子爵令嬢のパンチライン~婚約破棄? ならばお前を、今夜、八つ裂き~
「リリアーナ・ベルンシュタイン! キミとの婚約は、今この時をもって破棄させてもらう!」
その言葉に弦楽団が奏でる優美な調べがピタリと止まった。
声の主は、私の婚約者であるゲルハルト・フォン・アイゼン。
現宰相の息子であり、この国の次代を担う(と本人はそう思い込んでいる)貴公子だ。
(やれやれ、このような場で言い出すなんて)
この男が婚約破棄をいずれ言い出すことは明白だった。
なにせ堂々と愛人を作っているのだから。
しかし、なにも彼の父である宰相ヴァレリウス公爵の誕生パーティーの場で言わなくとも……。
「キミとの日々は実に退屈だった。それでも僕は我慢したんだ。婚約という約束を守らねば公爵家の嫡男としてメンツが立たないと思ってね。でもね、考え直したんだ。次期宰相となる僕が退屈で空虚な結婚をするのは本当に正しいことなのか? 下の者に範を示すことができているのかと? 失敗は直ちに改め、幸せな結婚をしてみせることこそが、模範となるのでは、とね」
得意げに朗々と謳いあげるように話すゲルハルト。その言葉は私にではなく、聴衆に向けられている。
知り合った頃からそうだった。ゲルハルトは自らの弁舌に自信を持つ男。
多少の無理なら口の巧さで突破できる。そう自負してきた人間だ。
ただし、その自負には実力は伴っておらず、みな、公爵家の嫡男だということで、反論を受けなかっただけのこと。
「リリアーナ、こんなこと言わせるキミが悪いんだ」
(ったく……、本当に、腹が立つ……! こいつは、いつも、いつも、いつも……)
(あー、もういいわ)
――プツン。
突如として私の中で〝なにか〟が壊れた。
それは私がずっと大事にしてきた〝なにか〟。
本当の自分を隠すために私を包んでいた〝なにか〟だ。
鎧でもあり、拘束でもあった〝それ〟をたった今、脱ぎ捨てる。
私は口を隠していた扇をたたみ、その先端でゲルハルトを指す。
「空虚? 退屈? どの口が言うの?
お前が一番 ダントツ 無能
わかってないのか You know?」
感情がほとばしり、吐き出した言葉。
その響きに自分自身で驚く。
私の言葉は自然に韻を踏み、無意識のうちにリズムを生み出していた。
「リリアーナ、お前なにを……」
ゲルハルトが驚きで口をぽかんと開けている。
無理はない。
今日の今日まで私は公爵家の婚約者として、貞淑で、おとなしい令嬢として振舞ってきたのだから。
私の口から、こんなにも鋭く攻撃的な言葉が飛び出すなんて、彼にとっては天変地異に等しいだろう。
でもこの言葉こそがずっと眠っていた本当の私。
「ショックで淑女としてのふるまいを忘れたのか! やはり僕の判断は正しかったようだ。この程度のことで自分を失う人間に次期公爵の妻など務まるわけない」
「自分を失う?
