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決め台詞を言ってみたかったのです。

 バランさんに案内されて広場に着くと、1、2……100人ぐらいの鎧な人達が居ました。

 ガチャガチャ音をさせて煩いです。



「お前が此処の代表か?」



 その中の1人、高そうな鎧を装備してる人が詰問してきました。

 私を見て驚いています。その顔に生えているちょび髭を引っ張ったら面白いかもしれません。



「代表と言うならば、バランさんですよ」



 私は横にいるバランさんを指し示します。



「え? 違うだろ。確かに俺が調停とかしてるけど、嬢ちゃんがサボってるからだろうが!」

「うん、主のサボり癖の被害者だね」



 クロちゃんに迄頷かれました。酷いです。



「私にも言い分があるんですよ。私みたいな美女が代表だと貫禄が無いと思われます。その点、バランさんなら見た目だけは強そうじゃないですか。それと影の支配者の方が格好良いです!」

「さりげなくけなしてるよな嬢ちゃん……ま、嬢ちゃんの強さは良く知ってるからそれでもいいんだが――一応代表なんだから、頼むから話してくれや」

「主、バランではこのザ鎧達の交渉は重すぎると思うよ」



 クロちゃんの助け舟にその通りと頷いて、バランさんは背後に引っ込みました。

 此処は俺に任せろとか偶には言って欲しいですね。



「はぁ、仕方ありませんね。それで髭鎧の人は何の用ですか?」



 私の台詞に髭鎧以外の鎧から一瞬笑い声が漏れました。

 ひょっとしたら髭鎧とあだ名が付くかもしれません。

 赤ちゃんと違って名付け親になっても嬉しく無いですが。

 少し髭鎧の顔が赤くなっているのを見ると、ムッときてるみたいです。



「……お前が本当に代表者なら言うべきことは一つだ。この場所は本来オルフェン国の支配地域になっておる。速やかに税を支払うように!」



 おかしな話です。


 

「……此処はクロちゃんの土地でしたよね?」

「僕の記憶だとずっと僕の土地だったね。主に上げたから今は主のモノだよ」

「そうらしいですよ? 髭魔人さん?」

「誰がそんなこと信じるんだ! それと俺の名前はラムレスだ。髭なんちゃらじゃない!」



 結構気にしてたみたいです。贅沢ですね。



「ラムネジュースさん。信じるも何も、此処にずっと住んでたクロちゃんの話が一番正しいですよ」

「ラ、ム、レ、スだ。この場所は古代黒竜の住処となっていた為に手をだせなかっただけで、れっきとしたオルフェン国の領土だ!」

「ふむふむ、スタッドレスさんの意見は判りました。では、古代黒竜が此処に居たらどうなります?」

「ふっ、居なくなったから来たのだろうが。居たら態々こんな辺境まで徴収に向かう訳が無いだろう!」

「……それって、強者には勝てないから、弱者から巻き上げると言ってるのですね?」

「ふん、なんとでも言いたまえ。ということで溜まっている税を徴収する。それとラムレスな……」


 

 名前なんてどうでも良いでしょうに。

 それにしても、どうしましょうか?

 殲滅するのは簡単ですが……お掃除するのは嫌すぎます。

 となると――



「クロちゃん。どうやらこの人達は分からず屋さんみたいです。追い返しちゃっていいですよ」

「主、今妙な間があったけど、後始末が嫌だから僕にやらせようとしてないよね?」


 

 クロちゃんは鋭いです。

 かといって税なんて払う気はありませんし、此処は全員平等が売りなのですから、他国の干渉は迷惑としか言い様がありません。排除しないと駄目なのです。


  

「おいおい、仮にも王国軍の兵隊がコレだけ居てお前等に勝てるとでも思ってるのか? 無駄に怪我するだけだぞ」


 

 ラムレスさんに馬鹿にされました。周りの鎧もそれには同意見らしくニヤニヤ笑っています。



「うーん。正直な話をしますとね。クロちゃんが本気になれば貴方達は瞬殺されますよ。怒らせない内にお家に帰って、美味しいご飯でも食べた方が良いと思います。私と違ってクロちゃんは短気ですからね」

