記録【ボルグ・マスラ】
何故こうなった、なぜ
「おいおい、一撃で仕留めるって言ったのにねぇ?受けとめられた上にカウンター貰ってるねぇ?でかい口叩いたのにね?」
俺の糞みたいな人生がやっと良い方向に向かって来ていたのにたった1人の男、、目の前のこいつのせいで全部狂い始めた。
「その筋肉は見せかけの飾りかな?パンチの撃ち方がなってないなぁ?力任せで子供みたいだよ?」
鼻血を拭いながら煽るリスタルと名乗った男、、俺の一撃を喰らってもピンピンしてやがる、今まで大抵の相手は一撃で終わっていたのに、、
何故だ、、
「いやー、お前の強さの秘訣ってさぁ、、多分恩恵だろ?それだけ強ぇのに、自信が全くない理由ってその恩恵に頼りっきりだからじゃないのか?」
コイツは、、なんで俺が隠してることを知っている、何で俺が臆病だと見抜いた、何でだ、何で俺の一撃を喰らっても平気な顔してるんだ、、
なんで笑っていられる、怖がれよ、恐れろよ、今までの奴らみたいに、それだけで良いのに。
「ハッどうした?そんなに震えちゃってさ?怖いんだろ?なんで僕がお前の気持ちが分かるのか、、、マリーから僕の恩恵聞いてるし分かるよな?」
コイツの恩恵、、、【心色】人の心を読む恩恵、お伽噺の悪魔と同じ力、そして、悪魔と同じ黒髪黒目とか、、なんて不吉な存在だ、俺に地獄の審判でも下そうってか?
「は、ハッ一撃で仕留めても味気ねぇからな、、、試したんだよ、、よく耐えたな、褒めてやるよ、、俺はオメエを舐めてたよ、あぁ、格下と侮って悪かったな、、もう手加減しねぇから覚悟しろ?」
「なぁ、、ほんとに何で怖がってんだよ、、お前何でチンピラのボスやってんの?」
うるせぇ、、最初からやりたくてやった訳じゃねぇよ、、オメェに言われなくても分かってる。
「ま、どうせ過去に何かあったとかそんなとこ?もしくはその恩恵絡みだろ?」
恩恵、、、そう、恩恵だ、何が恩恵だよ、何が神から与えられた奇跡の力だ、ちっともありがたくねぇ、、恩恵がわかったあの日から俺は普通に生きられなくなった。
糞が、嫌な思い出を思い出しちまった、、
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ボルグ・マスラは普通の家庭に生まれた男だった、運動もそこそこ、頭のよさもそこそこ、、悪い所なんて無い普通の子供だった。
彼が少し回りと違うところと言えば、自分の恩恵に見当がつかない所ぐらいだ。
皆は自分の恩恵が何となく分かっており、才能として磨き上げているなか、彼一人だけ何の恩恵か検討もつかなかったのだ、小さい頃は自分の恩恵が分からず馬鹿にされ、コンプレックスだった。
彼は大人しく、恩恵は分からないが平穏に、静かに日々を過ごしていた、しかし、ある日事件は起きた、、
最初は些細な言い争いだった、言い合いの喧嘩で幼い彼はどうしても相手を許せず、産まれて始めて人に暴力と言うものを振るった、最初はすこしだけ相手を叩くつもりだったのだ。
しかし、始めて怒りに身を任せた彼は何時もの大人しい彼ではなかった、叩くから殴るに変わり、相手が泣いても許さず、謝っても許さず、殴った、笑いながら。
大人がその喧嘩を止めたのだがそこで不思議な事が起きた、何故か、自分に高揚感と力が溢れてくるのだ、更には殴った相手は自分の言うことを良く聞くようになったのだ
何より恐ろしかったのは人を殴るのが楽しいと思もった事、笑っていた事、それが何よりも怖かった、自分にそんな恐ろしい一面があるなんて信じたくない、それ以来彼は人に暴力を振るうことを恐れた。
ただ錯乱して一時的におかしくなったのだと、こんな自分の一面はいつか変わると思い、忘れることにした。
それでも、、恩恵が変わることはない
「《ボルグ・マスラ》君の恩恵は【恐怖の王】、人から恐れられるとお主自身を強くする恩恵だ。」