勘違いしないで 取り戻したのよ〝自我〟
猫かぶりはおしまい 目覚めた〝Tiger〟」
気持ちがどんどん盛り上がってくる。
これまでの想いが結晶化し、言葉となって、弾丸の速度でゲルハルトに撃ち込まれる。
「この婚約破棄が 終わりの始まり
お前が引いたんだ 破滅の〝Trigger〟」
もとはと言えば、私は貞淑なレディなどではなかった。
子供のころは快活でとてもおしゃべりな女の子だった。
頭の回転が速く口も回るもので、よく友達を言い負かして親に叱られていたものだ。
それを令嬢としてふさわしい人間になるようにと教育によって矯正されてきたのだ。
常に美しく、常におしとやかで、つつましく。
男の三歩後ろを歩くように、と――。
男性の前では自分の話をベラベラと話すのではなく、微笑みをたたえて相手の話を聞いてあげる。それが令嬢の正しい振舞いだと。
そして、アイゼン公爵家との婚約がまとまってからというもの、それはさらに徹底された。
常に婚約者であるゲルハルトを立て、自分は彼を彩る花であろうと努めた。
私の家は子爵家。アイゼン公爵家とは家格が大きく違う。
この結婚は父にとっては大きなチャンスとなるはずだと考えたのだ。
父は愛国心のある勤勉な男性で、常に国を憂い、民の幸せを願っていた。
実際にその実力は確かで父の治めた小さな田舎町は大いに発展した。
父の夢はその手腕を王都で振るい、退廃していく国を救うこと。
いつか王都に上り中央の政庁で活躍したい。
子供だった私によくそう聞かせてくれた。
しかし、この国の貴族社会は爵位とコネがすべて。
田舎のコネを持たない子爵が国の中央で政治に参与するなど、不可能なこと。
この婚約は父の夢への大きな一歩だ。
だから、我慢した。ゲルハルトを支えようと心から努力した。
でも――。
この男は図に乗ったのだ。
私にはなにを言ってもいいと勘違いして、私をストレスのはけ口として使うようになった。
自分がイライラしているときは、細かなことで私を説教した。
ある日はスカートの裾が長すぎると、そして次の日はスカートの裾が短すぎると。
本当の原因は彼のイライラなのだから、直しようがない。
しかも、みっともないことにイライラの理由は貴族学校での成績の悪さにあった。
宰相の息子ということでゲルハルトは自分の知能にも自信を持っていたのだが、残念ながらその自負心ほどには英邁さはなく、しばしば学友に成績を抜かれていた。
見つからないように隠していたが、試験の成績は私よりもずっと下だった。
知性派で知られる宰相の息子なのに、成績が悪い。
それが彼のプライドをいたく傷つけた。
その結果、彼の攻撃性は増し、その矛先は私に向かった。
学校で本当はそうありたかったという理想を追うように、私に向かって「馬鹿なお前に教えてやる」という態度でこまごまと指導するようになったのだ。
そんなゲルハルトが血走った眼で私を睨みつけている。
「口を慎め、父上の誕生パーティーだぞ。このバカ娘、少し優しくしてやったら、つけ上がってしまったようだな」
バカ娘? この国一番のバカ息子にだけは言われたくない。
「見下してんじゃねえ
私のレベルは お前なんかより 遥かにHigher
今ここで燃やす 怒りのFire!!」
私の絶叫に近い口撃が響き渡ると、ホールは水を打ったように静まり返った。
ゲルハルトは顔を真っ赤にしてパクパクと口を開閉させている。
けれど、まだ足りない。
一度燃え広がった炎は、もう誰にも消せはしない。
私は苛立ちを込めて、楽団の方を睨んだ。
宰相の生誕祭を彩る優雅な曲を奏でるはずの弦楽団は無音の楽器を抱えたまま、呆然と事の成り行きを見守っている。
「……リズムをちょうだい」
私はドレスの裾を蹴り上げるようにして、楽団の元へ大股で歩み寄った。
私は奥に控えていた大きな弦楽器――チェロを指さした。
「ボディを叩いて。音を出してくれない? このリズム、ドッ、ドッ、ドッ、って!」
うん、いい感じ。
私は続いてコントラバスの奏者を指さした。
「一番低い音がほしい」
コントラバス奏者がおそるおそる弓を引く。
「もっと短く、野蛮に、腹に響くように、低く這うようなベースラインを頂戴」
ドン、ッ、ドン、ッ……!
