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異世界オカマバー~マスターは世界の全てを知っている~  作者: カクテル
全知のオカマと読心の悪魔
12/18

あんまりな後日談

 

 そこは、静かな空間だった、、薄暗い間接照明と落ち着く爽やかな匂いがほんのり香る空間だ、手に持つグラスを回せば氷が当たり、カラカラと心地よい音を立てる、、


 そう、僕は今バーでお酒を飲んでいる、とてもお洒落で落ち着く空間で一杯やってるのだ、、


 そして、後ろにはジト目のボルグがいる


 ハゲ頭と身体中のタトゥーも小さくなれば可愛いもので愛嬌すらある、縄でぐるぐる巻きにされ、一切抵抗もできない。


 そして横にはひとつ席を開けて気まずそうなマリー、彼女の目の前にはグラスがあるが一切口をつけていない、僕の()()なんだから遠慮せずに飲めば良いのに、、



「フッ、何とも優雅な一時だね、、」


「ねぇ、、リスタル?何でそんなに平気な顔してられるの?」


「え?だってここ落ち着くじゃん、後のゴタゴタを全て忘れて今を楽しむのさ、、」


「良いのかしら、、全部放ったらかしで、、、」


「おい、オメェ、、それで良いのか?人から奪った金で飲む酒は旨ぇかよ?」


「勿論、高いお酒だからとても美味しいよ?」



 僕はボルグの財布を奪ってデミコお姉さんのバーで飲んでいた、デミコお姉さんは何にも言わず、お酒のボトルを磨いている、ミルディさんはお掃除と言って外のチンピラを片付けている、、まぁ、広場の1ヵ所に集めているだけだったけど、、



 僕らはいろいろ清算しなくてはならないことが多すぎるけども、ひとまずは休憩だ、2時間近く殴り合ってたから流石に疲れた、あと喉の乾きと腹が空いてしょうがない、、



 一応ここのバーは食事も出してるらしいけどデミコお姉さんは料理担当ではないらしい、料理担当のミルディさんがこの後作ってくれるらしいのでオツマミのナッツで誤魔化している、、



 残飯で良いか、、と呟いて裏路地を見ていたのは気にしない、ゴミ袋を持っていたのも生ゴミを集めるためではないと思いたい、、心は悪巧みの色だったけど。



 ナッツを一口、ポリポリと噛んであらかた飲み、少し残っている欠片をお酒と一緒に流し込む、うん、旨い、このお酒美味しい、、果実酒らしく甘酸っぱいがキレのある喉ごしで旨い。



 ミルディさんに踏み潰されたあの後ボロボロのボルグを縛り上げ、このバーに連行した、そのついでに財布も取っておいた、お金がなくてはお客様じゃないからね!



 かなり重い財布で高いお酒を注文、マリーにも奢って優雅な一時を過ごしていた、、



「ふぅ、、リスタルちゃんって人間が良く分からないわぁ、、お姉さん世界の全てを知ってるつもりだけど世界でも居ないわよ貴方みたいな子、、」


「世界で1人のユニークな男ですって?嫌だなぁ、褒めてもお金しか出ませんよ、持ってけ泥棒、お酒はもう良いので借金に当てといてください。」


「借金分には全然届かないけど、、まぁ、良いわ、これから払って貰うことだし、、」



 なんか怖いこと言い始めた、金貨1枚入ってた財布なのに足りないのか??このお酒とバーラプラスの出張営業費とあの回復薬とポーションはそんなに高いのか??



 まさかっ、、ぼったくりバー何て言うんじゃないよね??止めてよ!お金がないの知ってるでしょ?ま、まさかっ、身体で払えとか言うんじゃ、、!



「何を考えてるのか分かりませんが、下らないことだと言うことは分かりますよ汚客様?それと店長、お掃除終わりました。それとそこの元筋肉ゴミに会いたいと言うしつこいゴミが居たので持ってきました。」



 そこには袋を手にもつミルディさんがバーの扉を開いてこちらを、、というか僕を軽蔑の目で眺めていた。



 少し荷物が大きいと思うのは何故だろう人1人ぐらい入れそうな袋を軽々と背負っていた。



「おい、ネーチャン、元筋肉ゴミって俺の事かよ?酷くねぇか、その呼び方、、」


「そうですか、そうですか、では、唯一心を許せると思った恋人に浮気相手が居たと知って暴力を振るう人間のクズで良いと、まだ利用価値があるかもしれないゴミよりも下で良いと、かしこまりました、ではこれから使い終わりの爪楊枝とお呼びしますね、、おい、使い終わりの爪楊枝、貴方に客ですよ。」


「あ、筋肉ゴミで良いです、、てか、使い終わっても爪楊枝燃やせば燃料になんだろ、、、」


「そんなちっぽけな火で何を燃やすと?火をつける労力に見合わないゴミの利用価値あるわけ無いでしょ?それに自らの命を使うことでしか利用価値が見いだせないとか、、人間として終わってますね、そのまま先端が折れて使われないまま捨てられなさい。」



「畜生!!じゃぁ何て言えば良いんだよ!!」


「はい私は利用価値あるゴミよりも下のゴミグズです高貴で尊い女性に手を掛け申し訳ありません、自害しますと言えば良いんです、なるべく苦しむ方法で殺すので安心してください、生き地獄よりはましに処分しますので。」


「神よ!俺様に救いはねぇのかよ!!!この女イカれてやがるッ!!」



 なんかホルグ相手でも何時も通りで安心した、僕にだけあそこまで冷たいのかなぁ、、と思ってたけど違うらしい、男なら誰もかもゴミとして本気で見てるみたいで良かった良かった、、



 ちッともよくねぇよ



「ふぃー、間抜けな馬鹿を見るとお酒が旨いっ!あ、ミルディさん!お金は払ってるんでご飯くださいよ!オススメのやつ!お腹膨れるやつでお願い!」


「かしこまりました、汚客様、では食材が無料(タダ)手に入れた(拾ってきた)ものがありますのでそれで料理しますね。」



 うん、言い方に含みがあるけど残飯が出てこないことを願いたい、僕はボルグに拷問されていた時に食べたメズール作の残飯料理で舌が肥えたからね、美味しいものを頼むよ、、



 と、ミルディさんが裏に回って調理を始める為に背負っていた袋を放り投げ、何か大きいものが袋から這い出てきた



 それは、、人だった、見覚えのある男で今まさに思い出していた人物、僕に残飯料理を振る舞ってくれたメズール・バルドがいた。



 なんでここに???



「いってぇなぁ!!もう少し優しくしろ!!慰謝料請求するぞ!ゴラァ!!」


「いえ、無理です、それと近づかないでください、貴方だけは何故か(ゴミ)と言うよりも他の理由で生理的嫌悪感が凄いので、気持ち悪い羽虫を見ている気分です。近づかないでくださいね?」


「ひ、ヒデェ!俺オメーになにもしてねぇのに!!マジで慰謝料よこせ!銅貨2枚な!!」


「では、ここまでの運賃と言うことで、チャラですね、お取り引きありがとう御座いました、ではもう関わらないでください。」



 ここまで拒否と言うか拒絶しているミルディさんも珍しい、、いつもの罵倒が少し弱いような、、?



 あ、良く見たら嫌悪感の炎が燃えている、本気で拒否ってる、そう言えばメズールは【拒否反応向上】っていう意味分からん恩恵持ってたっけ、そのせいかな?



 僕は全く嫌な感じしないのは何故だろう?まっ、友達だからね!旨い残飯ご飯作ってくれたし!命の恩人とも言える!そんな相手に拒否反応なんてあるわけ無いってことだよね!!