「は、はい?」
「人から恐れられると力が強くなり、恐れさせたものを服従させる恩恵だ。人に恐怖を覚えさせることに快感が生まれることもあるだろう。」
淡々と神父様から告げられたとんでもない恩恵の話、自分の手が震え、吐き気を催したことを良く覚えている、
回りの恐怖の目とその恐怖による高揚感、快感も合わさり、忘れられない1日となった。
彼は自分の恩恵を知った、自分の力を知れて嬉しい反面、不安で一杯のままベットで寝た、次の日から彼の人生は少しづつ変わってく、
最初に友人が殆どいなくなった、家族も彼を腫れ物のように扱うようになった、人を服従させる恩恵など怖がらない人はいない。
そして自分の意思や行動とは反比例するように体が大きく、丈夫に成長していく、知らぬ内に人から恐れられ、恩恵の力で強化されているのだ、一月もたてば立派な肉体が出来上がっていた。
自分が強くなればなる程、皆から恐れられているのだと思うと悲しくなる、それでも関わってくれる人はいたしなんとか普通に日々を過ごせていた、すこし不便で心を許せる相手がいないだけで不満はなかった。
だが、、決定的な事件が起きた、あれは数少ない友人と始めて酒を飲み、人生で始めて酔っぱらった時の事。
友人と二人でふらふらした足取りのまま裏路地を歩いているとチンピラに絡まれ、襲われた時の事。
身ぐるみを剥ごうと友人を殴りナイフを突き出してきたチンピラ。酔っぱらっていたこともあり、なにも考えず殴り返した、それが切っ掛けだった。
殴ると楽しくなってきたのだ、酔いも回り、とても気分が良い、そのまま恩恵に流されるまま、自分の心のままに動いた、
しばらくすると天国にいるような暖かさを感じた、ぬるま湯に入ってゆっくりしてるような感覚だ
とても気分が良い、とても気分がフワフワする、、
「や、止めろ!!ボルグ!!!それ以上は死んじまう!!止めろ!!!」
友人の声が聞こえて動きを止めた、何故か寝ていたような感覚から目が覚めた感じで頭がふらつく、自分は起きていたはずなのに
「え、、あれ?は?チンピラは、、?」
友人が自分の腰にしがみついている、すごい力で、全力なんだろうけど弱々しく感じる、、コイツこんなに力弱かったか?あれ?あの暖かいのは?どこ行った?
「もう!いいから!十分だ!ボルグ、もう殴るのは止めろ!」
「いやいや、何言ってるんだよ、、俺は殴ってなんか、、」
俺は血で顔を染めたチンピラの首を左手で掴んでいた、生暖かったのはチンピラの血だった。首を絞める力は万力のごとく、泡を吹いて気絶している上に顔の穴と言う穴から血を出してる。
「は、、ナニコレ?なんで血だらけ、、」
首を握る反対の手、、右手を見ると血がビッシリ付いていた、ポタポタと地面に垂れる程に多くの血が、地面を見ると血だまりが出来ていた、全部チンピラの血だった。
「落ち着け!ボルグ!!もう止めろ!そいうを離せ!」
「あ、、あ、ああ、あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
自分はまた人を殴った、半殺しにする程、それも楽しんで、笑いながら殴った、自分はまた罪を犯した。
その後チンピラは意識不明の重大、相手は刃物を持ってたこともあり正当防衛が認められ、彼は執行猶予となった。
その事件からより一層人から恐れられた、そしねボルグの体はさらに逞しく、強くなっていく、日を重ねる程大きく硬く強くなる。
少ない友人も居なくなり、家族もこの事件で彼を家から追い出した。
彼は一人になった、家がないので裏路地で生活していた、幸い良い感じの廃墟を見つけて、そこを寝床にしていた。
なんとかバイトをして食いつないでいたある日、チンピラが寝床にやってきて場所代を出せと言ってきた、もちろん断ったが、あまりにもしつこく、また、思わず手が出た。
