2話 告白
――昼休み。
今日は朝から雨が降っていて外のテラスは使用できない。
だからと言って食堂は人も多く教室も目立つ為NG。
そういう事で選ばれたのは何年も物置部屋として教員さえからも忘れ去られた空き教室で、ボクと西条さんは昼飯を食べていた。
何故、空き教室の鍵を持っているかと尋ねたが「秘密」とだけ言って教えてもらえず、それから何事もないように弁当を開けて食べ始めた。
それからお互いに一言も会話をする事もせずに昼飯も食べ終え、空き教室とは言え稼働している時計の針音と雨にうたれる窓が響き渡る。
「・・・あの、西条さん。 ボクに何かよう・・かな?」
流石に女の子と2人っきりでの沈黙は居心地が悪く、勇気を振り絞って声をかけてみた。
「・・・」
結果、無視である。
女子とまともに会話をする事もないボクにとっては、無視された事実はあまりにも心が痛い。
もう涙目です。
「昨日のことなんだけど」
すると突然、西条さんの重い口が開いた。
「キミ、何か覚えてる?」
この質問の意図としてはすぐに理解できた。
それは昨日の放課後、彼女はトラックに轢かれて死んだ。
なのに今日、西条さんは何事もなかったかのように登校してきた。
しかも周囲の生徒や先生達も、まるで西条さんが死んだ事実など無かった事のように通常通りに過ごしている。
「・・うん。 西条さんがトラックに轢かれた事、覚えてるよ」
「やっぱり・・」
「あの、一体何が起きてるんですか? 確かに昨日西条さんはトラックに轢かれました。 なのになんで皆は何事もなかったかのように西条さんが生きてる事実を受け止めているんですか?」
「そうね。 単刀直入に言うと、キミと私がいる今は私がトラックに轢かれる直前まで戻った世界。 そしてキミが覚えている現実は私がトラックに轢かれて死亡した世界、って言えば分かるかしら」
いや分からん。
急にSFアニメの難しい設定説明をされているのかと思ったわ。
理解できていない事を察してくれたのか、西条さんはしばらく深く考え込み閃いた。
「つまり、私には神様から譲渡された『死に戻り』と呼ばれる能力があって、死んだとしてもその日の朝に巻き戻されるってわけ。 オーケー?」
答えはノーである。
そんな「常識でしょ?」みたいな説明をされて信じろと言う方が無理。
「う~ん。 この説明もダメか・・・よし!」
そうして西条さんは再び何かを思いついたのか、窓の前に重ねられた椅子と机を昇り窓を開けた。
「それじゃあまたこの時間にこの空き教室に来て。 そしたらキミが私に告白する事。 オーケー?」
「いや全然オーケーじゃないよ! 一体どういう意―――」
そして彼女はボクの返事を聞く前に、まるで少し出かけるだけのような朗らかな表情で、窓から外に飛び降りた。