「や、メズール元気だったかい?」


「あっ!リスタル!テメーの彼女に眠らされて起きたら《ハチノス》が潰れてて全く意味わかんねぇ!何があった!ボスはなんで、、チッコ!!ボスチッコ!!??えぇ??ボスの顔だけど、、ちっさ!!え!?ちっさ!!」



 そう、ちっさいちっさい言ってやるなよ、悔しいやら情けないやら恥ずかしいやらで更に体を小さくしてて、、面白い。



「端的に色々省いて言うと僕が《ハチノス》を潰した。」


「省きすぎねぇ、、殆どはミルディちゃんがお掃除したのに、、」


「ボルグをブッ倒したのは僕だよ?そこだけは信じて欲しい、、、」


「ま、マジかよ、、色々言いたいが、、そこに居るのが正真正銘ボスって言うなら、、本当に潰れたのか、、ハチノスが終わった、、、そうかぁ、、」


「ハッ、そうだ、終わりだよ、、にしても俺に用事だったか?今さら恨み言でも?オメェを暗い牢獄で仕事させてたことに不満でも言いに来たか?それとも復讐かよ?」



 色々諦めて達観した顔のボルグ、、少し落ち着いて自分の作り上げたものを崩壊させられ、意気消沈、灰色の感情、、諦めの感情が生まれている、そこまで落ち込まれると僕としてもすこーーーし罪悪感が沸いてきてしまう。



「何言ってるんですか!ボス!俺がアンタに復讐するわけ無いでしょう!俺がここに来たのはボスが心配だったからで、、、」


「は?」



 何を言ってるのか分かっていないボルグ、まさかの返答で諦めていた心も困惑で染まる。



 まぁ、僕は分かってたけど、メズールってボルグの事心の底から尊敬してるんだよなぁ、、他のやつらは恐怖の繋がりだけど、メズールだけは友達のような、大切な存在の繋がりなんだよな



「俺みたいな誰と関わっても嫌われるヤツに仕事もくれたし、住む場所や食料もくれた!アンタは命の恩人だ!恨みなんかねぇよ!」


「メズール、、、、」



 僕も、こんな友人がいたらもっと早めにマトモになれてたのかな?ボルグは間違えた、恩恵に自分の人生を左右されてはいけない、僕は誰よりもそれを知ってるつもりだ



「はいはい、そう言う男の友情いりませんので、、見てて気持ち悪い、、ではお客様、こちらご注文の品です。」



 熱い男の友情にあんまりな罵倒が投げ掛けられる、と同時に目の前には美味しそうな料理が、大盛りのパスタでベーコンや菜っ葉が多く入ったシンプルな物だ、スパイスの匂いが食欲をそそる。



「うわぁぁ!普通においしそぉ!!」


「普通って失礼ですね、汚客様、女の子の料理に味の感想しか言えないんですか?作ってくれた事への感謝は?もっと褒め方あるでしょうに、、、そんなんだからフラれるんですよ。どうぞ召し上がれ。」


「うん、途中がなければ只のツンデレメイドなんだよなぁ、、頂きます。」



 取りあえず1口、よくある物語だと見た目完璧でも料理が殺人的に不味いとかあるけど、、うん、見た目どおり普通だ、店の味と言うか、、この短時間で作ったのもあって熱々で美味しいけど、これと言って何もない、塩パスタだ、味は少し薄い。



「とは言え、お腹がこれ以上無いほど空いてるからものすごく美味しい、、僕、てっきり漁ってきた残飯でも出されるかと思ったから余計に嬉しいよ。」


「本当に失礼ですね?汚客様?仮にも飲食店で仮にもギリギリ客なんですからマトモなもの出しますよ?なめてるんですか?捻り潰して犬の餌にしますよ?」


「うーん、お客側だと罵倒の強さが弱いなぁ~、意外と使い分けてるんだ。」


「キモッ、いちいち分析しないで貰えます?そんな細かいところまで見てるとか本気で気持ち悪い。

 その無駄な才能是非とも人の役に立ててください、貴方(ゴミ)に出来るとは思ってませんが応援してると今だけ伝えておきます。」


「うん、今言うだけで応援しないんだね分かったよ。」



 そんな下らない話をして食事に集中する、パスタを食べ、食器がカチャカチャと鳴る音だけがバーに響く、



 カチャカチャ、モグモグ


 カチャカチャ、モグモグ


 ゴクゴク、カチャカチャ、モグモグ


 モグモグモグモグモグモグモグモグ



 ゴクン



 静かな空間に食事音だけが響く、誰も動かずに僕の方を見てくる。



「ふぅ、、、」



 山盛りパスタを食べ終えて、一息、満腹になった腹を擦りながら、カウンターに肘をつき顔の前で手を組む、、



「誰も喋らないね!?!?」



 この空気に耐えられず声を出したのは僕だった、



 僕が食べてる時にずっと僕を見るマリー、ずっと裏で何かをしているデミコお姉さん、掃除してるミルディさん、ジト目のボルグ、グルグル巻きのボルグの横に座ってるメズール、皆が食事をしている僕をチラチラ、ジーッと見てきて落ち着きやしない!!



「いや、食事中に話すなんてお行儀悪いでしょ?」


「マリー?僕と再開した時レストランにて大声でボルグと爆笑してたのお忘れで?」



 マリーはスッと顔を背け今まで持ちすらしなかったお酒をチビチビ飲み始めた、逃げるなんて卑怯だ!



「あ、本当に美味しい、飲んだこと無いわ。」


「でっしょぉ?ウチのバーは情報力だけじゃなく品揃えも凄いのよぉ?そこのらのバーじゃ飲めない珍しいお酒を多く揃えてるのよ、何せ世界中からあのドア一つで仕入れられるからねん♫」


「ホントにあのドアって凄い魔法のドアですね、」



 チビチビと飲みながら話を続けるとクゥゥゥと随分と可愛らしい音が鳴る。



「、、、、なんだよ、、笑えよ、、」



 ボルグだった、さっきから黙ってたのはお腹を鳴らさないように色々頑張って気張ってたかららしい、羞恥の感情で心が一杯になってる、よし、煽ろう。



「え~~?笑って欲しいのぉ?恥ずかしいんだぁ?照れ隠しにいっそ笑ってほしぃんだぁ?ふぇーー?おにゃかすいたのかにゃぁ?ご飯食べたい~?僕はお腹いっぱいでもう眠たいから寝よーかなぁ?どうしよっかなぁ?」


「お、オメェェェェ、、っ!」


「ぼ、ボス、、落ち着いて、自分から言ったから悪いんですよ、恥ずかしいならドシッとした態度取れば、、」


「コイツは俺様の心読めるんだぞ?キリッと格好いい顔してるけど恥ずかしいんだねぇぇ???って言いかねねぇぞ、、つまり詰んでる。」


「人を馬鹿にするのに向きすぎじゃねぇの!?その恩恵!?おい!リスタル!俺にも寄越せ!俺の恩恵と相性が良い!」


「あぁ!人を馬鹿にする時だけこの恩恵に感謝してるよ、メズール!何時か人をバカにする時は協力しようじゃないか!」


「オメェら仲良いのかよ!?いつの間に!?どこで接点あった!?」


「「拷問の後、牢屋で話してたら意気投合した」ました。」


「そ、そうか、、、」



 なんか、恥ずかしさとか空腹とかメズールの同情の目とかマリーの呆れたジト目とかで色々居心地が悪そうなボルグだった。



「よし、、腹も膨れたし、ボルグの情けない可愛いお腹の音を聴いて面白くて気分も良いし、、、さて、、、後始末のお時間かな?」



 色々問題が終わってないんだよな。めんどくさい



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「それでは!バーラプラス!第一回ハチノス壊滅事件総決算会議を始めまぁ~す!」



 何故か議事進行の議長みたいな事を始めたデミコお姉さん、、バーのテーブルを固めて一つの大きなテーブルにして皆で顔を合わせている。



 机を4つ集めて囲うように座る僕ら、僕の隣にマリー、更にその隣がミルディさん、



 僕の正面にメズール、その横にボルグ、



 デミコお姉さんは僕とメズールの間の横に、所謂誕生日席に座っている。



 この形で会議?は始まった、



「おい、まず良いかよ?」



 最初に口を開いたのはボルグだった、以外だね



「なんだよ、これ、ふざけてんのかよぉ?」


「至って大真面目だ」


「総決算って、、なんだよ、ふざけてる以外に何があるってんだ、どこで金が動いた?えぇ?被害者の会の間違いだろ。」


「では、先ずは僕から良いでしょうか、」


「聞けよ」


「先ず話すべき事を纏めましたのでお聞き願います。」


「無視かよ」



 うるさいヒョロガリが居るが無視だ無視。



「えー、一つ、ゴルグをどうするか、僕は獄中に送ることを推奨します、二つ、マリーと僕のこれからについて、三つ、デミコお姉さんは何がしたいのかな~と言うことと、四つはその他」


「あと、汚客様が私に行った残虐非道の行為の数々の断罪の処理を。」


「却下で」


「俺様の扱いの酷さについて反論の余地を求める」


「却下で」


「一応アタシが議長?なのよん?決定権はアタシにあるから勝手に進めないでちょうだいねぇ♪」


「えーー、、殆どの当事者僕なのに?」


「リスタルちゃんは被害者だけどぉ、、皆リスタルちゃんから被害を受けてもいるから被害者にもなれるわよ?」


「んな、大袈裟な、、、」



 デミコお姉さんとミルディさんは僕に付き合って騒動に巻き込まれた、、被害者かぁ、、、



 マリーは僕がボルグの前に現れたから拷問されたから、、間接的な被害者かぁ、、



 ボルグ、、僕がボッコボコのボロボロの情けない姿になるまで苛めたから被害者確定だね、



 メズール、、、マリーが睡眠薬盛ったとはいえ僕を助け出すためだから、間接的な被害者かぁ、、、



「あれ??これ僕が一切動かなければ起きなかった事件???」


「はい、大正解、全く、、馬鹿リスタル、あなたが動かなくてもその内助けに行ったのに、、」


「おい、俺様はどう被害者なんだ?言ってみろよ、ハチノス潰された以外の理由で被害者にしてねぇよな?おい?」


「それより、マリー僕が助けなくても良かったってどういう事?」


「聞けって」


「いや、、リスタルってば裏の怪しいカジノからも借金してたんでしょう?だから代わりに借用書とかを裏のボスのボルグなら持ってるかなー?って思って近付いたの、、何時か全部の借金の契約書を破って戻ってあげるつもりだったのに、、、来ちゃうんだから、、ほんとにばか、、、」