コントラバスの低音と、チェロの打撃音が重なる。
即席のリズム隊の完成だ。
その音に身体が自然に揺れる。
私はゆっくりと身体を揺らしながら、ゲルハルトへと歩み寄る。
「おいゲルハルト 聞いてるか 宰相の息子
その肩書きなきゃ ただの 雑草のミジンコ」
ビートに乗せて、言葉が機関銃のように飛び出す。
「成績優秀? 嘘つくな〝捏造〟 試験のたびに裏金で〝結合〟
論文は替え玉で〝転送〟。
そのくせ、学校では女の尻追って沸き上がる〝劣情〟
〝絶望〟的なアタマの中身だな! それマジで言ってんの? It's a joke?」
勢いでゲルハルトが試験で不正をしていることをバラしてしまった。
コントラバスとチェロのビートが私を過激にする。
「き、貴様ぁ……! でたらめを言うな!」
ゲルハルトが慌てて遮ろうとするが、声が裏返っている。リズムに乗れていない彼の言葉は、私のビートの前では無力だ。
ゲルハルトの後方、事の成り行きを固唾をのんで見守るドレスアップした参加者たち。その中にひとりの令嬢を発見する。
私はターゲットを切り替える。
「今日もご来場だね? 浮気相手のハニー
派手に着飾って、堂々としてんな、
ちょっとは隠れろよ マジ、サイテーのダニ!
男の浮気は 女の〝恥〟? ふざけたこと言う その口〝閉じ〟な!」
それは数ヶ月前のことだ。
私は、ゲルハルトが浮気相手のミミーを連れて街を歩いているのを目撃してしまった。
問い詰める私に、彼は悪びれる様子もなく、むしろ憐れむような目で私を見てこう言ったのだ。
「なんだ、そんなことか。騒ぎ立てるなんて品がないぞ、リリアーナ」
「そんなこと、ですって……?」
「男には休息が必要なんだ。君のような堅苦しい女と一緒にいては、息が詰まる」
彼は私の肩をポンと叩き、さも自分が被害者であるかのように続けた。
『僕に愛人ができたのは、君の魅力が足りないせいだ。君がもっと可愛げのある女なら、僕もよそ見なんてしなかった。わかるかい? これは君の至らなさが招いた結果なんだよ。次期公爵夫人として、僕の火遊びくらい笑って許容する度量を見せたまえ』
開き直り。責任転嫁。
そして最後にはいつもの「お前が悪い」。
私はあの時も、唇を噛んで耐えた。
すべては家のために。
でも、もうやめた!
すべてを吐き出してやる。
「彼女にとって お前は〝金蔓〟 操られてる 哀れな〝ツール〟 愛なんてない ほしいのは〝家柄〟 気づかないお前 マジで〝フール〟!!」
浮気相手を堂々と公言されては私も「そうですか」で終わるわけにはいかない。
人を使って調べさせた。
ミミー・ソラーリ、年齢は私と同じ17歳。たいそうグラマラスな身体の持ち主。
カフェで給仕の仕事をしたところ、ゲルハルトに声をかけられ、関係を持ったらしい。
もちろん平民では公爵家に嫁ぐことはできないため、関係としては愛人。
ミミーはそれでも月々お小遣いがいただけるならと納得したらしい。
とはいえ、ミミーもしたたかな女だった。
なんと、ゲルハルトの愛人になっていながら、実はすでに別の男と結婚していたのだ。
それを隠して、ゲルハルトからもらったお小遣いで、夫と小旅行に出かけるなどして楽しんでいるらしい。
「ひどいっ! わ、私はゲルハルト様を愛して……!」
ミミーが涙目で訴えるが、私は容赦しない。
「愛? その言葉吐くな〝金輪際〟
こっちはお見通しなんだよ〝本命の存在〟
ミミーお前は すでに別の男のワイフ
ゲルハルト、お前はただの財布!