「主、僕は温厚だと思うよ。主に仕えてるんだから」



 どういう意味でしょう? 失礼な感じがしますね。



「クロちゃん――私は優しいですよね?」

「……え、うん。すごい優しいと僕は思うよ!」




 私が軽く微笑んであげたら(目を細めて薄ら笑いを浮べるとも言います)、クロちゃんがコメカミから汗なんて掻いて詫びてきました。

 寒かったのでしょうか?



「……だから俺の話を無視するな! 出すのか出さないのかはっきりしろ!」



 ラムレスさんは気が短いですね。


  

「初めからずっと言ってますが、此処は私の土地なので税金何それです。払うなら私に払うべきで、バランさんは収入の9割でも良いぐらいですね!」

「ちょ、そりゃ冗談でもキツイって!」


 

 あっ、自分が係わるとちゃんと話してくれるのですね。バランさんだってサボり癖じゃないですか。



「もういい! 強引に徴収することになるが悪く思うな!」



 ラムレスさんが付き合ってられんとばかりに剣を抜き、それと同時に周りの鎧も武器を構えました。

 緊張感が辺りに漂っています。

 バランさんも喉をゴクリと鳴らしていますが、私とクロちゃんは平和そのものです。



「クロちゃん。やっておしまい!」

「はぁ……めんどくさいなぁ」



 一度この台詞を言ってみたかったのです。とっても満足しました。

 クロちゃんのぼやき声が聞こえてすぐ、クロちゃんの体が大きくなっていきます。

 全体に黒い鱗が現れ、鋭い爪と牙を持った西洋風のドラゴンがそこに現れました。

 体長は周りを壊さないように手加減してるみたいで、15m程の姿です。

 それでも十分大きいですけどね。

 それにしても、着ていた服は何処に消えたのでしょうか?

 クロちゃん七不思議の一つです。


 

「愚かな人間共よ。我の支配する土地に侵入するとは万死に値すると思え!」

「「「「「ひぃーー!」」」」 



 クロちゃんの脅しに、鎧さん達は顔面真っ青になっています。

 数名は腰を抜かしているみたいですね。

 古代黒竜の空き巣を狙ったのに、実は最初から居ましたみたいなものです。

 面白いドッキリ体験だと思います。



「私の土地だよー。クロちゃん!」

「…………………」



 何故でしょう? 一瞬で周りが静かになりました。



「主は黙ってて! 今見せ場なんだから――」

「仕方ないですね。後でお菓子でも作ってね」

「……判った。大人しく隅にでも座ってて」



 クロちゃんは我が侭ですね。

 仕方が無いので、バランさんと2人で移動します。

 広場には座椅子が設置されており、そこに座って観戦することにしました。



「コホン……人間共よ、大人しく去れば危害は加えない。もし抵抗するなら100倍返しでお前等の国を殲滅するが良いか?」



 どうやら、私とのやり取りは無かったことにするようです。

 照れてるクロちゃんが可愛いですね。


 

「わ、判った! 撤収する。だ、だから助けてくれ!」

「ならば今すぐ立ち去れ、そして、二度と野心等抱く事は許さん!」



 ラムレスさんもそう悪い人では無いのかもしれません。

 見なかったフリしてくれるのですから。

 といっても必死過ぎてそれどころじゃ無いとも言えますが。

 クロちゃんにしても脅すだけで手出しするのを止めたみたいです。

 きっと片付けるのが嫌だったのでしょうね。それにしても、竜になったクロちゃんは声だけで大地が揺れています。これを再現するとしたらとても高いウーハーが必要になりそうですね。

 その後は、威厳も何もかなぐり捨ててオルフェん国の人達は逃げていきました。

 勿論私は手を振ってお見送りをしてあげましたよ。

 お別れに美女が手を振る。このシーンは定番ですよね!



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