「えっ、、、」



 ボルグが無視されて不満そうな顔から一気に表情から色が無くなった、白く魂が抜けたような感じだ、



 その姿を見た僕は勿論、、、、



「ふっ、、ふふふふふっ、フフフフフフフフ。」



 スススとボルグ横に回り込み肩を組む、そのまま肩を叩いて僕は、、、、



「ぶはははははは!!ザマァぁぁ~!残念だったねえぇ!??ボルグちゃぁーん!!俺の女とか、返して欲しくば倒してみろとかカッチョいい事行ってたけどマリーが君に近付いたのは何と!!

 僕の為でしたぁ!!!!どんな気持ち!ねぇ!どんな気持ち!見せおくれよ!!

 君のその心をさぁ!!無様なさぁ!?今まで女のための決闘だとか言ってたけど彼女は僕にベタぼれだった件はどう想いで!?」


「、、、、、、、、」


「ぼ、ボス、し、しっかりしてくだせぇ、、」


「アハハハハハ!!!意気消沈とはまさにこの事!情けないねぇ!!女を奪った???そもそも君の物じゃありませんでしたぁ~~~~!プークスクス」


「そ、そんな、、そりゃ、、あんまりじゃねぇかよ、、、」


「そんなに落ち込まないの♪そう言う話は本人から聞きなさいな。ねぇ?マリーちゃん♬」


「えと、最初は色仕掛けで近付いて直ぐにリスタルの借金の契約書探して大体の位置は分かったんだけど、、、意外とボルグがリスタルよりも色々良くって、、、借金は後回しで良いかなーって意図的に遅くしてて遅れてたの、、、」



 ゆ?ん?わ?いまなーんて?ふぇ?



 そういや、マリーとボルグの間に恋人の炎があったからもしやとは、もしかしたらと、思ってたけど、、嘘だろぉ!?今マリーなんて?うえ!?なんてぇ!???



 今度はボルグの反撃が始まった



「ブハハハハハ!!!あっれぇ!!おかしいなぁリスタルくぅん??どうやら違ったみたいだなぁ??おら!マリーの心見てみろよ!オメェの方がマリーの本心知ってるよなぁ!?見えるよなぁ!?

 自信満々だったのに実際は違ったなぁぁぁ???フハハハ!オメェみたいなゴミを食べる男に男として負けるかよ!!体の中全部洗い流してから出直せ!ゴミで出来てる男さんよぉぉ???」


「二人とも息ピッタリねん?そしてこの阿保どもを手玉に取れるマリーちゃんには驚きだわぁ、、大変でしょお?こんなの相手にしてたら?」



 デミコお姉さんが何か言ってるが僕はショックで意気消沈していた、そんな、馬鹿な、マリーと僕には確かな絆が、、



「はぁ、、おい、そこのありもしなかったプライドを無かったとようやく理解した馬鹿二人、他に聞きたいことは無いんですか?それとも自分に対する想いだけ聞きたいとか子供ですか?てか、そんなの直接聞かないで理解なさい、だからこんなクズ女に引っ掛かるんですよ、このアホ共が、女心を1から学ぶために一度死んで女に転生なさい。」


「す、スゲェ、、この場のヤツら殆どを馬鹿にしてる、、リスタルもボスもついでにマリーの姉貴も流れるようにバカにしてる、、、流石はボスをワンパンした女だ喧嘩慣れしてやがる、、、」


「貴方みたいな木っ端ワンパンすら必要ないと証明してやろうか、役不足?」


「あ、何でもないです黙ってます、はい、スミマセン、、、」



 スゲェ有言実行だ睨みもせず、顔も向けず、発言一つで黙らせた、まさにゼロパン、お見事、、



「じゃぁ、ミルディさんが言うように他に聴きたいことなんだけど、、僕の渡したお金って結局どうしたん?」


「、、、、、全部使ったわ。」



 それ以上は何も言いそうにないマリー、どうやらどうしても言いたくないらしい、、一体あんな大金何に使いきったと言うんだろう、、気になる、、



「よし、デミコお姉さんは知ってますよね?教えてくれませんか?」


「リスタル!?それは卑怯じゃない!?ねえ!ちゃんと教えるから!そんな形でバレるの一番嫌だから!!せめて言わせてよ!」


「うーん、、、教えてあげな~い♥でも!マリーちゃんが教えないなら何時か教えてあげるわ!」


「え、、、、逃げ場無い、、?伝えたらリスタルが傷付いちゃうから、嫌なんだけど、、、」


「そりゃ、アタシも流石にねぇ?金貨100枚越えの被害受けてるリスタルちゃんの味方よぉ?リスタルちゃんもアタシ達が何考えてるのか心配なんだろうけど、流石に同情したのよ??あんな真実、胸糞が、、、ねぇ?」


「ええ、いくら残飯を食う男だとしても一滴の同情を垂らしても良いと少しばかり夕飯ついでに考えるぐらいには、、むごい、と、思いました、はい。」


「えっ!?何々!?!?そんな言い方されると余計に気になるんだけど!?早く教えてよ!?」


「そ、そんなに酷くないし、、大体リスタルが勝手に持ってきたお金だし、持ってきたら結婚するとか一言も言ってないから結婚詐偽でもないし、、、」


「とは言え、100枚、、渡す方も全部使う方も馬鹿ですよね。店長。」


「その通りよ!ミルディちゃん!おバカさん2人は痛い目に会いなさいな!さて!使い道は後でマリーちゃんが直接教えるとして、、次は?」


「俺様の処遇だな、せいぜい飯が旨い牢獄を望む」



 生意気にもふんぞり返って主張するボルグ、君に決定権とか発言権あるとでも?あと、態度が特に気に入らない。



「よし、奴隷落ちにしよう、僕は少しでもお金いるし、裏社会の元ボスなら良い値がつくでしょ。」


「おい!流石にひでぇぞ!!やり方がよぉ!オメェ人の心はあんのかよ!!」


「生憎と悪魔と呼ばれている身でして、噂通りの人物になってやろうかと。」


「そ、その話なんだがよぉ!リスタル!!お願いだ!ボスを許してやってくれねぇかよ!!」



 僕が更に煽ろうとするとミルディさんに言われて小さく縮こまっていたメズールが立ち上がって抗議した、いきなりなんだよ、驚くでしょ。



「黙りなさい、役不足、貴方はこの話の殆どに関わっていない部外者よ、席にいられるだけで感謝なさい、それとも無理やり追い出される乱暴なやり方がお好み?ボスが変態プレイ好きなら部下も酷いものね、、仕方ない、女神よりも深い愛を持ってぶっ飛ばしてあげるわ、感謝なさい。」


「い、いや、結構です、痛いのは、むしろやる方なら、、、いや!そうじゃない!!!ボスを見逃してやってくれ!別にボスはそこまで悪いことはしてねぇはずだ!何ならチンピラ共を纏めていたから治安がよかった筈だ!」


「ああ、確かに、ハチノスって裏カジノや犯罪ギリギリのグレーな商売しかしてなくて衛兵も放置してるって話、僕聞いたことある。」


「そうねぇ、、アタシが調べた感じでもボルグちゃんは腕の良い弁護士でも雇えばきっと無罪放免になるわよ?アタシ達が手を出した方が罪に問われるかもねん?」


「うっしゃぁ!勝ちぃ!ざまぁ!リスタル!!」


「でも私達が訴えた場合ね?一人だけ例外がいるのよねぇ、、、、?」



 デミコお姉さんは含んだ笑いをしながら視線をつい~と横へ、そこにはジト目のマリーがいた、



「あっ、、、この度は大変申し訳ありませんでした、、、どうか許してくれ、、、」


「いいけど、、勿論破局なのも分かってるよね?」


「うっ、、、、、、、、       はい、、」


「フッ、ザマァ!!マリーは僕の彼女だぁ!」


「リスタルはとっくに別れてるでしょ?」


「えっ」


「あの水路の上で振ったじゃない、本気よ?」


「嘘ぉぉお!!僕助けたんだよ!?組織のボスぶっ倒して華麗に!僕が活躍度一番だよねぇ?」


「そこは殆どのチンピラ共を倒したミルディさんかな~?華麗じゃないし、、」


「そこは僕でしょ!?筋肉モリモリだったボルグに一人で立ち向かったんだよ!?勝ち目の無い勝負に圧勝したんだよ!?惚れ直すでしょ!?物語なら!」


「おい、圧勝ってところ訂正しろ接戦だボケ。」


「二人とも黙りなさい、世の中が物語のように強い男になら無条件で惚れる女を幻想視してる脳内お花畑おめでた男と喧嘩に負けたくせしてうじうじとこの中で一番女々しい男らしさが消え失せた凡人。私が一番活躍したと貴方達の惚れた女が言ってるのよ?この格下共め。」