そして残ったチンピラの血溜まりと血で染まった自分を見て何かが切れた、
これまで感じたこともない快感と、爽快感、誰にも止められることなく殴りきった後、不思議と罪悪感と罪の意識は無かった、もう止めてくれる人は居ないと思い、寂しさだけが残った。
暴力を振るうことに抵抗が無くなった彼は一つ学んだ、これが自分の天職だと、人を殴れば大体解決するし、気分も良い。
そこからすぐに裏社会に彼の名が轟いた、どんな組織も一人で襲撃し、恩恵の力で部下として支配下に置いた、殴れば殴るほど多くの人に恐れられ、また強くなる。
何時しか誰しも恐怖で逆らうことの出来ない、文字通りの《恐怖の王》となった
一通り暴れて誰も逆らわなくなった時、彼は我に返った。
恩恵によって暴力により高揚感に満たされ、思うがままに暴れたが、殴る相手がいなくなるとその高揚感も無くなり、心細さが残った、何より、恐れがあった。
平和な日々に自分の力が少しずつ弱まっていくのだ、皆が平和な裏社会に自分の存在を怖がらなくなった、故に恩恵による強化も弱くなる、
今さら自分が弱くなり、全てを失い、何も残らないかと思うと怖くなった。
高い服、良い部屋、うまい飯、数えるのが面倒な金の山、呼べばどこにでもいる部下、領主ですらも胡麻をする権力、誰もが頭を下げにくる名声。
誰にも負けない圧倒的な力と逆らえない恐怖
それが弱まる、何時か無くなる、そう考えると、とてつもない恐怖が襲いかかる、この恐怖を、この恐怖を他人に擦り付けなくては、誰かに恐れて貰わねば、恐怖で満たされていなければ
裏社会のトップになった彼は裏切り者や反発するものを拷問や暴力を見せしめと称して部下たちに日々見せ続けた、自分が恐ろしい存在だと、怖がれと、自分に恐怖を、この自分の恐怖を代わりに受けろと、恐ろしく怖い自分をアピールした。
そこからだ、人を殴っても高揚感が無くなったのは、今さら殴ることに恐れる自分がいた、理性は捨てた、人を殴ることの抵抗感は既に捨てたのだ、
なのに、何故、何故今さら躊躇う、一発一発殴る度に恐れが止まらない、暴力と共に生きた半生、殴ればその分強くなるが、コイツもいずれ自分の恐ろしさを忘れる、そうしたらまた、次の見せしめを、
そんな繰り返しの日々を送っていた、恩恵による高揚感はなく、人を殴る気色悪さを日々思い知る、血が汚い、生暖かい、臭い、でも、人を殴ることが怖い、その事をバレては行けない、ちっとも怖くない臆病者だと思われてはならない
自分にはこの恩恵しかないのだ、何で今さら思いどおりに働いてくれないんだ、この恩恵だけが自分の価値なのに、、これがなければ自分には何もない
そんな時に一人の女が現れた、そう、マリーだ、彼女はボルグの癒しでありーーー
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はい、この話はここで終わりだ、僕がこれ以上は不要だとデミコお姉さんにお願いした。
ボルグ・マスラと言う男の事は大体分かった、どうせこの後マリーとのイチャイチャの自慢話が待ってるんでしょ?そんなの聞きたくないやい!
デミコお姉さんは最後まで言いたいらしいけど興味ないからお断りした、僕はリスタル嫌なことは嫌とはっきり言う男ッ!
アイツのあの強さの秘密は分かったし、回りのチンピラにバラして弱体化させても良いけど、、
後で言い訳されてもつまらないし、真向勝負だ。
正面からボッコボコにしてやる、普通なら勝てるわけない、当たり前だ、筋肉の塊のような相手と回りよりもちょっとだけ筋肉があるだけの僕では勝負になら無い、しかし、今はまともに殴り合えてる。
理由は僕が寝ている間に飲まされたらしい魔法の回復薬だ、あの大怪我を1日足らずで直す回復効果ははそれはそれは強力でなんと今も尚、回復効果が続いているのだ!