あとはふたりでモメな、この〝大問題〟」
あられもない暴露に、会場がざわめく。
ミミーの顔色が一気に蒼白になり、ゲルハルトが「な、なんだと?」と彼女を振り返る。
まあ、これで二人の関係もおしまいだ。
いま考えたら、私もどうかしていた。こんな関係を見逃して、我慢しようだなんて。
もう終わりでいい。
終わった方がいいのだ。
私の衝撃的な告白に、会場がざわついている。
夫がある女性との愛人契約。
さすがに公爵家の令息とはいえやりすぎだ。
「おぼっちゃま、少し〝おいた〟が過ぎたようですな」
「これからは少し慎んでもらわないと」
ゲルハルトをたしなめる声が聞こえる。
ヴァレリウス公爵の誕生祭とあって、参加者の年齢は高い。
おそらくゲルハルトは参加している大人たちから、多少の叱責を受けることだろう。
だが――。
それで許される。
浮気、愛人、試験結果の捏造、その程度は公爵家の人間であれば、許される。
――腐ってるんだ。この国は。
子供のころ聞いた父の言葉が脳裏に浮かぶ。
『かつてこの国は大国だった。その富は王と貴族たちに大いなる力を与えた。彼らはその力を守り、子供たちへと継がせた。何代も何代も……。この支配階級の固定化は権力の腐敗を生んだんだ。そして、いよいよその腐敗が国の幹を腐らせようとしている』
私は視線を上げ、パーティーの参加者を睨みつける。
お腹の出た壮年の男性たち。みな爵位を持った貴族たちだ。そして贅を尽くしたドレスに身を包む女性。あのドレス一着で平民の家族が何年も暮らせることだろう。
「ヘラヘラしてんじゃねーぞ、そこの有象無象 着飾るだけの 無能な偶像!」
特権階級である自分たちはなにをしても許される。
この支配階級の緩みが腐敗を生んだ。
必要のない役職を作り、国家予算を盗み、商人からの賄賂で国家政策が変わる。
そしてなにより問題だったのは変わることを恐れたこと。
時代が変われば、新しい問題が起きる、それに対応するために変わらなければいけない。
しかし、この国は支配構造が変わるような変革を拒否した。
貴族が貴族でいられるためだけの政治。
それがゆっくりと国を食いつぶしたのだ。
「安全地帯から見る 高みの見物?
とんでもない お前ら全員が見苦しい遺物! 」
チェロとコントラバスのビートに、自然にヴァイオリン奏者が加わっている。
それはいつもの緩やかな調べではない。
引っ掻く(スクラッチ)ような、不協和音が空気を切り裂く。
重厚なビートの上に、攻撃的で斬新なメロディが乗る。
「夜な夜な開く この豪華なサロン
そのために流れた民の血は何ガロン?
ふざけるな それが〝特権階級〟?
役立たずは こっちからNo thank you」
私の言葉に何人かの男が明らかに憤怒の表情を見せている。
しかし、誰も掴みかかってはこない。
近づいたらすぐに撃つ。言葉のマスケット銃の弾丸装填は超速だ。
「〝貴族〟と名乗る ただの〝寄生虫〟
輝いてんのは シャンデリアの〝明かり〟
お前自身の 輝きは〝皆無〟
今ここで刻んでやる 終わりの〝韻〟!」
ビートが最高潮に達する。
コントラバスの弦が千切れんばかりに弾かれ、チェロが激しく叩かれ、バイオリンがシャウトする。
即興のトラックが私の心を躍らせる。
私の喉は熱く、脳髄が痺れるような高揚感に包まれていた。
最後だ。一番言いたかったことを、このここで叫ぶ。
「血税吸って肥えた〝豚〟! その贅肉の下に隠した〝歌〟
あるなら今すぐ 吐き出してみろ! 国を守る 気概を見せろ!
命を懸けて〝責務〟果たせ! できないならば……その権力、渡せ」
私が手を振り下ろすと同時に、全ての楽器がピタリと音を止めた。
吐き出し尽くした。
今日だけのことじゃない。長年溜め込んでいた怒りをすべて。
誰も動かない。
ゲルハルトは腰を抜かして床にへたり込み、ミミーはただ震えている。
高位貴族たちは、怒ることも忘れ、ただただ圧倒されていた。
静寂の中、ハァ、ハァ、と私の荒い息遣いだけが響く。
(……やっちゃった)
ゆっくりと熱が引くと、比例して事の重大さが押し寄せてくる。
宰相閣下のパーティーをぶち壊し、息子の恥を暴き、あまつさえ国の中枢にいる貴族全員を「豚」呼ばわりしたのだ。 これは、ただの婚約破棄では済まない。
侮辱の罪で投獄? それとも家ごと取り潰し?
