2 初めての補食と初めての脱皮。
ジメジメとした枯れ葉かの下で、お腹が空いてたことに気が付いた彼は、食べ物の匂い・・・食べられる虫の臭いが近いことに気が付きました。
それは、とてもとても小さなダニでした。
枯れ葉に付いてる、とてもとても小さな蟲を食べて暮らしてるダニは、彼にでも簡単に食べることができる蟲なのでした。
しかも、それらはそこらじゅうに沢山居るのが分かりましたから、彼は暫くは食べるのに困らないだろうと思いました。
「では、さっそく!」
そう思って、まだ小さな彼は、ダニに噛り付きました。
彼に噛まれたダニは、彼から逃れようと一生懸命に脚を使って枯れ葉の裏にしがみつきましたが、彼に噛まれた所から身体の中に入れられた毒が廻ってくると、力が抜けてしまいました。
そうして、自分の身体がバリバリと食べられる音を聞きながら、ダニは何も分からなくなってしまいました。
「こいつは・・・甘くて・・・バリバリとして・・・美味しいな!」
彼は、産まれて初めて食べたダニの味と食感に嬉しくなりました。
「こんな美味しいのが、そこらじゅうに居るなんて・・・ここは何て良い場所なのだろう!」
そう思いながら、ダニを殻まで食べてた彼は、目の前から遠ざかろうとしてる別のダニの尻をジッと見詰めて居ました・・・。
それから彼は、枯れ葉から枯れ葉かを渡り歩いて、なん十匹ものダニを食べました。
何度もお腹が一杯になっては休み、またダニを食べるのを繰り返してました。
「ダニは、なんど食べても美味しいなぁ・・・こんな美味しいのが、そこらじゅうに勝手に生きてるなんて、産まれて良かったなぁ・・・。」
彼はなんど食べても食べ飽きないダニに満足してました。
そんな日々が続いた8月のある日の夕方。
「でもなんだろう・・・?最近・・・身体がむず痒い感じがするし・・・なんか・・・前よりも身体の感覚が良くないな・・・。」
彼は、身体の異変に困っていました。
自分の身体の感覚が鈍くて、思うように動けなくなってきたのです。
「ダニも、前よりも美味しくないし・・・身体が変だし・・・どこか安全な所を探して、そこで休もう・・・。」
彼はそう思って、他の虫が来なそうな場所を探しました。
そして、多分、ここなら安心だろうと思える物陰を見つけました。
それは、それまで感じた事のない足触りで、垂直で平坦な所の上にある、少し飛び出した角の下でした。
それは人の住む家の外の基礎と外壁の間の段差の下でした。
下地がコンクリートで食べる物は無いので、滅多に他の虫も来なさそうでした。
彼は自分よりも大きくて強い虫に襲われる心配が少なそうだと思ったのです。
「ああ・・・もう、動きたくない・・・。」
彼はそう思って、段差の下に上下反対になってしがみ付きながら、体を固定させました。
そうすることで、もう力は殆ど要りません。
力を入れなくても、足先の爪がコンクリートを引っ掛けて、背中を地面に向けたまま体を固定しててくれるからです。
「ああ・・・楽だ・・・もう、しばらくは動けない・・・。」
それからどれ程の時間が経ったのでしょうか・・・。
辺りは暗くなってましたが、遠くにある街灯の光が、辺りをうっすらと照らしてました・・・。
「ああ・・・なんだ?・・・さっきまであった外の感覚が無くなってる・・・?」
彼は、体の外の感覚が無くなっていくのと入れ換えに、その内側に新たな感覚があることに気が付きました。
「なんだ・・・これは・・・なんか・・・こう・・・引っこ抜いて・・・触覚を・・・体を・・・脚を・・・引っこ抜いて・・・!?」
彼は、重力を使って海老反りになりました。
しかしそこには、まだ壁の段差に掴まったままの体を残してました。
「なんだ!?体の中から体が出てしまった!!」
彼は脱皮したのです。
「うはぁー!なにこれ!?・・・前よりも感覚が良くなってて、超気持ちいい!」
下に落ちないようにと、横の壁に脚を伸ばすと、なんと脚が増えてました!
それに、体の長さも少し増えてて、脱皮する前よりも、体の節をもっと自在にくねらせて動けるのを感じました。
「体が長くなって、脚も10本に増えるなんて、凄いぞ僕は!なんて凄い体に産まれたんだろう!ありがとう神様!!僕をこの世界の住み良い場所に産み落としてくれて!!」
彼はこれからも、ダニを食べて食べて食べまくって、どんどん脚を増やしていこうと思いました。
つづく