カラクリとしてはダメージ食らっても直ぐに回復!疲れ知らずの無敵状態!って訳。
ありがたいことに一発ならボルグのパンチを耐えられる、その後すこしすれば全回復、殴られ回復、殴られ全回復!よしもっと殴り合おうか!を繰り返しているのだ
「あはは!どうしたぁ?自分の恩恵が効かなくて不思議か!?パンチが軽いよぉ!?」
「くっそ!どうなってやがる!ふざけるなよ!」
回りのチンピラたちも様子がおかしいことに気が付き始めた、今まで勝負が長引いたことがあってもボスの方が追い詰められているような、無敗の男が真っ向勝負で負けそうな状況に戸惑いを隠せない
誰もが勝負を固唾を飲んで目を離さない、これからとんでもない大逆転勝利があるかもしれない、無敵の男が負けるかもしれない、、そう期待を込めて
しかし、そんな場所でも空気を読まない、この空気に似合わない会話があった。
「あの汚客様、よくもまぁ、あそこまで調子に乗れますよね、、ドーピングしておいて真向勝負と言い張るとか、、煽りまくるし、嘘ばっかりだし、プライドは、、元々無いか、残飯食う男ですし。」
「アタシも勝機はあるとは言ったけども、、本当に実行するなんて正気じゃないわね、、痛いものは痛いハズなのに、、我慢できる男の子って格好いいけども心配だわぁお姉さん。」
唯一あの色々頭がおかしい男の無敵のカラクリを知っている人物らは知っているがゆえに軽蔑の目を向ける事を止めない、本人はちっとも気にしてないが。
「ゼィッ!!」
「ッラァ!!」
お互いの腕が交差し、顔面を貫く、何度も殴られて衝撃に慣れてきた、とは言えとても痛いけどね、僕の方は、よろめいたのに向こうは横を向くだけに終わってる、何てタフさだ。
「しねぇッ!」
「ふんぬぁ!」
力を込めた拳を大振りするボルグ、僕はそれを屈んでギリギリ回避し、がら空きの胴体に突進するように体重をかけた左拳の一撃を放つ。
ボルグは不利な体制で攻撃を受けたので後ろに倒れ尻餅を着くが直ぐに座ったまま腹に蹴りをカウンターでぶちこんできた
その衝撃で僕は吹き飛び、間合いが切れて仕切り直し、ボルグは立ち上がり、僕は痛む腹を押さえ呼吸を整える。
「は、はぁ、中々やるじゃねぇかよ、、最初から挑んできたら、俺様の部下にしてやったのによ、、残念だぜ。」
「はっ!誰が汗臭い筋肉男の下で働くか!美女の元なら大歓迎!胸が大きいなら尚更!」
「はっ、自分に正直な所は嫌いじゃぁねぇがお前友達いねぇだろ。」
「あれれ?それってお互い様じゃ?部下はいても友達いないよね?僕は嫌われものだけどちゃんと三人ぐらいいるよ?君はぁ?そんなに人に囲まれてても孤独ってどんな気持ちぃ?」
「はっ、友達が少なくても女がいるからな、寂しくねぇさ。」
「二股って分かって動揺たくせにぃ?拷問して僕の事あれこれ話させて良く言うよ!やーい!やーい!間男ぉ!!」
「オメェ、二股で動揺したって自分にも当てはまるって分かってんのか?オメェの方が動揺してただろが。」
僕はリスタル、僕は浮気だと分かってていても付き合った、勇気ある男、ボルグは違う、何も知らずに騙された馬鹿だ、マリーはお前とはお遊びなんだよぉ!僕?なんか、、その、、純愛的な浮気?
例え恋人の炎がボルグと僕が同じくらいの色と大きさだったとしても!僕の方が色鮮やかだった!たぶん!きっと!そうだったら良いな!
僕らは再び殴り合いを再開する、もう一時間はこうしてる、鼻血はとっくに止まった、その代わりに血反吐をお互い吐いてる。服にはあちこち血がついて黒い染みになっていた。
「ボスが、、倒せない相手なんているのかよ、、」
「あいつ、、なんでボスの攻撃受けてまだピンピンしてるんだよ、、化物かよ、、」
「そういえば拷問の時も平気で耐えきってたな、、こえぇぇぇ、、」
「めっちゃ笑顔だし気色悪りぃ、、頭のネジ外れてんのか、、アイツ、、、」
長い戦いにようやく声を出し始めたチンピラたちの声が良く聞こえる、そして焦るボルグの心も良く見える、さっきからパンチの威力がどんどん下がってるし、心なしかその巨体もすこし縮んでいる、よくよく見ると服がすこし緩くなっている。
ふふふ、回りの恐怖が僕に向き始めたのだ、チンピラとボルグの間には黒い恐怖の関係性があるがその炎が僕に向き始めている、、良い傾向だ