私が覚悟を決めて目を閉じた、その時だった。
パチ、パチ、パチ、パチ。
乾いた拍手の音が、入り口の方から響いた。ゆっくりとした重みのある拍手だ。
人々がざわめきながら道を開ける。
開いた人垣の先、そこに立っていたのは、今日の宴の主役、この国の宰相――ヴァレリウス・フォン・アイゼン公爵その人だった。
「ち、父上……!」
ゲルハルトが縋るような声を上げて這い寄る。
「父上! 聞いていましたか? リリアーナが、完全におかしくなってしまいました、捕まえて病院にでもぶち込みましょう」
ヴァレリウス公爵は、無表情のまま息子の前まで歩み寄る。その直後――。
バチンッ!
乾いた音が響き、ゲルハルトが頬を押さえて吹き飛ぶ。
「ち、父上……?」
「リリアーナ嬢の言った通りだ。この国は腐っている。本来、国のかじ取りをするために与えられた貴族の権力を私利私欲のために使ってしまった」
公爵の鋭い眼光は、青ざめる貴族たちをも射抜いた。
「そして、彼女の演説に反論する者もおらず、ただ立ち尽くしていたのがなによりの証拠だ。今日だけじゃない。あなた方は力を預かっておきながら、いつも傍観者だ。そして、それは私も……。いや、私こそが最も罪深い。宰相でありながら、なにもできなかったのだから」
公爵は私の方に向き直った。
「リリアーナ嬢」
「……はい」
「あなたの言葉、胸にしみたよ」
「ど、どうも」
「宰相になって十年。最初は私もどうにかしようと奮闘したのだ。しかし、この国の網の目のような権力構造に絡み取られて、改革の意思はくじかれてしまった。そしていつの間にか他の貴族と同じように日和見になってしまった」
公爵は小さく一度頭を下げ、改めて私の顔を見つめる。
「あなたの言葉と行動に勇気づけられた。私はもう一度、この国を正すチャレンジを行おうと思う」
「恐縮……でございます」
「まずは、自らの身を正さないとなるまいな」
公爵はそう言うと、殴られたショックでいまだ頬を抑えているゲルハルトを睨みつける。
「ゲルハルト、お前を廃嫡する」
「え⁉」
「なにを驚く必要がある。お前は十分に我が家の名を汚した。そして次代を担う素養がないことも明らかだ。失敗は直ちに改めないとな」
「そ、そんな……」
ショックで呆然と立ち尽くすゲルハルト。
公爵はその姿に深々とため息を吐き、従者に「連れていけ」と命じる。
ゲルハルトは両肩を支えられ、サロンを後にする。
「それで、リリアーナ嬢。君のその弁舌と度胸、そして驚くほどの頭の回転、婚約破棄によって関係性が切れるのは惜しい」
「は?」
「どうだ、私の補佐官にならんか? これから再び国を改革するにあたって、あなたのような舌と頭脳を持つ人材を集めたい。身分、年齢、性別を問わずだ」
思わぬ提案に、私は目を丸くした。
投獄されることも覚悟していたのに、……まさか補佐官にスカウトされるなんて。
「素晴らしいお考えかと。私でよろしければぜひ」
公爵のアイディアに胸が躍る。
「まずはあなたのような論客を集めて、忌憚のない意見を言い合う会議の場を持とう。遠慮は一切なしの場だ」
「わかりました」
すべて吐き出し尽くして、鎮火したと思った胸の中に再び炎が燃え上がる。
でも、これは怒りの炎じゃない。情熱の炎だ。
「リリアーナ嬢、まずは最初の仕事として、その会議の名前を考えてもらえるかな?」
「承知いたしました。……さっそく、ひとつ浮かんだのですがよろしいですか?」
「さすが、驚くほどの早さだな。それでその名とは……?」
「それは……」
――環
志を持つ者たちが集い連なる環。
退屈な婚約生活は終わり。これからは国を揺らすビートが日常になる。
読んでいただきありがとうございました。
評価、感想などいただけると転げまわって喜びます。
どうかよろしくお願いします!




