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どうせ悪役令嬢なら、二度目の人生は自分ファーストで! ~冤罪で断罪された完璧淑女、時間を遡って好き勝手に生きてたら、なぜか周りがひれ伏し始めました~  作者: ヲワ・おわり
第7章:最初の「ざまぁ」

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盤上の駒は、揃った

 わたくしが「ゲームの招待状」を送ってから、わずか半日のことだった。

 一羽の、夜の闇よりもなお黒い精悍な隼が音もなく、わたくしの部屋のテラスの欄干に舞い降りた。

 その鋭い鉤爪のある足には、小さな羊皮紙の筒が赤いリボンで結びつけられている。


 わたくしが、その筒をそっと解くと中には見慣れた、あの男の流麗で力強い筆跡でこう書かれていた。


「面白いゲームの誘い感謝する。こちらの駒は、いつでも君の意のままに動かせる。君の美しきチェス盤が整うのを楽しみに待っている」


『半日で返信…?』

 わたくしは、そのあり得ないほどの速さに改めて戦慄する。

『やはりあの人は、この王都のわたくしのすぐ近くに恐るべきほどの強力な情報網を、蜘蛛の巣のように張り巡らせているのね』

 わたくしは、自分が契約したパートナーのその底知れない力に、武者震いにも似た興奮と絶対的な信頼を覚えていた。


 その返信を合図にしたかのように。

 わたくしの知らない王都の水面下で、ルシウス様の「影」とも言うべき、駒たちが一斉に動き出した。


 ――あるチームは、王都の裏社会へ。

 彼らは、リゼット嬢の侍女アンナの家族が、最近その収入には全く見合わない、分不相応な買い物を繰り返していることをいとも容易く突き止めた。

 そしてその金の出所を辿ると、リゼット家の執事を経由し、最終的に王宮の会計局――つまりアルブレヒト王子の私的な予算から支出されているという、動かぬ金の流れを完璧に掴んだ。

 その証拠として、金の流れを詳細に記した帳簿の写しが作成された。


 ――別のチームは、宮廷医師の元へ。

 彼らは、くだんの医師に患者として接触。そして、診察室でたった一言こう囁いた。

「先生。シュヴァルツェンベルク大公国の、最新の医療技術をご存知ですかな? どんな未知の毒物であろうと、その成分を完璧に特定できるそうですよ。もし診断書に、万が一にも『嘘』が書かれていた場合大問題ですもんね」

 半ば脅迫に近い、その甘い囁きに、医師は顔面蒼白となり、全てを告白した。

 「王子殿下に、圧力と多額の金で命令されたのだ」と。


 ――そして、最も重要な任務を帯びたチームは、全ての鍵を握る駒そのものへと接触していた。

 彼らは、病気(という設定)で自室に軟禁されている、侍女アンナ本人に、秘密裏に接触することに成功した。

 そして彼女に、究極の選択を迫った。

「このまま哀れなリゼット嬢の使い捨ての駒として、全ての罪を被せられて捨てられるか」

「それとも全てを正直に話し、君と君の家族の未来永劫の安全を、クライフェルト公爵家の名の下に保証してもらうか」

 追い詰められた侍女は、泣きながら全てを告白した。

 そしてリゼットから受けた、卑劣な命令の全てを詳細に記した、涙の跡が生々しい宣誓供述書に、震える手で署名をした。


 その日の深夜から、翌日の朝にかけて。

 わたくしの元には、あの黒い隼が次々と勝利の報せを運んできた。

 金の流れを示す、帳簿の写し。

 医師の、王子からの命令を認める証言。

 そして侍女アンナの、涙の供述書。


 わたくしの逆転のための、全ての勝利のカードは。

 わたくしが想像していた以上の圧倒的な速さと完璧さで、わたくしの手元に揃っていった。


 一連の報告書を、わたくしの隣で青ざめながら見ていた兄フェリクスは、信じられないものを見る目でわたくしに尋ねた。

「…アリアンナ。正直に言え。お前、一体どんな恐ろしい魔物と契約を結んでしまったんだ…」

 わたくしは、集まった証拠の美しい山を前に誇らしげに微笑んだ。

「魔物などでは、ございませんわ、兄様」

「わたくしの世界で一番頼りになる、最高のパートナーですわ」


 全ての準備が完璧に整った。

 あとは、いつどこでこの切り札を突きつけるか。

 わたくしがそう考えていた、まさにその時だった。


 王宮からの正式な使者が、一通の豪奢な招待状を届けに来た。

 それは、アルブレヒト王子が自ら主催する「リゼット嬢の快気を祝う夜会」への招待状だった。

 侍女だけでは飽き足らず、リゼット嬢自らも心労で臥せったふりをしていたらしい。


 そのあまりに白々しく、そしてあまりに分かりやすい名目に、わたくしは思わず声に出して笑みをこぼしてしまった。


『(快気を祝う夜会ですって? わたくしを、衆人環視の中で公開処刑するための断罪劇の舞台を、ご親切にも向こうから用意してくださったというわけね)』


 侍女のエマが、「どうされますか、お嬢様…。これは、あまりにも、危険な罠ですわ…」と、心配そうにわたくしの顔を覗き込む。

 そんな彼女に、安心させるように、にっこりと微笑むと、女王のような凛とした声で答えた。


「ええ、もちろん喜んで出席させていただきますわ」


「敵がわざわざ用意してくださった最高の舞台ですもの。最高のフィナーレで、このわたくしがお応えして差し上げないとあまりに失礼にあたりますでしょう?」

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