第二十三話「先住者」.2
この大地は、地球のどこかに似ているだろうかと思いを巡らせた。
ガラパゴス諸島のような、独自の生態系。密閉された空間ゆえか、亜熱帯の沖縄のような空気感がある。だが生息している獣はアフリカからアメリカまで多岐にわたる生物たちを思わせた。
「テフノ様! 急いで急いで! 追ってきます!」
「ハダン! どっちから来るか指示を出してくれ。何とか避けるから!」
ただし、恐竜は除く。
「右から来てます!」
「どぅぉりゃぁぁ!」
砂利や岩でできた地面をオフロードタイヤが蹴り飛ばす。右に曲がろうと重心を傾けると、勢い余って片輪走行になってしまうほどに道は悪い。
頭を左右に振って迫りくるティラノサウルスは、大顎を開いて牙を突き立てる。
「なんだよあれ! 怪獣って恐竜も含んでんのかよ!」
「キョーリューとやらは知らぬが、あれも怪獣であるのは間違いあるまい! 見た目からしてドラゴンに連なるものであろう!」
どうやら、この世界では恐竜というのは余り知られていないものらしい。確かにドラゴンが噂話だとしても現実に存在する世界で、地上を歩くだけの恐竜なんて普通の動物と変わらない。
そもそも、化石を発掘するという行為がなければ、地球でも恐竜が知られることなどなかった。
きっと探せば、トリケラトプスだの、ステゴサウルスだの、男の子の夢がこの地には転がっていることだろう。
「だからと言って初手ティラノは運が悪すぎるだろうが!」
「追いつかれます!」
ハダンの声に合わせ、俺は急ブレーキと同時にタイヤを滑らせる。突然の方向転換にティラノサウルスの頭は付いてこない。鱗に囲まれた鋭い眼差しを横目にすれ違う。
しかし、逃れられたわけではない。頭とバランスを取るために使われる尻尾が、鞭のように振るわれる。
「でぇっ!」
装甲車の機動力でも、回避しきれない。もっとも、これがバイクだろうとバギーだろうと、車輪の付いたものである以上は避けられなかった。ゴロゴロと転がっていく車体。運よく通常状態に戻る。
だが、俺は天井から外に出ていたハダンの姿がないことに気づいた。
「ハダン!」
「イタタタ……くぅ……」
俊足が自慢のリスボンだが、あまり肉体強度が高いと言うわけではない。むしろ余計な重さを付けないためにも、全体的にもろいと言っていい。
「くそぉ、間に合え!」
倒れたハダンに向けて、ティラノサウルスの顎が迫る。
先ほどの衝撃が車体に響いているのか、うまく加速できない。ハダンも足を怪我したのか、車体で潰しておらず良かったと思う反面、守り切れなかった罪悪感が沸き上がる。
地面に魔子を流し込んで防壁を展開しようとするが、それも間に合わない。
「ハダン!!」
突然、俺たち全員を包み込むような巨大な影が現れた。
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