「ねぇ、二人とも黙れの後の罵倒いる?」


「事実よ、絶対に変わりようがない、、ね。」



 僕がもう一度文句を言おうと口を開いたときにパンッと心地よい音が響く、そこには手を鳴らした人物が、勿論デミコお姉さんだ、会話にあまり参加せず、利き手に回っていたが何か言いたいらしい。



「はいは~い!話がずれてる所で~デキる女デミコさんが決定しまぁ~す!ゴルグちゃんは放置!なにもしませ~ん、リスタルちゃんとマリーちゃんは別れる!はい!これで良いわね!」


「良くない!!」


「はいはい!今日はこれにて終わり!皆つかれたでしょ?今夜は飲み明かしましょ~アタシの奢りよぉ!」



 何かいきなり宴を始めようとしている、この人のノリはついていけそうにない、、あれ!?ミルディさん!?いつの間に人数分のグラスとお酒持ってきたの!?おつまみまでぇ!?用意がよすぎる!



 って!あのお酒見たことある!!くそ親父がこれはな高い酒なんだと自慢するようにチビチビ毎日飲んでるヤツ!



「あ、ボルグちゃんはお預けね。メズールちゃんは良いわよ。」


「納得いかねぇ!!」


「あ、すいませんボス、自分だけ良い思いして。」


「オメェ!そこは俺が可愛そうだから遠慮するとか、、」


「無いっす。」


「ちくしょぉぉぉぉ!味方は何処だよぉッ!!」


「全員ミルディさんが吹き飛ばしました、はいボルグザマァ♥じゃ、ご厚意に甘えて、、、」


「え、リスタル飲むの?終わらせて良いの?この会議モドキ、、」


「ふふん、僕の元カノなら分かってよねぇ?僕はリスタル、心のまま生きる世界一自分に正直な男、、なにより!女に振られたら飲むしかないっしょ!!チクジョー!やけ酒だぁぁぁ!!」


「はぁ、、、リスタルらしくて安心した、、、」



 僕は早速一つのグラスにお酒をついでもらい、一口目を飲んだ、、




 ただ酒ほど旨いものはない!高い酒なら尚更!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 その後呑み明かした僕らはぐっすり眠っていた、朝起きると、マリーはカウンターに倒れ込むように寝ており、デミコお姉さんはフツーにまだ飲んでるしミルディさんも掃除してるし、、



 ボルグは一杯も飲めないのが悔しかったのか目をギラギラさせ睨んできたが遠慮無く目の前で美味しそうに飲んでやった、が流石に眠くなり途中で寝たようだ、今もまだ寝てるメズールはその前でうつ伏せで倒れてるアイツが一番最初に寝たな酒にとっても弱かった、



 早起きの三番手は僕か、、うぅ、頭痛い、、完全に二日酔いだ、、どれぐらい飲んだっけ?



「あらん?起きたのねぇん?リスタルちゃん!オハヨー、二日酔いが酷そうね?これでもお食べなさいな♬」



 デミコお姉さんはそう言うと一つの小皿を出してきた、一枚の葉っぱが渦巻きとなって納めされていて花のような見た目、調味料に浸されたものなのかしんなりしてて少しの塩を一振してあるのか白い粒が見える。



「あ、どうも、いただきまーす。」



 出されたフォークで一口で食べる、薄い塩味と薬草の爽やかさで頭の痛みも少し引いていく、、うーん優しい味だ、、旨い、、



「これは薬草の塩漬けよ、、二日酔いにピッタリだからいつも在庫を置いてる人気商品よ?」


「うーん、本当だぁ、良いが覚めて頭の痛みも引いていく~、、もう1個下さいな。」


「追加料金銀紙(500)一枚よ。」


「うっ、葉っぱ一枚と思うとなかなかいいお値段」


「ウフフ?仮にも商売人よ?取れる所はきっちり取るわよ♫」


「生憎と持ち合わせがなくてね、マスター。」


「あら残念、ならお出しできませんわお客様。それよりもアタシに対する借金諸々返してもらうからねん?ツケとか言っても駄目よぉ?」


「うっ、バレたか、、仕方ない、大人しく寝てるマリーにでもイタズラしますよ、、」



 そう言って横で寝ているマリーに近づき、、その柔肌に触ろうとして、、


 ガァンッッ!!!


 デッキブラシと熱いキスを交わした、犯人は言わずとも決まっていた。



 僕は吹き飛び壁と激突、、かと思いきや回り込まれて首を捕まれた、速くない?吹き飛ばした後にそれに追い付くどころか追い越して首を掴むとか、、冗談でしょ?首がバカみたいに痛い、折れる



「私の目が覚めている目の前でよくもまぁそんな愚かな事が出来ますね?えぇ??汚客様ぁ?お酒に酔って寝た女の子を襲おうとか、、屑男とやってること変わりませんよ?元々ゴミですがクズにも成るおつもりで?ゴミクズ様?」


「い、いや、ちょっとイタズラするつもりで、、」


「リスタル?ちなみにどんなイタズラするつもりだったの?」


「え、ほっぺたぷにぷにした後、摘まんだりくすぐっても起きないならオッパイでも触ろ、、うか、、と、、、、」



 僕はあまりの衝撃に少し混乱していて聞かれたことに結構バカ正直に答えてしまった、それが誰の声かも意識せずに、、ミルディさんが僕の事をリスタルなんて呼ぶはずがない、、つまり、、、



「いっぺん死んでこいぃぃぃぃ!!!」



 寝起きでセクハラ発言されて二日酔いのイライラも重ね合わされた怒りの一撃、それはそれは綺麗なドロップキックをお見舞いされた。



「朝っぱらからお元気ですね!リスタル!あたしの体触ろうなんて百年早いわよ!このバカリスタル!!」


「あ、あの?イタズラしますってだけで殴打とドロップキックは酷いと思うんだ、やろうと思っただけで実行してないのに不公平だよ、、というわけでイタズラさせて貰えないと釣り合わないよね?」


「は?ふざけてるともう一回ドロップキックお見舞いするわよ?」


「あスミマセン、、」



 なんて日だろう、朝っぱらから女性人二人から罵倒と死にそうな一撃をもらうなんて、、きっと酷い1日になるに違い無い。



「じゃ、朝になったし、、マリー?僕のお金を使ったであろう旦那さんのところまで案内してくれる?」


「えっ、、、」



 僕の突然の告白に怒りを瞬時に納めたマリー、、どうしてそこまで驚くのか、、あっ、、そういや心は読めると伝えたことはあったけども、関係性まで見えるって伝えたこと無かったな。



 つまりは旦那さんがいるとまだバレてないと思っていたのだろう、僕にとっては当たり前すぎて忘れてた。



「な、ななななな、何を言ってるの??リスタル?私に夫なんていないわよ?こ、婚約者がいるなんてそんなわけ、、」


「ねぇ、僕旦那さんって言っただけで夫とか婚約者とかは一言も言ってないよ?」


「え、いや、その、、、、」


「言い忘れてたけど、僕って人の心が読めるだけじゃなくて人と人の関係性もなんとなーく分かっちゃうんだよね、、伝え忘れてごめんね!最初から家族が居たのは知ってたよ!」


「ハァーーー!?!?ナンデェ!?なんで、知ってて付き合ったノォォ!?てか初耳なんだけど!?知らなかったんですけどぉ!?」


「ゴメンゴメン、だってマリーが自分の好きなように、心のまま生きれば良いって言ってくれたじゃん?だから浮気でもいっか!って思っただけさ!」


「ふざけないでよ!それ知ってたら私最初から付き合って無かったわよ!えぇ!?うそぉ!?」


「はぁ、、朝から騒がしいおサルさんたちですね、汚客様がキチガイなのは元恋人のあなたがよく知ってるでしょうに、、、リスタルがマトモな男なら酷いのは完全に貴方ですよ?既婚者でありながら男にすり寄り金が無くなれば次の男へ、、、どんな悪女ですか?まぁこの汚客様はマトモではないのでセーフですが。」