ここにはおそらくボルグの部下の殆ど、、もしくはより多くの恐怖心を持っている人が多いのだろう、すこし僕の方が怖いかも?と思わせればどんどんアイツは弱体化する、、
「悪いけどねえ!情報戦ではこっちに分がありまくりなんだよねえぇ!!ほら!僕の強さの秘訣見破らないと負けるよぉ!!ほら!ほぉーらぁ!!」
「チッ!いちいち、うるせぇんだよ!静かに決闘できねぇのかよ!オメェはよ!!」
「隙アリィ!!」
隙を見せたボルグに対して脇腹を狙った横蹴りを繰り出すがあっさり靴を掴まれ、そのまま顔面を殴られるが、靴を脱いで拘束から抜け出し顎に向かって頭突きする
「グッ、、いってぇなぁぁぁぁ???」
どうやら舌を噛んだらしく口から血が出ているボルグ、
血が混ざったつばを吐いている間に僕は落ちた靴を履き直す。
「「オ"ラァァ!!」」
一拍置いた後のお互いの全力フック、綺麗にお互いの頬に当たりお互いに吹き飛ぶ、今までボルグは微動だにしなかったのに、、だ。
どうやらかなり弱くなっているらしい、焦りの感情が湧き出てきている、実を言うと僕の方も回復の速度が遅くなってきていて頬がジンジン痛い、お互いに早く決着を着けたいところだね
お互いに息を整え満身創痍と言ったようにフラフラと立っている、多分後2.3発受けたら立てないかもね、、今のパンチは中々良いところに入った。
そこに興奮した人物のやじが飛ぶ。
「ねぇねぇ!ミルディちゃん!とっても熱い勝負よ!お互い一進後退の良い勝負しててお姉さん高ぶって来ちゃったわぁ!にしてもボルグちゃんって良い筋肉してるわよねぇ、、ホント、、」
ジュルリ、艶かしい液体の音がボルグの耳に届いたのか青ざめて戦慄している、恐怖の余り身震いし、プルプルしてる。
「あ、そろそろ終わりそうですか?まだ続けていても良いですよ?まだ縫い物が終わってなくて、、」
いつの間にか現れていたテーブルにお茶とクッキーが置かれていて優雅なティータイムをしているデミコお姉さん、そして椅子に座って編み物をしているミルディさん、、、、
その机と椅子どこから出したんだよ、
何時の間に出したんだよ、
なんでお茶から湯気が?
いつお湯を沸かしたんだよ。
何で編み物してるんだよ手捌き良いなオイ
「あぁ、、そう言うことか、、オメェあのおとぎ話のオッサ、、、ネェーチャンから俺の情報でも聞いたか?やけに俺の攻撃に耐えるのも情報のお陰か?」
ボルグがデミコお姉さん達を見て納得が行った顔をしている、大正解だけど遅すぎたね?もう手遅れさ!フハハハ!
「あれれ?ようやく気付いた?こんなことに気付けけないならトップ向いてないよ?止めたらどお?」
「ハッ!テメェは煽ってばっかだな?時間稼ぎが目的なんだろ?最初から分かってるさ。」
「、、、、」
まさかバレてたとは、感情は読めても考えは読めないからこの恩恵は使いづらい、考えてることも分かれば相手の行動を先読みして一度も殴られることなく勝利!とかできそうなのに、、
「知ってたのなら時間稼ぎに付き合わなくても良いじゃん、どうせ今気付いたでしょ?」
「いやぁ、、女をかけた勝負だからな?正々堂々と勝つのさ、オメェはその勝ち方で満足できるなら構わねえけどよ、」
「うん!満足だよ!そしてお前にマリーは釣り合わねぇ!他に相応しい人がいるからねぇ!」
「良い性格してるなぁ、、馬鹿で羨ましいぜ、、」
「ば、馬鹿リスタル、ホントに戻ってきてるの?」
そこに現れたのは、血塗れになってるマリーだ、ひどい怪我で足を引きずっている、目も腫れていて前までの美人はどこへやら、服もボロボロだ、、、
「チッ!テメェラ!!誰一人としてマリーを見てなかったのかぁ!?あ"ぁん!?」
回りのチンピラに怒号を飛ばすも誰一人として怯えない、別の人物がそれ以上に恐ろしく、それ以上に怒っていたからだ。
「おい、リスタル・ヴォルグさっさとその糞男を殺せ。」
ミルディさんである、相変わらずこの人の地雷がわかんねぇなぁ、、今のところミルディさんが激おこになったのは、、
尊敬するデミコお姉さんを馬鹿にする事
極度の男嫌いな本人に無断で触る、
女の子をボコボコにする、、あれ?意外とまともな理由で怒ってる?
