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羊の国から、腐女子のたしなみ


 ・・・この間の川遊びで判明したんですが、ノルディ様ったら隠してただけで、お知り合いが沢山いたんですよ。


 羊族の男性陣ってレベル高いのよね。なんていうか、眼福? 


 並んで立ち話している姿なんて、なんてビジネスライク! ネクタイないのか、ネクタイ! しかし、ずらずらと裾の長いアラビアンな扮装なので、ネクタイ似合わないなー。

 やはりきっちり着込んだシックなスーツの浸透が必要かと。これ重要。


 あとはー・・・、制服!


 ストイックな学生服の詰襟。最近浸透してきたベストにブレザー。金バッジ。ああ、(血)迷う・・・。


 詰襟は別格。だってあれってそのものずばり萌アイテムだもん。・・・引きちぎられる詰襟、弾けとぶボタン、はだけられた胸板、のしかかる鬼畜男子。・・・・・・迸る鼻血!(←誰)


 この場合、襲われ男子がノルディ様。間違っても鼻息荒く、押し倒してひん剥いたりしないので、詰襟だったら、ノルディ様は受け。


 対するブレザータイプの制服の場合、一転してノルディ様が攻め男子になる。


 醍醐味は、結べそうで結べない、永遠の萌アイテム。ネクタイの出番だ。


 たどたどしくネクタイ締める男の子を見かねて手を貸す、上級生。ネクタイ締めてあげるのがノルディさまです! ああ! 似合いすぎる!


 その場合、立ち位置はここ! あ、バミリいる? いらない? 

 でもここは、一歩も譲れません!


 ・・・朝日が差し込む窓際。たたずむ人影は繊細。(間違ってもエネルギッシュな押せ押せタイプじゃありませんもの)


 朝日を浴びて佇むは、深窓の令息。


 片手には読みかけの詩集、もしくは小説。


 繊細な指先はきっとレースやフリルが似合うだろう。白、もしくは薄い水色のドレスシャツを着込んでて・・・。


 一見 儚げ貴公子、しかし真性のドSのノルディ様。(やっぱ、Sよね!ご主人様はSよ!)


 窓際を通り過ぎる、哀れな羊・・・もとい生贄を探しているの。


 かわゆい男の子が。

 儚げな美少年が。

 真面目な青年が。

 硬派な青年が。

 軟派な美形が。


 張り巡らされた蜘蛛の糸と知らずに囚われて、ドS貴公子ノルディさまに開花させられていくのよ! 

 

 ビバ、淫靡な関係。


 子犬のような素直な子が、子猫のようないけない子が、輝くアポロンのような青年が、禁欲的な青年が、ご主人様の色に当てられて、抗おうにも抗えない、麗しの眼差しに射抜かれて、・・・・・・いやよいやよも好きのうち!


 うふ。


 ・・・ああ、もー、この大窓、請ったデザイン性と言い、素敵な織りのカーテンと言い、なんて絶好のシチュエーションなの!!(感激にフルフル)


 この大窓の下で繰り広げられる、薔薇の日々! 耽美と背徳と淫靡な香り!


 うむー、リバーシブルでも良いかもー・・・時に上になりー、下になりー・・・。


 ああ、寄宿舎の上級生と下級生でもいいかもー。そしたら、夜這いネタが使えるわ!


 風と○の詩のように! ポーの○族のように! マリ○さまが見てるのように! あ、系統が違う?


 しかしだ。今だ、望みのシチュエーションに出会ったためしは、ない。


 「オトコがほれる、オトコの中のオトコがここにいるのに・・・」


 牡羊さん達、目ぇ悪いのか?

 それともご主人様が、近寄りがたい美人過ぎるのがいけないのか。


 「なんで、これだけ良いオトコが溢れているのに・・・くんずほぐれず あはんうふんで、えろいことに ならないの・・・」


 はあ、がっかりだ。


 「・・・芽衣。今あなたの脳内、とても覗いて見たくなりました」


 「ぅみょほぅっ!」

 ビヨン、と飛び上がってしまいました!

 どこどこ高鳴る心臓を押さえつつ、そ~っと後を振り返れば、後光と共に見下ろしてくる、ノルディ様の長い睫。


 顔が近い。


 「え、あぅ、ご・・・ごしゅじんしゃま・・・。その、覗いたところで、意識がぶっ飛ぶだけと、思われマス・・・」

 頭の片隅で警報が鳴っている。今現在の思考を読まれたら、諸々なんか、ヤバイどころじゃない。今書いてるブツまで検閲されてしまいそうだ。その場合真っ赤な判子が押されちゃうだろう、不許可って!


 雌羊さんズには好評の眼福物の人型ご主人様。白銀のノルディ様は今日も目が潰れる位麗しい。


 「そう? では、・・・あなたの思考のすべてを私で占められればいいのに」


 な、な ん と !