「ねぇねぇ、結局僕が悪いみたいな言い方辞めてくれない??」


「無理です。汚客様が全て悪いので。」



 僕がミルディさんの対応を諦めていると、一人の男が口を挟んだ。



「こ、婚約者?おおおお、夫????」



 ボルグだ、どうやらさっきのドタバタで起きたらしく会話を全部聞いていたようだった、、その顔は驚愕の一言で表せる、心も信じられないと燃えているしね。



「や、おはよう!ボルグ!良い朝だね!気分も爽快と言いたいけど、、君は良いよね!二日酔いがなくて!僕は二日酔いでもう限界だよ!」


「そんな安い挑発は乗らねぇぞ、リスタル、、今の話本当かよ???」


「え、うん事実だよ?逆に知らなかったんだ?マリーは家族がいます、夫と多分子供がね、」


「ハァーーー!?!?ナンデェ!?なんで、そんなのいるノォォ!?!?夫居るのに俺と付き合ったのかぁ!?リスタルも合わせて3股!?!?ナンデェ!?」



 あれ、驚きすぎてマリーみたいになってる面白ろ、こんな大声出されてもまだ寝てるメズールが花ちょうちん出してるのも面白くなってきた、後、首そろそろ離して欲しい行きがぐるジグ、、、



「フェッ!?こ、子供がいるのもバレてるノぉ!?ナンデェ!?」


「本当なのかよぉぉ!!!せめてリスタルの何時もの冗談だと思わせて欲しかった!ちくしょー!俺にも酒寄越せぇ!金は、、いつか出す!飲まなきゃやってられるかぁ!!チクショーー!!頼むぜ!マスタァーー!!!」



 ボルグはあまりの事実に口調もおかしくなり涙目で酒を催促し始めた、哀れなヤツだ、、今更真実に気付いてヤケクソになるしかないなんて、、カワイソ


 そこに先程から店の出入り口でもある魔法の扉を弄っていたデミコお姉さんが、振り返って話しかけてきた。



「ウフフ、やっぱり似た者同士ねぇ?リスタルちゃんとボルグちゃんは、、あとお酒はダメよ?マリーちゃんがこれから旦那さん紹介するんだからね!」


「い、いやそんなこと一言も、、!」


「ハイッ!これでヨシッと、、今マリーちゃんのお家の近くにこの扉が現れるように設定したわ!この扉の先に旦那さんいるわよお~?」



 僕とボルグは迷わずダッシュした、ボルグは相変わらず縄でグルグル巻きだか器用に走った、僕はミルディさんに解放して貰いすぐさま扉を開けに行く、ボルグは両手も縛られているので僕が開けるしかないのだ、



「えっ!?ちょ、ちょおお!?!?待って!早いッ!心の準備とか!!なんでそういう時だけ息ピッタリナノォ!?」



 僕らはお構いなしに扉を開けて扉に入り込む、だって気になるじゃないか、浮気相手がいったい誰なのかってさ、、誰に負けたのか知りたいじゃないか。



 僕らは体当たりするように扉を開け、その中の光に包まれた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そこはなんの変哲もない裏路地だった、見慣れてないから僕の住む町の裏路地ではないらしい、僕が知らないって事はちがう町だ間違いない。



 ボルグも見覚えがないのか目を合わせると首を横に振る、ここは一体何処なのだろう、、すると後から皆が着いてきた。



 まず焦った顔のマリー、楽しそうに笑うデミコお姉さん、不愉快な顔のミルディさん、、寝ぼけているメズール。



 メズールの事すっかり忘れてた、、そういや居たんだった、、、まだ状況が掴めてないのかボケッとした顔だ、、困惑の感情に包まれている。寝起きだね、ミルディさんに片手で持ち上げられて運ばれてる。



 あ、投げ捨てられた、可愛そうに



「ね、ねぇ、いくらなんでも早すぎない?もう少し時間をおいて、、、」


「やだ」


「お願い!私にも準備ってものが、、、」


「いやだ」


「ね?お願い、、なんでもするから、、、」


「、、、、、、い、、いやだ、、」


「少し迷いましたね、この男、なんでもの部分に興奮しやがる気色悪いブタめ、玉潰れたら良いのに」



 今のなんでもするは正直かなーり揺らいだが、それよりもマリーの旦那だ、この男らしい僕を見捨てるぐらいだ、相手はよっぽどの男なんだろうねぇ?絶対に一度見ておかなくては、、、、そしてご挨拶(殴り合い)して置かないと、、



「諦めなさいなマリーちゃん♪これでこの二人とキッパリ別れられるはずよん♫」


「楽しそうですね、、デミコさんは、、私が恥をかくのがそんなに楽しみですか、、?」


「もちろん!だってアタシ貴方のこと嫌いだもの!クズ女だし!!人の愛を舐めてんじゃねぇぞ!!!小娘!」



 デミコお姉さんまさかのドスの効いた声でのカミングアウト、確かにデミコお姉さんはマリーに対して何故か良い感情を持っていなかった、、理由までは分からないけど、さっき胸糞が悪いとか言ってたし、、本当に何が待ってるんだ?少し怖くなってきた、、、マリーもすごく怯えてる、



「は、はい、、やっぱり、もう止めれないのね、、最後まで隠して置こうと思ったんだけどね、、傷付くし、、でも、知りたいなら仕方ないわね、、私が全部悪いんです、、いっそ今すぐ殺してぇ、、」



 マリーも諦めたのか少し考え込むと意を決して裏路地を慣れた足取りで進んでいく、その動きに迷いはなかった。



「どんなヤツなんだ、、俺様を振るぐらいだよっぽどの男なんだろうなぁ?せめて一度だけでもご挨拶(殴り合い)しねぇとなぁ?気が済まねぇよ。」



 僕はボルグと同じことを考えてた、その事に結構ダメージが来た、ボルグはキョトンとしてたが、反応も面倒なので取りあえず叩いた、



 ギャアギャア騒ぐが全無視だ、そんな暇と元気ない、さっさとその男を見に行こう、、



 裏路地の隙間から覗く朝日がキラキラと輝く中、気分はかなり憂鬱になりつつあった、でも見ないまま後悔するよりは見てから後悔した方がいいだろう、、



 しばらく歩くと古びた教会みたいな施設が見えてきた、、ボロボロの看板には【モダル孤児院】と書いてある、、孤児院?ここに旦那はいるのかな??



「わ、私の旦那はここの孤児院の院長なの、、だけど、、色々問題があって、、、」



 確かに問題ありそうだな、こんなボロボロの教会なんて、、子供たちが過ごせないだろう、、もしかして貧乏だから僕のお金を使ってこの建物を修繕したかったのか、、、?



「マリー?マリーなのか?」



 すると後ろから男の声が、僕とボルグはすぐに振り返り男の顔を見る、こんなタイミング、そしてマリーを知っている人物なんて件の旦那に違いないッ!拳をにぎれぇ!!戦闘態勢だぁ!!!



 しかし、その構えは直ぐに解くことになる、何故ならそこにはボロボロの男がいた、病人が着るような薄着に、松葉杖を付いたそれはそれは軟弱そうな男が来た。



 髪は短く切り揃えられてて茶髪、身長はそこまで無くて小さめ、少し血が出ているのか包帯に赤いシミが出来ている、何処からどう見ても満身創痍だ。



「そちらの方は?マリーの友人かな?どうもおはよう。僕はモルダと言う、しがない孤児院の院長だ、マリーが何時もお世話になっております、にしても

こんな朝方に何か後用事でも?ろくなものはありませんがおもてなしいたします、、汚い協会ですが中に行きますか?」



 礼儀正しい人物のようだ、何故そんなに怪我してるのか?とか色々聞きたいがあまりのボロボロさに怒りが引っ込んでしまった、、そして案外大人しそうでいい人そうで、、



「ふっ、、僕らはこの人に負けたんだね、、」


「だな、、リスタル、、俺らは潔く身を引こう、」



 何処か納得いかないが、何か負けた気がする、主に常識の部分で、、僕、、初対面でこんな綺麗な挨拶したこと無い、、ボルグと会った時も、、デミコお姉さんと会ったときもマトモに挨拶してない、、



「そ、そうなの、友人、と言うか、、元?友人??えと、私の旦那様を見たいって連れてきて、、色々あってね、、、」


「そうなのか、大変だったね、、って!マリー!?怪我してるじゃないか!大丈夫なのか!?」


「それはこっちの台詞よ、、どうしたのそんな大怪我、、、」



 二人の仲むつまじい姿とその関係性の炎の異様な明るさに僕は敗北感で一杯だった、、そうか、、これがマリーの想い人となのか、、流石にあの炎に飛び込む事は出来ないな、、



「リスタルちゃん、リスタルちゃん。何か納得して達観した清々しい顔をしてるけど借金の使い道聞いてごらんなさいな、、、多分ミルディちゃんが動かないといけなくなるわ、、」



「チッ、メンド、、、早くすませてくださいね。」



 なんか、、不安がよぎる、、、ボルグを見ると何か頭を抱えて僕を哀れんでいる、、心の底から、、なんで?意味が分からない、、何かに気付いたのか?