彼女の怒気は回りのチンピラを萎縮させ、誰も動けない、不意打ちでもボスを打ち倒した女と言うこともあり、目が離せないし、恐怖で動かない
「あれ?僕に譲ってくれるんですか?そのまま怒りに任せてボルグをぶっ飛ばしても良いんですよ?」
「好きな女の前で無駄にカッコつけるのが男でしょう?汚客様?ゴミでもそれぐらいなさい、性欲の塊の癖にカッコつける事も出来ないなら生きる価値無いから死になさい。」
「へいへい、ツンデレツンデレ、お優しいお気遣い感謝しますよ、、」
「フンッ、、あのネーチャンがこねぇならオメェなんざ楽勝だな?」
「アハハ!今のところ五分五分なのに威勢が良いねぇ!マリーをボコボコにしてるのを知って僕が怒り狂わないとでも!?テメェ!これ以上無いほど屈辱的にブッ殺してやる!!!」
「笑いながらキレんなよ、見てて気持ち悪い。」
マリーは力の限り歩いてきたのだろう、僕らの姿を見ると座り込み、肩で息をしている、よっぽど痛い目にあったのだろう、体のどこかが痛むのか時々呻いている。
「ハッ、裏切り者には制裁を、、裏社会じゃ常識だぜ?オメェも裏社会のルールで消してやるよ!さっさと落ちろや!リスタルゥゥ!!」
良く言うよ、心の中は後悔と後ろめたさ満載だ、どうせここでマリーを徹底的に殴らないと回りから舐められるとでも思ったんだろう、それとも、マリーに恐怖心抱いて貰って支配下にでも置きたかったのか?
くだらない、、実にくだらない!!
「これで終わりだぁぁ!!!このクソヤロォ!!!一回死んでおけぇぇぇ!」
「オメェなんかに、負けるかよぉぉぉお!!」
お互いに走り、最後の渾身の一撃を放とうと腕を振りかぶる、
「「オラァァァァァァァァ!!」」
見事なクロスパンチ、お互いに頬に今日一番の威力を込めた拳がぶつかる、衝撃波が回りに届き、静寂が訪れる、数秒、お互いの頬に拳をめり込ませていただろうか、、
ボルグがゆっくりと倒れた。
「、、、、、、」
「ふ、ふふ、ぼ、僕の勝ち、、」
身長が相手より低くてよかった、綺麗に顎に入ったもの、気絶するさ、そりゃ。さっきの頭突きも効いていたのだろう、見事に白目を向いている
「う、嘘だろ!!ボスが負けた!」
「うーわ!あのやろう!負けたぞ!これで二回目だ!」
「あの頭のおかしいやつ強よっ!アイツら化物かよ!」
回りのチンピラ達は好き勝手ボルグのことを馬鹿にしているが、あの無限にも思える回復速度がなければ二撃でノックアウトだろう、、ま!勝ったのは僕だけど!
「ハッハッハァー!!僕の勝ちだぁ!喧嘩も!男らしさも!恋人としても!圧勝!完・全・勝・利!」
「こ、恋人としてはの部分には異論があるわ、、」
「あ!マリー怪我大丈夫!?!?今すぐにお医者さん呼んでくるね!待ってて!!」
瀕死の姿でも僕にツッコミは忘れないマリー、すこしは余裕があるのか呆れたような笑顔を見せる、僕を心配してくれている、本心だと分かるからなんか、嬉しい
「あ、リスタルちゃ~ん、そんな貴方にオススメの一品があるわよん♪バーラプラス特性回復ポォーションよぉん♪ それも便利な塗るタイプ!」
「買います、お代はツケで」
「はいは~い、まいどぉ♪」
僕はデミコお姉さんがカバンから取り出したガラスの瓶を奪うように受け取り、マリーの傷口にゆっくりと塗っていく
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教えて!デミコさん!
【薬事情】
医療薬品には色々種類があるけども大まかな呼び方として
・速効性はないものの効果が良くて飲んで使うもので薬草などで作られたお薬を《薬品》と呼ぶの
・速効性があるけど効果は薄めな魔法で作られたお薬を《ポォーション》と呼ぶのよん♪
ち・な・み・にぃ~?
世界最高のお薬は《万能回復薬》と呼ぶの、魔力の純度が高く、世界でも最高の薬草を材料とした難病でも一滴飲むだけで直る、1万倍に薄めてもそこらのお薬よりもよっぽど効果があるとんでもない化物回復薬よ!
もっと詳しいお話はまた今度♪
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身体のあちこちに塗るとみるみる内に出血は止まり、傷口がかさぶたとなり、直ぐに元通りのきれいな肌になる。
目に塗ると腫れが引いていき、元通りだ、こんな速効性があるポーション初めて見た、、やばぁ、絶対高いじゃん、、
ま、借金がすこし増えても変わらないし問題ないかな?