 爽やかな中にも下心を垣間見せる高等話術! 忘れないうちにメモっとかないと・・・次のお話の台詞のひとつに。


 さり気なく腰に回された腕、吐息を感じるほど、近くに寄せられた顔。


 空恐ろしいほどの色気に溢れていた。


 常人なら道踏み外す事請け合い。


 ふ。

 だけどこの芽衣。

 単純な審美眼には踊らされないわ!


 如何に女神のような恐れ多い美に溢れていても!


 笑顔が世界遺産級の逸物でも! 


 実は脱いだらすごいんです、な理想的な男性像でも!


 断言できる!


 もふもふの羊姿には敵わない! 


 あの魅惑の煌く羊毛に、包まれる至福。

 

 鼻血ものの、ふっかふかの魅惑の毛皮! あら、でも鼻血なんか出しませんよ? 毛皮が汚れてしまいますもの。


 抱きついても優しく包んでくれる魅惑の羊毛。


 鍛え上げられた あの筋肉も、このもこもこがあるからこそ映えるのです!


 牡羊を率いて先頭に立った ご主人様の勇壮なお姿! 伏して拝みたくなるわ!


 思い起こせば、脳裏に浮かぶ。神々しくも勇壮な


 ・・・毛皮の、群れ・・・。


 低い地鳴りが鳴り響く。


 「・・・うわ・・・」


 目の前には、丘から降りてきた、放牧中おさんぽちゅうの羊さんの群れが。ふわふわもこもこ、ふかふかの。


 ・・・ああ・・・。


 「・・・飛び込みたい」

 「芽衣?」

 「すいません、ちょっと逝ってきます!」

 「芽衣っ」

 「とめないでええええええ!」

 今日こそは、絶対飛び込む! あの羊毛100%の海で泳ぎたい!

 きらんと輝いた眼差しは、すでにターゲットロックオン。


 「芽衣、逝きますっ!!!」


 飛び込んだら両脇抱えて、ぎゅーっと抱いてみたい! 子羊ちゃんたちみたいにお餅のような弾力があるのか(ぷにっぷに)、ご主人様のように鋼のような拒絶があるのか(ごつごつ)。はたまた堅いと見せかけマシュマロ肌か(ぷよぷよ)!? いやいや、ふわもこ感が幸せをあおるのかもしれない。


 まってて、羊毛!

 今、泳いであげるからね!

 このまま勢い付けて、走り込んで・・・じゃんぷっ!

 続く感触は、ふわふわもこもこの、毛皮の海。・・・のはず。


 ・・・しかし、その願いはいまだに叶った事はない。


 「いいいいやあああああ、まってええええええっっ!!!」


 着地した先はなぜか必ず、ノルディさまの腕の中。


 次いで、神々しいばかりの美貌を誇る、羊族の上位種・ノルディ様が、冷たい眼差しで牡羊サン達を、頭ヒトツで追い払ってしまうのだ・・・。


 泳ぐ気満々なのに・・・。


 「ああっ! いかないで! うあああん、もふもふ~もふもふの海がぁ~」


 往生際悪くわきわき動く両手も、がっしり抱き込まれたまま、囁かれる。


 「飛び込むのなら私の胸になさい」


 ご主人様、最近色気、半端ないです。



 *******



 忍耐 と言う言葉の意味を激しく理解したノルディだった。まさに耐え忍ぶ。


 白銀の痩身優美な羊族の若長は、眉間に苦悶を浮かべた。


 しかし、苦悶する姿も色っぽいとはこれ如何に。



 可愛い娘を腕にしたまま、眉間にしわ寄せ、白銀のノルディは思案する。  


 

 ・・・・・・やはり、落人に求愛行動が理解されることはないのか・・・・・・。


 ではこれ以上の正攻法は?


 このままだと煮詰まった挙句、獣●に走ってしまいそうな自分がいる。だが無理強いはしたくない。


 自制して、何とか芽衣を丸めk、(げふげふ)たらしk、(ごほごほ)もとい! わたしのものだとシルシをつけたい!


 芽衣から香る香りをすべて、私だけの香りで埋めたい。・・・むしろ自分の楔を埋めたい。


 そうしなきゃ、いつまでたっても、わたしたちの小さき者が、わたしたちの間にやってこないではないかーッ!!!


 ・・・はやく 褥に 連れ込んで 可愛いあの子に いろんなことを教えたい。


 いいことも わるいことも いけないことも。


 ちょっと涙目で、白銀のノルディは、お山に向かって拝んでいた。


 風が冷たくなってきていた。もうじき厳しい冬がやってくる。白い雪と風の季節。



 でも恋人同士が抱き合うには最高の季節だ。



 春にはきっと、と、祈らずにはいられない、ノルディだった。

 



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