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第二十二話「広がる世界」.1



 風穴まで到達するのはもう三度目だ。

 なれたもので、目新しいものもない。ニアは楽しんでおり、レコネも珍しい状況に興奮を隠しきれていない。


「よし、到着した」

「ねぇレコ姉! なんかきらきらしてんね、ここ」

「うん。まさか、樹海の地下がこんな風になっているなんて」


 普通の樹海で生きていて、地下空洞に降りることはない。しかし、三度目はさすがに飽きるだろう。風穴に辿り着くと、いったん車体を水平状態に戻した。

 もう一度周囲にレーダーを放出、地下空間の魔子を観測する。高濃度の魔子が、地下のずっと置くからまだ観測できる。

 この奥に、魔王の故郷があるのだ。


「もしかしたらとんでもないことになっているかもしれないからな、改めて聞く――」

「必要はありませんよ」

「ボクら自身、楽しみにしていますからね」


 ルツとハダンの返答に、俺は車体の上で満足感に包まれる。


「よし、じゃあ迷わず直進する。全員、衝撃に備えてくれ」


 車内の状態はだいたい俺は観測できる。みんなが椅子に座り、シートベルトを締めたのを確認した。ゴーレムトレイン内を循環する魔子を加速させ、表面の強化付与(エンチャント)物質を活性化させる。

 車体の表面に黒曜石のような光沢が現れる。エンチャント物質の装甲表面に、膜のように魔子がまとわれていくのが実感できる。


「装甲旋回、掘削開始!」


 蛇が鎌首をもたげるような動きで、風穴の地下に向けて先端を突き刺した。

 ガリガリと地盤を削る音がする。風穴より更に下。マントルへ向けて直進していく。


「……のぅ、テフノ」

「ん? どうした、マベッツ」


 どこか改まったような彼女の声に、俺は疑問符を浮かべた。ゴーレムになってから、肉体の稼働と思考を分離するのが簡単になってきた。おそらくゴーレムの体自体の制御には、ゴーレム・コアのAI的な部分が関わっているのだろう。

 俺自身の人格は、何事もなかったかのように話しかけてくるマベッツと、社内に意識を送って会話する。


「今更ではあるのだが、地下に進むと言うことは、要するに溶岩の中に突っ込むのであろう? この大地の下に、火山以外の場所でも溶岩があるのだと、お主が言っておったわけであるからな」


 溶岩とマントルは全く別のものだ。勘違いされやすい部分で、きっと地球人でもマントル=溶岩より熱い溶岩、と捉えている人がいるかもしれない。

 ――が、マントルはあくまで個体だ。土や粘土のような不定形なものではあるのだが、少なくとも液体ではない。。


「マントルについての詳しい話はまた今度にするとして、何のためのエンチャント物質だとおもっているのさ。強度、耐熱性、親和性、どれをとっても従来の素材の数段上さ! ……やっぱりちょっと不安か?」


 俺自身、少し気安い感じで言いすぎたと思った。彼女らからしてみれば、完全な未知の世界だ。

 これが海の底へのダイブだとしても、同じ反応をするだろう。自分たちの乗っている潜水艦は、深海の圧力に耐えられるのか。船内の気圧は問題ないのか。そもそもそこに行く意味はあるのか。


「大丈夫、行けばきっと、何かがある」


 俺はそれを信じて、あの日地底探査車に乗り込んだんだ。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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