「ねぇ、なんで戻ってきたの?もう恋人じゃないのよ、、それに、危ないし、回りの部下はどうするの、そんな満身創痍じゃ逃げれないわよ、、」
マリーは痛みが引いてすこしは元気になったのか疑問だったことを聞いてきた、心は期待の炎だ、何を期待してるかなんて分かってるとも。
「君が好きだから戻った、約束してるの忘れた??君を守るってさ?あとは、、、あの臆病筋肉馬鹿を殴りたかった、それだけ。」
「ふふっ、何時もふざけてるように見えるけど全部本心だと知ってるからこんな時もハッキリ言われると照れるわね、、」
「え、惚れ直した?復縁する?ばっちこい、婚約届けは、、ないや、川で流されたな、、」
そんな、甘々な空間を作り出していると、不埒な輩が僕らの回りを囲んでいた
「おいおい、おーーい?こんなことして無事で帰れるとでも?あの役立たずボスはくたばったし、いい加減俺の時代だよな?」
なんかチンピラの代表的なやつが出てきた、空気読めよ、デミコお姉さんも、空気読んで下がってくれてたにさぁ、、
「俺はこの裏組織裏のボスとでも言える、男【エモツ・ーーー
「あ、これ以上登場人物要らないのでゴミとして消えてください。」
もっと空気読めないメイドがその裏ボス?的な存在をデッキブラシで空の彼方へ吹き飛ばしていた、回りのチンピラも口を唖然として開け、吹き飛んでいる男をボーっと眺めていた。
遠くで何か生々しいものが落ちる音がした
「いい加減我慢の限界です、店長、女を殴る糞どもの組織をブッ潰しても良いですか?」
「やっちゃいなさい!ミルディちゃん!大将はリスタルちゃんがやってくれたから後のごみ処理よろしくねん!」
「ハイッ!店長!私がリスタルの部下みたいな言い方で少し嫌ですが店長の思うがままに!!」
それは、今まで見たミルディさんの中で1番良い笑顔だった。可愛いと思った僕はおかしいのだろうか
チンピラの悲鳴とチンピラがあちこちに落ちる音とデッキブラシが人を殴る音が木霊した。
これ、全部最初からミルディさんに頼めばよかったのかな、、、、?
僕は近くに落ちてきたチンピラを眺めてそう思ったのだった。
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「う、あう?」
なんだ?俺様はいったい、、
ああ、あのムカつくリスタルと一騎討ちして、、その後?そうか、、俺は負けたのか、、、
にしてもなんだぁ?この頭の感触、、やわらけぇな、、それに少し頭の位置が高いような?身体は硬い地面だ、、けど頭だけ何故か柔らかい、意味わからねぇ、
目を開けると目の前には山のように積まれた部下達がいた、その衝撃的な光景にすぐさま目が覚める
全員一撃で気絶させられたのか外傷は少ない、が悲惨な状況なのは間違いない、あの後メイドのねーチャンが暴れたのだろう、、
だがいくらなんでもこんな扱いはあんまりだろ、まるで粗大ゴミみたいに積みやがってちょっと可哀想じゃねぇか、、
「にしても、やわらけぇな、こんな枕あったか?」
「あん♡動いちゃ嫌よ、くすぐったいじゃない♪」
ボルグの動きが止まった、その顔は一瞬で青ざめ、冷や汗を流し、ゆっくりと顔が動く、まるで油を指していない扉のようにギギギと。
「元気で何よりよん♪おはよーボルグちゃん♪」
「うおわぁぁぁぁぁぁあ!?!????」
ボルグはデミコお姉さんに膝枕されていた、しかもデミコお姉さんが覗き込むように顔を近づけていたので僕よりも恐怖を覚えただろう、その心は綺麗な青色だった、恐怖しかない。
「お、起きたかボルグ、、随分とお早めのお目覚めだね?」
対してこちらは天国だ、僕も立っているのがやっとなので横になって休んでいた、マリーの膝枕でね
そう!マリーの!!アイツはあの化物の膝枕さ!フハハハ!勝った!モッチモチでサイコォ!僕と同じトラウマを抱えると良いさ!フハハハ!
「ねぇ、私も一応重傷者だからそこのメイドさん代わってくれないかしら?なんかリスタルが気持ち悪いことを考えてる気がするの、、、」
「例え店長の頼みでも断わります、天地が引っくり返って地獄が現れても代わりません。」
「アハハ、二人とも失礼だなぁ、うん、失礼だね」
「考えてないことを否定しない時点で本心見え見えですよ?正直に生きるのは良いとして相手が不快になる本心は隠してください?汚客様?」
すこし検討しておきます、前向きに善処します。そう心で誓ったらますますミルディさんの冷たい目がより一層冷たくなる、なんでこうナチュラルに僕の心読めるの?
