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お昼寝は大事なのです。

 あれから2年の月日が経過しました。

 食事一つで一喜一憂していたあの頃が懐かしいです。

 今は、自宅で大き目のソファーに腰を下ろし、飲み物とお菓子を食べながら本を読んでいます。

 これこそ理想のお昼ですね。

 すると、それをさせまいとする悪意の権化に邪魔されました。



マスターそういつもぐーたらしてたら太るよ!」


 

 グサッと私の繊細なハートに楔が埋め込まれました。天使を傷つけるとはやってくれます。

 私はその声を出した、黒髪、金目の美少年に思わず反論しました。



「クロちゃんの性格が悪くなってます。私の教育が失敗したのでしょうか?」

「それは関係ないよ。主の甲斐性が無いから忠告してるだけだもん」

「我が家にはお金がありますし、平和に暮らすのが一番です」

「主はそう言うけど、毎日家の中でゴロゴロしてるだけ。外に出るのは外食と、温泉に入る時というのはどうなんだろう?」



 クロちゃんの刺すような視線に少し罪悪感も沸いてきます。



「ほら、クロちゃんにも大人しくしててと言われましたし、私がやる気を出すと怒るでしょ?」

「当り前だよ。主はやること為すことが天災だもん。温泉を作った時や田んぼを作った際の出来事を忘れたの?」



 ドキ! 少し嫌なことを思い出しました。



「あ、あれは、そう。お茶目というモノです。女の子にはヤンチャも必要な時があるのです!」 

「へーそうなんだ……温泉を掘る為に火山を噴火させ、田んぼに水を引く為に川を氾濫させたのは誰だったかな?」

「……でも、山奥で誰にも迷惑を掛けてないですよ! それに、火山灰は畑の肥料にも良いし、川も人工の湖が出来て景観が良くなった筈です」

「モノは言いようだね。何でこんなのが僕の主なのか悩むところだよ」

「ほらほら、そう怒らない。クロちゃんは笑ってる時のほうが可愛いんだから」

「主、これでも僕は古代黒竜だよ。可愛いと言われても嬉しくないんだけど?」

「そうですか? 私は可愛いと言われると嬉しいですよ?」

「主は天然だからね。本当見た目だけは絶世の美女なのにどうしてこう……」


 

 失礼なことを言われてる気がします。

 このクロちゃん。正式名称はクロロスフィアという名前の古代黒竜なのです。

 お腹が満足したので次はお風呂をなんとかしようと、温泉の出そうな山を探索している途中で知り合い、私の正体に気付いてそのまま僕になったのです。

 なんでも、クロちゃんには透明な羽が背中から見えると言ってました。



「私の故郷では、養殖よりも天然の方が価値が高いと言われてましたよ。何も問題ないです!」


 

 何故かクロちゃんに、思いっきり溜息を吐かれました。



「主は本当、駄目駄目だよね。何かしたいこととか無いの?」

「うーん。したいことですか?」



 お米は水田がありますし、食料品はご近所さんに買い物に行けばすぐ済んでしまいます。私が温泉を作って無料開放したら、何時の間にか人が集まって村が出来てしまったのです。アスティアの新名所らしいですよ。

 以前は、クロちゃんがこの辺りを縄張りにしていた為に、どこの国も手出し出来なかったらしく、全くの手付かずのまま私のモノになりました。

 言うなれば大地主です。左団扇じゃないですか。

 といっても住む人から税金とか土地代とかを取る訳じゃないですけどね。

 その代わり一つだけルールを決めました。

 種族、身分に関係無く、みんな平等というものです。

 これを守れない方にはお断りしてます。

 外敵が来てもクロちゃんが凄むと逃げるので、安全も確保されていると言っても過言ではありません。

 クロちゃんの正体は、判る人にはすぐ気付かれるらしく世界一安全な場所という噂すら立っているそうです。

 それにしても困りました。そろそろ答えないとクロちゃんに何か言われそうです。

 ――そうだ! 暇つぶしにお店でも開くのはどうでしょう?

 温泉饅頭とか作るのは楽しそうです。


 

「却下!」

「まだ何も言ってないのに、どうしてですか?」

「どうせ食べ物でも作って売ればとか……そんな感じのこと考えてたんだよね?」



 恐るべしクロちゃん。伊達にテレパシーが使える訳じゃないですね!



「主、念話テレパシーは会話が出来るだけで、相手の心は読めないよ」



 恐るべしクロちゃん。伊達に美少年じゃないですね!



「主、僕の歳で少年はオカシイと思うよ!」



 何故全部判ってしまうのでしょう? 



「それは簡単だよ。主は顔に出すぎ。誰が見ても判ると思うよ」



 むむむ、顔を触って確かめます。あれ? ということは私の心がピュアな証拠なのでは?

 いい響きです。純真な乙女、正に私のことじゃないですか!



「はぁ……やっぱり主は『天然』だよ」



 天然記念物も大事にしないと駄目ですよね!



「おーい! 居るか?」



 すると、玄関の方から声がしました。



「クロちゃん、お客さんみたいですよ」

「むむー。主も少しは反省してよね!」


 

 クロちゃんはまだ言いたそうな顔をしてましたが、とりあえず玄関に向かっていきました。

 再び私に平和ぴんふが訪れました。大三元、国士無双、なんでもこいって感じですね。

 そして、戻ってきたクロちゃんの横には、お隣に住んでいるバランさんが居ました。

 バランさんは傭兵を止めて、この村で雑貨屋さんを始めたのです。温泉の魅力に負けたと言ってました。



「バランさんどうしたのですか?」


 

 私が出向く方が多いので、我が家に来るのは珍しいのです。


   

「よー嬢ちゃん。ちょっと急用でな……」


 

 まぁ、用がなければ来る筈無いですしね。 



「バランさんの用件は面倒な気がするのでお断りします」

「おいおい、そりゃねーだろ!」

「それでは――クロちゃんをお貸しします。これでどうでしょう?」

「主、少しは働け!」


 

 クロちゃんのツッコミが激しいです。



「てかさ、仮にもクロ助って黒竜だろ? もう少し大事にというか、クロ助が本気になったら国すら攻略出来そうな気がするのだが……」

「ふむふむ。クロちゃんは国攻略したいの?」

「主が言うならしてくるよ」

「クロちゃんは良い子ですね」


 

 手でおいでおいですると、クロちゃんは怪訝な顔をしてすぐに私の側まで近付いてきました。

 そして、小首を傾げます。

 私は満面の笑みを浮べて黒いサラサラした髪の毛をなでなでしてあげます。

 一瞬驚いたようですが、すぐに嬉しそうに目を細めているのがラブリーですね。

 犬なら尻尾をフリフリしてることでしょう。



「……まぁ、とりあえずクロ助はいいから、大事な話というのはな。オルフェン国の使者が代表者と話をしたいそうなんだ」


 

 バランさんは見なかったことにして話を続けます。つまらないですね。

 それにしても、やはり厄介事じゃないですか。

 かといって外で喚かれるのも近所迷惑ですし、ちゃっちゃと行って私のお昼寝時間を確保した方がいい気もします。


 

「仕方ないですね。バランさんの頼みですから合いますよ。貸し1ですよ!」

「おいおい、なんでこれが貸しなんだよ!」

驚きの第二章です。


いやー作者もびっくりですよ。

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