「ち、ちなみにマリー?僕が渡したお金、、100枚の金貨何に使ったの?」


「えと、、、、、、、、、、、、」


「マリー?」



 そこでマリーの旦那が口を開いた、それは僕を激昂させるには充分すぎる台詞だった。



「え!?マリー!?あの金貨って彼から借りたのかい!?てっきり色仕掛けで裁判沙汰起こして奪ってきたお金かと!!

 僕が借金のかたに色々持ってかれたのを返すためと思ったのに、、でも安心して!借金返すだけじゃ勿体無いからと思ってね!増やそうとまたギャンブルしてきたんだけどさぁ、、アイツらイカサマしてるからイカサマし返してやったんだけどね?そしたら逆ギレしてボコボコにされてお金無くなっちゃったんだ!でも安心して!この後衛兵に泣きついて金取り返してくるからね!安心して!」



「何一つ安心出来ねぇじゃねぇがぁぁああ!!!」



 僕はそのボロボロの男に殴りかかった。



 すかさず僕を止めるミルディさん、、羽交い締めにされて僕の体がピクリとも動かなくなる。



「テメェ!!ふざけんなよ!!僕があの金用意するためにどれだけ危ない橋を渡ったことか!!親の名前やら家のものを担保に勝手に銀行から借りたり!裏カジノでは裏商人の真似事して後々どれだけ命を狙われたか!!その成果を!ギャンブルで全部スッタだとぉ!?ざけんな!!!テメェぶっ殺す!!金だけならまだ許した!でもなぁ!テメェ!!マリーにハニートラップ容認しやがったな!!!!止めてねぇなぁ!?そこが一番腹立つっ!」


「え~、、僕は別にやって欲しいなんて頼んでないしぃ、、貰ったお金だからどう使おうが勝手でしょう?バカなのでしょうか?」



「ッッ、、、、フゥーフゥー」



「クッ、この男、力が強くなってる!?何故!?」



 僕は自分の持てる力全てを出し切るつもりで力を込めミルディさんの拘束をほどこうと力む、少し、少しづつだが動けるようになる。



「安心して!リスタル!!ちゃんと借金返済分は別で私が取って置いてあるから!彼ならギャンブルに使っちゃうって分かってるから!安心して!」


「え!?そうなの!マリー!!ありがとう!!」


「キャッ!?だ、旦那様!?人前よ!?」



 そう言い男はマリーに抱きついておもむろに胸を揉み始めた、、は?むね、、、え?もんで、、え?



「「この男ぶっ殺す!!」」



 怒りの声が追加された、ボルグだ勿論ミルディさんにぐるぐる巻きの縄の端っこを足で押さえつけられていた、ジタバタ暴れる様は虫のよう、、だがその表情は獲物を狩らんとする猛獣のそれだ。



「あー、やっぱりマリーの揉むと安心するよ~。はぁ~柔らかい、、落ち着いたし、借金返済用のお金頂戴?増やしてくる!」


「んんっ、、だ、ダメよ、、皆見てるしあのお金出したら孤児院の子供たちが、、んっ!」



 なんとマリーは抵抗するどころか恍惚とした表情で顔を赤く染めていた、あんなっ、、あんな顔見たこと無いッ!正直興奮するがそれ以上に腹が立つっ!僕だってさわったこと無いのに!!!!



 絶対に絶対絶対絶対絶対にキル!殺す!!デストゥーユゥー!!!頼むから指の骨全部折らせてくれ!その上で焼いて捻って潰して轢いて捏ねて豚の便所に埋めてやるっっっ!!



「あーーー、分かったぞぉ!マリー!コイツらからお金取ってきたんだね!やるぅ!あ、お金どうもありがと、じゃ!帰って下さい!返すお金はないので!おもてなしも無しで!」


「そ、そうなのリスタル、ボルグ、、これが私の旦那様、、こんなの見たら幻滅するよね、ゴメンね?んんっ。」



 マリーの火照った顔とポット出の男のゲスい顔、そしてその男の手の形に変わるマリーの柔らかいソレ、、、



 僕ら二人の中でナニかが切れた、、怒りの紐とか理性のあれとかではなく、何もかも諦めて死にたくなるアレだ、



 僕らふたりはあまりの怒りとか焦燥感とか敗北感とか凄まじい感情に脳みそが追い付かなかったのだ



 とどのつまりオーバーヒートした、心が、感情が、壊れ欠けたのだ人として大切なナニかが。



 僕とボルグは現実逃避することにし、何も言わぬ屍となった、ああ、地面の色きれい、おいしそ、、



「あれ?二人ともどうしたんだろ、お酒の飲みすぎ?二人ともしっかりと自己管理しなきゃ!お酒はほど程にだよ?あんなのにお金使うとか正気じゃない。バカだよねぇ」



「あ、あの?そろそろ揉むの辞めない?他に人が来ちゃうかもだし、、ね?辞めましょ?」


「えー、、ヤダァ」



 男は胸を揉み続けた、それはこの世の男の性欲、欲望と言うものを世界で誰よりも嫌っている一人の少女のプライドと理性を壊すには十分だったらしい



「ああ、もう、、もう限界です、、このゴミ、、キタナイ、、ケサナキャ、、」


「み、ミルディちゃん?ダメよ!仮にも、そう!!仮にも怪我人!死んじゃうわ!」



 デミコお姉さんがすごく焦った声を出す、それだけキレていたのだろう、思わず殺しかねない程、店長至上主義のミルディさんでも流石に止まらない程の怒りだったらしい。



「死に去らせぇぇぇぇ!!この変態がァァ!!!」




 ミルディさんの堪忍袋の緒も限界を突破し破れた、、その瞬間目で終えない速度で男の顔面にそれはそれは見事なキックをかまして吹き飛ばしていた、朝方の町にクズ男が鼻血を出しながら教会の壁に激突した、凄い音と凄まじい砂埃が辺りに広がった、、砂埃が晴れると男は教会にそれはそれは、綺麗に埋まっていた。



「ふぅ、、、この世のゴミがひとつ無くなりましたね、良い仕事しました。」



 スッキリした、そう言わんばかりの顔を見て僕ら二人はミルディさんにグットサインを送った、ミルディさんも満足げにグットサインを返してくれた、この時だけは、、相まみえない僕らの心が繋がった。



「モダルゥゥゥゥゥ!!!!!」



 爽やかな朝に似合わない哀愁にまみれたマリーの悲鳴が回りの人々を起こした。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「はい、そう言うわけで、、()()が私の旦那様でした、、はい、、」


「一応生きてたから良かったけどね!ミルディちゃん!!殺しちゃったらどうするの!!ここの地域で商売できなくなるのよ!!気持ちは分かるけど落ち着きなさい!!そこで反省すること!!」


「はい、、すみませんてんちょぉ、、、」



 そこにはしおらしく正座する二人の少女がいた、マリーとミルディさんだ、ミルディさんの方は親に怒られた少女のように可愛らしく縮こまっていた。



 僕らにとって説教されてしょぼくれて可愛いミルディはどうでも良いのだ、どうでも



「マリー?あの男なんなん???」


「説明して貰おうか、、ああ?」


「おい、ボルグは黙ってろテメェの出番じゃねぇ」


「は?俺様にもだな、ちったぁ、文句言う権利が」


「黙ってろ」


「チッ、、分かったよ、、」



 ボルグはそれだけ言うと大人しく引っ込んだ、メズールはボスが座りやすいようにと孤児院の中からボロボロの椅子を持ってきていた、なんて気が利くヤツなんだ、いっそのこと縄をほどいてやれば良いのに



「僕ねぇ、、最初はボロボロだったからさぁ、、教会もあの男も?修繕費とか医療費かな?それなら納得だし、全然潔く身を引いたよ?でもあれなにさぁ!!」


「えと、、ち、違うの、彼ギャンブル依存症で、、家財とか内臓とかも色々売っちゃってて、、この前まである病気で一時期寝たきりになってて、、この前のお金で病気のお薬買って飲ませたんだけど、、治ってすぐにカジノに行くなんて、、フフっ」


「笑うところじゃ無いと思うよ??マリー?」



 何故か嬉しそうに笑うマリー、、意味が分からない、なんでそんなクズ男の事を誇らしく思うような感情を持つか分からない、、何故?