「そ、それより!!こりゃ一体なんだよ!!」
僕らのイチャイチャを邪魔するお邪魔虫がひとり、デミコお姉さんに怒りのアイアンクローを食らって痛みに呻いている男だ
「なぁ~んで叫んだのか説明して貰えるかしら?アタシを見てなんで叫んだのぉ?」
「グッ、、何て力だ、全然動かねぇ、、いや?違う俺様の身体が、、小さくなってる???」
そう、ボルグは今ちっこくなってた、恩恵【恐怖の王】の効果が切れたのだ、ここにいるチンピラどもが皆ボルグを恐れなくなったからだ。
理由はボルグが僕に負けたことや色々あるんだろうけど、、、、まぁ、多分大半はミルディさんのせいだよねぇ、、、、あんなに可愛い笑顔で殴られ、瀕死にさせられてトラウマ確定だろう、何人か起きてるけど恐怖で動けないっぽいし。
「ハッ、、、文字通り全滅か、、で?どうするよ?《ハチノス》潰して満足か?この後俺を衛兵にでも付き出すか?」
「いや?どうでも良い。僕はマリーを家に帰すだけだから。」
「ハッ、、、、女1人に潰されるなんて情けねぇ話だなぁ!オイ!?しかも俺の全てを壊しやがって、、力も立場も女も奪いやがって、、トドメは刺さねぇとか悪魔かオメェはよ、、」
「この黒髪黒目を見てから言って欲しいよね、悪魔でもなんでも良いさ、僕は僕だ世界一正直者のね!精々悔しがって枕を涙で濡らせ!
独りぼっちでなぁ!?散々僕を拷問したんだ!やり返さなくちゃ気が済まないよねぇぇ??
ねぇ!今どんな気持ち!?ボコボコに苛めてた弱い相手に逆転されて全て奪われる気持ちッ!!」
「コイツッ、、」
「ほらほらぁ!部下もない!立場もない!力もない!彼女もいない!オマエはデミコお姉さんの膝枕!僕はモッチモチ柔らかい最高級マリーの膝枕♪悲惨だねぇ!とぉぉぉっても!!今後の人生で何度も思い出してね!トラウマとして一生引きずりやがれ!バーーーーーカ!!!」
「リスタルちゃんも満身創痍なのに良くそこまで煽れるわね、ギリギリも良いところよ?それにズルして勝ったくせに威勢が良すぎよぉ?正直なところは嫌いじゃないけどねん♪あと、後でお仕置きね。」
アイアンクローを止めて、気が済んだデミコお姉さんはボルグの頭を放り投げゴンッと硬い音がなり地面と熱いキスをした。
ザマァ!
ヘッヘッヘっとボルグを笑っていたら僕も頭を持ち上げられぶん投げられた、それもかなり強い力で
ガンッと鈍い音が鳴り、叩き付けるように僕も硬い地面と顔から熱いキスをした。
「折角見直してたのに!!やっぱり本質変わってないじゃない!!私の事恋人だからとか大切な存在だからじゃなくても助けに来てくれたと思って嬉しかったのに!!結局身体目当て!?なによ!モッチモチの膝枕って!!」
そこには、怒り狂う少女がいた、顔を真っ赤にして今更膝枕をしていたことに照れていたらしい、なんてピュアなんだ、、膝枕でこんなに照れるならそれ以上のことしたら一体どうなる?今の流れならキスぐらいならッ!!
そう思い身体を起こそうと力を込めたら頭の上から何か降ってきてまた硬い地面と熱いキス。
「気持ちわリィンだよ!この汚客がよぉ!あの時のトラウマを思い出しましたよ!ゾッとしますからほんと気絶しててください!キモいッ!」
どうやらミルディさんが僕の頭を踏みつけてるらしい、それも恩恵も使ってるのかギリギリと地面とディープキスし始めた、鼻が押し潰されて痛い、い、息も出来ないっ、マジで気絶するってぇ!!
何で僕の考えがこうも読まれるのぉぉ!?おかしい!
「ブハハハハ!ざまぁねぇなぁ!そんなに人を馬鹿にしてるから天罰来るんだよ!阿保が!マヌケ!そのまま外れた頭のネジ押し込んで貰え!!」
夕日に染まる廃墟地に悲鳴と笑い声、そして血生臭い匂いだけが広場に残った。
後日、ここいら一帯を支配していた《ハチノス》が何者かの襲撃を受け組織が解散されたとの情報が響いた、それと1人の悪魔であり悪い意味で有名すぎる借金王が町から姿を消したこともすこしニュースになった。
町は歓声で溢れたそうな、二つのめでたいニュースによって。
次は後日談と一章最終回にするつもりです。