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3話 噂


 次の日、教室にはいつも通り多くの友人に囲まれて楽しそうに笑っている西条さんがいた。

 教室の前で昨日、6階の空き教室から飛び降りて死んだ筈の西条さんが生きている現実に受け止められずに呆然としていると西条さんがボクの存在に気付いて近づいてきた。

 

 「おはよ大杉くん。 昨日の約束は覚えているかな?」


 昨日の約束?

 それはまさかボクが西条さんに告白するとかいう無理難題のことでしょうか?


 「うん。 覚えているようでよろしい! それじゃあ、また後でね」


 まだ何も言っていないはずだが、彼女はなにもかもを理解したように再び友人達の渦中へと戻って行った。


 ――昼休み。

 ボクは約束通りに空き教室へ足を向けた・・・訳ではなく、人混みの多い食堂へ来ていた。

 一体何が起きているのか全く理解できないが、とても面倒事に巻き込まれそうな匂いがプンプンしている。

 西条さんはクラスだけでなく学校全体の憧れとも呼ばれる美少女JK。

 動画配信などの活動も行っているらしく登録者も50万人以上いるとか。

 そんな彼女と2人でいるだけでもあらゆる人達から敵意の視線を向けられるのに、死んだ筈の人間が死んでいない事になる『死に戻り』能力?

 信じたくない。

 ボクはアニメや漫画の世界観は大好きだが、それはあくまでも観測する側の立場にあるから面白おかしくみられるのであって実際の現地人になるつもりは毛頭ない!


 「ここの相席いいかしら?」

 「え? あぁ、どうぞど、う・・ぞ?」


 見上げた先には満面の笑みのまま真っ黒なオーラを放ってボクを見る西条さんの姿があった。

 美人は怒ると怖いのは真実らしい。


 「なぁ~んで昨日の約束の場所に来てくれなかったのかしら~? 大杉くん~?」

 「あいやそのえっと、一体なんのことかボクにはさっぱりと言いますかその・・・」


 西条さんがボクの前に座った瞬間、周囲の生徒達の視線がボクに集まる。

 それは興味本位や疑問と言った視線も疎らにあるが、ほとんどの視線は明らかに敵意のモノだ。

 美人で可愛く人気のある彼女が、どうして見るからに陰キャで友人も少ないボクなんかと2人で昼飯を食べているのか。

 そんな多くの視線が集まってくる。


 「ねぇ、ちょっと聞いている?」


 そんな事など微塵も気にしない陽キャ代表の美人女子は顔を至近距離まで近づけて無理矢理ボクと視線を合わせに来た。

 体重をテーブルに乗せて前倒しになっているせいで豊満な胸元が視えそうである。


 「いやちょっ! 聞いてます! ちゃんと聞いてますよ!!」

 「じゃあどうして昨日の約束した教室で私に告白しに来ないのよ! 私、待ってたのに!」


 この西条さんのセリフに、周囲の生徒達は聞き逃さなかった。

 噂は食堂全体に一瞬で広まり、多くの生徒達が一斉にスマホでSNSに投稿しているのが視界に入る。


 「ちょっと西条さん外にでましょう!」

 「え? なんで?」

 「いいからほら!」


 こうして、西条さんがボクの告白待ちをしているという噂は昼休憩が終わった頃には学校全体の8割の生徒が把握している事態となっていた。

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