「この際だから教えてあげるわ、リスタルちゃんとボルグちゃん、、この女、、マリーちゃん、、、マリー・ドラネットは、、、」



 デミコお姉さんが我慢なら無かったのか口を開いた、これ以上何があるって言うんだ、これ以上最悪な事実は出てこないでくれ、、、



「末期の、、重度のダメ男好きよ、世界でも類を見ない程の。」


「、、、、、、やっ、ぱかぁ、、、」



 予想はしてた、、何か、、そうなんじゃないかなぁって思ってたから、、衝撃は少ないが、、やはり直接言われると覆しようがない気がして力が抜ける。



「ハッ!極度のダメ男に好かれた二人は、ねぇ?世界が認めたダメ男好きな女に惚れられたお二人さん?今、どんな気持ちなんですか??こんな女に惚れた感想は??ほら!答えてくださいよ!!」


「ミルディちゃん??お説教はまだ終わってないわよ?」


「あ、はい、、、、」



 そう、、マリーは極度のダメ男好き、、あのクズ男よりもダメな男になれる自信がちっともない、、なんだろう、、この、勝負に勝ったのに負けた方がヒーロー扱いされて全てにおいて負けた感じは!!



 あんなのに負けたとか!いや!負けてて良いんだけど!アレよりダメ男でなくて良いんだけど!でも!負けは負けなんだよ!畜生!もうワケわからん!!



「そ、そうかぁ、、俺様達ってダメ男だったんだな、、はは、、」


「ぼ、ボスしっかり、、良いじゃねぇですかこの世の底辺では無いと分かったじゃねぇですか。」


「しかも、、俺様アイツ知ってるんだよなぁ、モルダだっけか、、うちが運営してた裏カジノの要注意人物(ブラックリスト)にいるヤツだ、、イカサマ、借金、器物破損、無銭飲食、カツアゲ、、そこらのチンピラよりもチンピラしてたな、、」


「さらに。この男、孤児院運営してるけど国の補助金だけを貰う為にやってるのよ?世話は放置して皆よりも大きい子供たちが小さい子供の世話をしているのよ?人間のゴミよ、アタシから見ても」



 どこまでクズなのだろう、ここまで清々しいクズがいただろうか、、ダメ男が好きだからとは言え限度が、、、



「ちなみに、、なんで僕を選んだの?最初からお金目的だったの?」


「うん、、最初はそうだったんだけど、、リスタルも最初は暗くて自信無くて、何もかもにビクビクしてて、可愛くてタイプだったの、だから少しだけ本気になってたかな?でも今では自信満々の変態だし、一人で裏組織とやり合おうとする男らしさ身に付けちゃってタイプじゃなくなったし、、一応借金返済を手伝ってサヨナラするつもりでした、、」


「そんなぁ、、、良い男になろうとしたら振られたのかよ、、」


「ち、ちなみに俺様は?」


「リスタルの裏で作った借金の借用書を消そうと思って、、まぁ、前もやったことあるし結構早めに終わったんだけど、、ボルグもボルグでダメダメで良いかなって、少し遊んでました。」


「お、お遊び、、、、。」



 駄目だ、これ以上聞くと僕らの自信と美しい思い出が色あせ、壊れていく、ここに来るんじゃなかった、、もう後悔し始めた、、なんで僕の恋愛ってこうも上手く行かないんだろう、



 いや、自業自得な部分もあるけどさぁ、、最初から人妻かもしれないって思いながら相手したのが悪いけどさぁ、、



 あんまりすぎる。



「ま、まぁ、、マリーが幸せなら良いんだけどさぁ、、最初から旦那を捨てて僕選んでくれないかなぁって思いながら過ごしてたし、、クッ、、負けた、、し、、ここは潔く、、ひ、、く、、とするよ。」



「結構葛藤したなぁ、、俺様はもう未練は今ぶち壊されたしもう良いや、女なんてマリー以外にもフラれて来たからな、にしてもこれからどうすっかな?仕事見つけねぇと」


「そうだ、ボス、前々から思ってたんですけど俺、本当の牢獄長になってみたいんすよね、一緒に牢獄の監視員になりやせん?」


「あーー、、アリだな、恩恵の力も活かせそうだし行ってみるか、、、」



 何か二人の就活が始まってた、それで良いのか、色々言いたいこともあるだろうに、、



「えーと、、念のため、、最後に、、本当の最後に聞くけどあのダメクズ男から僕に乗り換えるつもりは、?」


「えーーーーと、ムリ!ゴメーンね?」



 マリーの一言で僕の二度目の恋は最悪の形で終わりを迎えた。



 僕は現実逃避するため朝日に向かって叫びながら走った。それはもう全力で。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「にしても以外だわぁ、、あのまま許すなんてねぇ?アタシには信じられないわぁ。」



 あの後、僕はやけくそ気味に逃げた、追いかけてくれたデミコお姉さんに言われるがままにバーに入ると同時に泣いた、それはもう情けなく大声で。



 ボルグとメズールはどこか遠くの地域に行き、ハチノスを知っている人が居ないところで真っ当にやり直すつもりらしい、今回の事で自分は悪いことをするのにやっぱり向いてないと思い直したらしい。



 マリーにはお金は返さなくて良いとだけ叫びながら伝えて別れた、畜生、、あの糞男次会った時、マリーと別れてたらぶっ殺してやる、、



 ああ、さっきの光景が目に浮かんで忘れられない、マリーが胸を揉まれて頬を染めていた光景、、それを見てなにも出来ない僕が凄く不甲斐ないと言うか、無力すぎて死にたくなったと言うか、目の前が白くなると言うか、、、あんな経験もう嫌だ、女性恐怖症になりそう、、、



「結構ダメージあるみたいねぇ、だから止めたのに、、ねぇ?」


「私は想像以上のクズっぷりに思わず手が出てしまいましたよ、、はぁ、私もまだまだですね、、」


「モウシニタイ、あんなのに負けたのか」


「元気出して!リスタルちゃん!彼女に捨てられる位良い男になったのよ!自信持ってちょうだい!」


「そうですよ、あんなクズ男と付き合うなんてあの女正気じゃない、、、一瞬だけ私と意気投合したから良い相手だと思いましたが、とんだ勘違いでしたね。」



 僕はバーのすみっこに座り込み、自分の膝に顔を埋めていた、あんな最後って無いよ、、



 僕の予定だと良い男が現れて、



「フッ、君ならマリーを任せれるね、僕の負けさ、、え?お金?そんなの返さなくて良いさ、僕からの遅れたご祝儀とでも思って貰ってくれ、それに、、、惚れた女に自分の人生掛けるのは当たり前だろ?どうぞお幸せになってくれよ?たったの金貨100枚、有意義に使ってよね?」



 と言って朝日が昇る町に消えて行く、、、



 そして感謝を伝える二人と僕を見直すミルディさんとデミコお姉さん、、、これでめでたしめでたし、の予定だったのに!!



「はぁ、、人生って上手く行かないなぁ、、物語とは全然違いすぎてツラい、、」


「はいはーい。落ち込んでるところ悪いんだけどぉこれからについてお話があるのぉ♪」



 マリーはこれからどうするんだろ、、変わらずにお金を男から騙しとるのだろうか、、、あんなの辞めて欲しいけど、、身売りよりはましかぁ?いや、何時もはやってないらしいし、問題、、あるわ、ボケ



「おーい!聞いてるのお?リスタルちゃーーん!」



 あ、メズールと別れの挨拶交わすの忘れた、、まぁ昨晩楽しくお酒飲んで話せたからいっか、、また何時か会える気がするし、、その気になれば関係性の炎で居場所なんと無く分かるし、、、



「ねぇねぇ、リスタルちゃん、貴方結構危うい状況だって分かってるのかしら?」


「え?危ない状況って?」


「あ、ようやく反応してくれたわね?アタシ寂しくてリスタルちゃんにチューしちゃうところだったわぁん♫」


「是非ともそのお話をお聞かせくださいませ、デミコお姉様。」



 僕は直ぐに正座し、話を聞く姿勢を取る、うん!人の忠告はちゃんと聞かないと!どんな悲劇が待ってるか分かったもんじゃない!



「リスタルちゃんってボルグちゃんのところで拷問一週間コース行ってたじゃない?」


「いや、無理矢理でしたけどね、そんな物騒なコース頼みませんよ、僕の趣味じゃない。」


「そうよね、リスタルちゃんが好きな趣味は人妻だものね。」


「その言い方は語弊ありますけど事実だからなにも言えねぇ、、」


「シンプルに変態なんだからなんでも喜んでおきなさい、豚がエサを選り好みするものじゃありませんよ?まぁ、何しても気持ち悪いのでさっさと自分のブツを切り取ってきて下さい。」


「で、僕がピンチってのは?」


「リスタルちゃんってば、お仕事は?」



 僕は時が止まった、仕事の事をスッカリ忘れていたからだ、無断欠勤、、それも一週間、、、更には借金取りにも顔を一週間見せていないから逃亡したと見なされているだろう、、町に戻れば奴隷一直線人生終わりましたコース強制待ったなし。



「あ、、、無茶苦茶ピンチだ、、ヤバい終わった」


 ど、どうしよう、、今からでもマリーに少しでもお金返して貰う?いや!そんな情けないことするぐらいなら奴隷の方が、、、イヤーー!どっちもイヤァ!



