。


  

「なぁ、嬢ちゃん。クロ助何処行ったんだ?」

「お散歩に行ったみたいですよ」

「そうか、まぁ、ドラゴンにも息抜きが必要だよな」


 

 バランさんがウンウン頷いています。

 しかし、バランさんって実は凄いのでは? 私と違い普通の人間なのに、古代黒竜をあだ名で呼ぶ人はそうはいません。

 何も考えて無いだけかもしれませんが、ある種の才能かもしれないですね。


  

「それではバランさん私は帰りますね。後で何か素敵なプレゼントを期待してますよ」

「おい、なんだそれ!」

「当然です! わ、た、し、がオルフェン国の兵隊さんを追い払ったのです。もし、あのままだったら税金とやらを強引に徴収されて、一文無しにされたのは間違いありません。それに比べたら安いものですよね」


 

 天使の微笑みを浮べてあげます。

 ふふふ、これで落ちない人なんていないのです。


 

「いや、まぁ、そうだけどさ、お嬢ちゃん何もしてないだろ?」


  

 ……落ちないじゃないですか! 全くバランさんはどうなってるんですかね。


 

「いいえちゃんとしました。クロちゃんは私のお願いで動いたのです。私が言わなければきっと放置でしたよ」

「そう考えるとお嬢ちゃんのお手柄か……判った判った。お嬢ちゃんの好きそうなものを適当に後で持っていくことにするわ」

「それだけでは駄目です。勿論クロちゃんの分もですよ!」

「抜け目ねーな、そっちも任せとけや。それじゃあまり開けっ放しにも出来ねーから俺は店に戻るわ」


  

 バランさんは手を上げて自分のお店の方に戻っていきました。

 もう少し請求したかったのに素早いですね。逃げ足だけは速いんだから。

 さて、私もお家に帰りましょうか――やることも出来ましたしね。


 

 トボトボとお家まで歩いて帰ると、自作冷蔵庫から冷たい果実のジュースを取り出します。

 一口飲んで喉を潤してから、自分の部屋に戻りお気に入りのソファーに腰掛けました。


「さて、やりますか!」 


 耳に付けている特注イヤリングを弄り、リリム先輩を呼び出すことにします。

 …………

 時間にして数秒が過ぎた頃でしょう、綺麗な女性の声が流れてきました。

 伊達に天使はしてませんね。


 

「おお、ユイかどうしたんだ? 今結構忙しいんだがな」


  

 リリム先輩の声に混じり、爆発音みたいな音が聞こえるので大変そうです。


 

「リリム先輩お久しぶりです。それでしたら後にしましょうか? 急用という訳でもないですし」

「いや、ユイの場合は何やらかすか判ったものじゃない。聞ける時に聞いておくわ」

「それでは、まるで私が危険人物みたいじゃないですか!」

「いや、そのまんまだろ。まだ見習いの筈なのに、聖天使のあたしより強くなってるし、これで封印が解けたらどんだけって感じだよな。頼むから変なことだけはしないで欲しいわ」

「その件なんですけどね。さっきカツアゲをされたので、少し仕返しをしてきたいのです。どの程度までならいいと思いますか?」

「ちょ、待て待て、何を考えている!?」


  

 そんなに慌てても大丈夫なのでしょうか?、

 現に、フンっとか、うぉっと言うリリム先輩の台詞が混ざっていますから。


 

「いえ、それほど大それたことはしませんよ。ちょこっとオルフェン国の首都に愛の鞭を喰らわしてこようと思ってるだけなんです。エヘ」


 気持ちハートマークも付けてあげましょう! 


「エヘ、とか可愛く言っても誤魔化されないから。ユイの愛の鞭って、そのまま町が崩壊するだろうが!」

「そんなに馬鹿力じゃないですよ~。でも、今後また同じようにカツアゲされると不愉快ですし、脅しとく方がいいかなと思うんです」

「はぁ……なんでユイに喧嘩売る馬鹿がいるんだか……てか、古代黒竜はどうしたんだ? アレと一緒に住んでるんだろ? アレが居れば手出しなんてしてこないだろうが」

「人型になってたので気付かなかったみたいです。でもクロちゃんが追い払ってくれましたよ。とてもカッコよかったです」

「……ああ、もう判ったからユイは動くな。アタシが何とかしとくわ。こないだ火山を噴火させたばかりなのに、今度は断崖絶壁でも出来たら困るしな」

「そんなことしませんよ。とりあえずお城を灰にするぐらいですって」

「折角今平和になってる世界なんだ、態々混乱を巻き起こさないでくれ。アタシの仕事が増えるだろうが!」

「ふむ、リリム先輩が困るのは嫌ですね。それなら妥協してクロちゃんに破壊してきて貰うのはどうでしょう?」

「いやいやいや、確かに古代黒竜ならそれぐらい余裕だろうけど、そのせいで討伐となって、ユイが攻撃される羽目になったら大惨事だ。大人しくそこでぐーたらしてればいいんだって」


  

 むむ、クロちゃんには仕事しろと言われてるんですけどね。


  

 結局、リリム先輩の一言、『古代黒竜に華を持たせてやるんだ!』により、大人しくすることに決めました。

 オルフェン国では竜の逆鱗に触れ、神(リリム先輩)の宣託(説教)が下ったという大騒ぎになったそうです。すぐにこの場所を神域に指定したみたいですから。

 神域では無く、『私の土地!』と声を大にして言いたいですね。


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