「そんなぁ、貴方にぃ?朗報でぇ~っす!」


「よっ!!!デミコおねぇさまぁ!!!地獄に仏のオカマとはこの事!僕の救世主!!どんな解決策があるんですかぁ!!」


「ふふふん、昨晩のお話の続きにもなるんだけどねぇ?リスタルちゃんってアタシ達の目的聞いてきたじゃない?なんで無償でここまでしてくれるのかってねぇ?」


「そういや、聞きたかったけどお酒に流されて忘れてましたね?なんでここまでしてくれるんすか?金ないっすよ?僕?」


「チッチッ、チィ~?お金が目的なら借金まみれの相手にここまでしないわよぉ、、ズバリ!スカウトよん!!」



 デミコお姉さんは指をふりわざとらしく踊り、体をクネクネさせ始める、なんか芝居とかミュージカル見てるみたい



 それよりも、、



「スカウト???」


「じぃつぅわぁ、、ウチのバー、、【ラプラス】の従業員が嫁入りして退職しちゃったのよ、、お陰で人手不足なの!そこで!優秀そうな人材がここにっ!」


「え、ええ!?ナンテコッター!!」



 僕はノリノリのデミコお姉さんに便乗するように合わせる、棒読みが過ぎるかもだけど、何か楽しくなってきた。失恋の傷も少し癒えたかも?



「そこでぇ、、リスタルちゃんがボルグちゃんに捕らえられている間にアタシ達は一体何をしていたでしょーか?」


「何してたんですか?」


「まずぅ、リスタルちゃんの借金を買ってきたわ!合法的なやつを全部!あと、お仕事先にも確認取ったらリスタルちゃんクビだって」


「え?僕の借金買ったぁ?あと、、やっぱりクビかぁ、、元々嫌われてたし親のコネで入ったところだし別に良いけど、、」


「あと、リスタルちゃんの親御さんに確認取ったら絶縁だって、、ほら、絶縁状もあるわよ!」



 デミコお姉さんは次々と書類を見せてくる、解雇通知に借金の借用書変更手続き証明書、親の名前と僕の名前がついた絶縁状、、、



「よっシャァ!!!ようやく絶縁したか!あの糞親父、、いや!バルグ・ヴォルグのヤロォ!これでテメーらとは他人だぜぇ!!ヒャッホォ!!これから僕はリスタル・ヴォルグじゃなくて、只のリスタルだぁ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 教えて!デミコさん!

 名前について


 名前は基本的に


 一般的な人は名前・家名


 王族や貴族なら名前・土地、国名の頭文字・家名


 家族がいない孤児や家族から絶縁された人は名前だけが残るわ!

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「あの野郎僕の事絶縁したら子供一人養えない男だと思われるのがイヤで絶縁してなかったけどとうとう思い切ったか!これでもう無関係!自由だー!」


「よっぽど嬉しいのねぇ、、仮にも血が繋がった家族よ?」


「あんなの家族とは認めません、誕生日を祝わないならまだしも、お前の誕生日だったなと思い出して酒が不味くなったふざけんな、と言って子供を蹴る父親なんて親じゃありません。」


「まぁ、、絶縁されて喜んでるなら良いんだけどね?で!お話の続きなんだけどぉ、、これでリスタルちゃんがあの町に戻る理由はないよね?そしてリスタルちゃんが借金を返すのはもうアタシ達なの、、、と言うわけでラプラスで働かない?」


「勿論良いですよ!仕事クビになって一文無しの僕に仕事までくれるなんて!最高じゃないですか!!一生ついていきますよ!デミコお姉さんッ!!」


「よかったわ!それじゃ、この契約書にサインしてねん♥」



 目の前に出される雇用契約書、名前の欄にすらすらとリスタルと書く、いや~こんなに早く再就職なんてついてるねぇ~あ、家名はもう要らないのか!消そっと!



 この人たちに着いていったら面白そうだし何よりも今までに僕の事を悪魔って理由で罵倒してこない数少ない相手だし、、ここなら気持ちよく働けそうだ!



 性格はアレだけど可愛い店員と性格は良いけど見た目アレな店長、、ま、あの町に僕の居場所はもう無いし持ち物も何もかも無いし助かったぁ!



「いやーこれからよろしくお願いします!デミコ店長!!」


「そうねぇ?これから末長くよろしくねん?仲良くやっていきましょ~?リ・ス・タ・ルちゃん!」



「アハハハハ!」

「ウフフフフ!」



 僕は気付くべきだった、隣で暗く愉しそうに笑うミルディさんがいたことに、違和感を感じなければならなかった事に、、最初から、、そう、最初から気付けた大きな、大きな勘違いに。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 しばらくして、色々手続きして仕事内容を教えられた僕はいざ働くことになった、まずは制服に着替えて、、、




「あのー??デミコお姉さん??これはなんの冗談ですか?」



 僕の前には鏡がある、そこには()()()()()()()()()()()()()()()の姿が反射して写っているのが見える



「ウフフ、冗談?なんの事かしら?」



 そう、僕はカツラと魔法の道具で女装をさせられていた、黒髪黒目の男から金髪ツインテール青目のミニスカメイドとして、、



「なんで僕は女装させられてるんですか??」


「んー?リスタルちゃん、ここを何処だとご存じで?」


「勿論、女装した変態が働いていないお洒落なおとぎ話のバーです。」


「ブッブー、正解は()()()()()でぇーっす!オカマバーってのは体は男でも心は女の人が働くバーよ!」


「僕は体も心も男性なのですが」


「これから変えて貰うわ♬」


「僕の人権は何処に、、怖いこと言うなぁ、、」



 僕はリスタル、、心のまま生きると決め、自分をさらけ出して生きると決めていた男、、それがどうだろう、今や心からやりたくない仕事をやらされ、黒髪黒目すらカツラや魔法の道具で変えられ、偽りの自分を作って働けと言われている。



「なんで、、こうなった!?」


「契約書あるから逃げられないわよぉ?それに、アタシ達から逃げられるとでも?世界の何処にいても世界の全てを知ってるデミコおネイサンが世界の果てまで借金取りに行くわよぉ?」



 僕はとんでもない相手に借金を肩代わりされてしまったらしい、、逃げても世界のどこでも現れる事が可能なあの扉があるかぎり、文字通り世界の何処にいても見つかるだろうし追跡可能だろう、、世界の全てを知ってる店長からは絶対に逃げられないっ!



「だからとは言っても、、女装なんて、、嫌だぁぁ!!せめて、せめて!ミルディさんみたいなロングスカートとかデミコお姉さん見たいなジーンズタイプが良いっ!」


「諦めなさいな、ミルディちゃんとお揃いの女装よ?喜びなさいな。」


「いや、お揃いだからって喜べるわけ、、、」
























「お、そろい、????」





 今、デミコお姉さんは何と仰ったんだろう?オソロイ?何が?ああ、メイド服が?いや、でも、女装がお揃いって、、、それってぇ!?!?!???




 僕はバッとミルディさんの方を見る、ミルディさんは腹を抱え口に手を当てて笑い堪えてた、どうやら僕の格好が死ぬ程面白いらしい、心の奥底から笑っている。



「つ、つまり、ミルディさんって、、、、」


「今ごろ気付いたのぉ?そうよ♬ここはオカマバー【ラプラス】なら勿論ミルディちゃんはぁ♬」



 デミコお姉さんの笑顔が深く、歪む、それはそれは面白いものを見るように、愉しそうに笑う悪魔のように、続く言葉は僕にとって信じがたいもので、





「ミルディちゃんは身体的には()よ」





 僕は叫んだ





「嘘だろォォォォォォォ!!!!!!!!!!」




 僕は今までの関わりを思い出す、膝枕で喜び、可愛いと思ったり、セクハラしたり、これから美少女と仕事できるぞ!ヒャッホイ!と思っていた自分を思い出し、それらがガラスが割れるように崩れ、絶望に染まっていく、




 僕は、、ぼくはぁ!!




 男の娘に欲情してました






 こうして、僕の新生活は最悪のスタートで始まった、どうやら僕の人生に安寧なんて無いらしい。始まりも終わりも最悪ばっかりだ!畜生!







 だが、未来の僕が見たらきっとこう言うだろう、楽しい生活が待っていると、、、、





 そして、無理無理、女装はキツいってね、、



第一章完結

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