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第二十一話「魔王の故郷へ」.4


「それじゃあ、行ってきまーす!」


 大きく手を振るニアに、スプリガン、ゴブリン、コボルト、ワービースト各種族の若者たちが手を振っていた。

 ゴーレムトレインを起動した俺は、全員を一度リスボンの里に連れ帰るべく、移動を開始する。暗くて狭いグローツヴルムの巣穴を進むことしかできなかった先日と違い、地上を走るゴーレムトレインの車窓から見える景色に、新入り二人は興味津々だった。


「すごい速度なんですね。暗くて全然わからりませんでした」

「わはっ! うちが走るより速いかも! あ、川も飛び越えた!」


 ガタンゴトンと線路はないが音だけを再現しながら走る。

 リスボンの里に帰還したら、さっそく地下世界に出発だ。必要な者は揃った、あとは行けるかどうか。


「魔王の故郷へ向かうわけだけど。何か準備とか必要かな」

「そなたの装甲がしっかりしておれば、特に我らにすることはなかろう」


 むろん、装甲がしっかりしているからと言って、万事安全というわけでもない。エンチャント物質が大量の魔子に触れた時どうなるか、高熱に晒された時どうなるかなど、わかっていないことも多いのだ。

 改めてそのことを伝えるのだが、全員意見は変わらない。


「わかった。なら、迷わず行こうか」


 出発の日取りは、変わらない。


   *


 エンチャント物質製ゴーレムトレインは、先端に鋭い楔形を形成し、グローツヴルムと似たような形となった。

 全体的に薄いカバーに覆われたような状態で、掘り進んだ土を後方へ押し流すことができる。圧力を逃がしながら、より深くへ掘り進めて行ける。


「テフノ様、これも運び入れてよろしいですか?」「

「うん。ありがとう。地下世界で食料を手に入れられるかどうかわからないから、なるべく持っていきたいんだ」


 トバルに積み込んでもらった木箱には、みんなの食料や飲み水が入っている。なるべく車体を補足したいため、トバルのような巨体は連れて行けない。

 彼はそのことに少なからず不満そうだったが、娘のルツが向かうと知り、彼女に託すと言っていた。


「トバルは、魔王の故郷って聞いて、何か思い当たる節はないか?」

「……残念ながら、我が生涯でも、魔王そのものと邂逅したのは、数えるほどにしかなりません。サイクロプスはその鍛治の腕を買われた故に、戦線へ出ることはほとんどありませんでした。同じ巨人種(ジャイアント)でも、バーグスと呼ばれる者たちは戦闘に長けた種族がおり、彼らならば何か知っておるかもしれませんが」


 しかし、問題はトバルもバーグスという戦闘巨人たちの住居は知らないそうだ。

 今から探して会いに行くのは難しいだろう。


「ルツのこと、本当にいいのか? 額に傷貰ってリスボンに襲撃かけるくらいには、溺愛している娘だろう」

「リスボンの里で仕事をしながら、テフノ様について回るルツの話を聞いております。マベッツ様からも、ルツ本人からも。あの子が一人のサイクロプスとして活躍するのを、止める親はおりますまい」

「かわいい子には旅をさせよ、ってことか」


 父親がそういうのなら、問題ない。彼女 の覚醒眼(ジャガンナ)が開眼するのはいつになるかわからないが、彼女自身ができることは増えていくだろう。


「スプリガンとバンシーの代表者も、地底探索には同行する。これに成功して、開拓の目途が立ったたら、樹海にいる他の部族たちも呼び寄せるつもりだ。ルツには、その使節の一人として赴いてもらう」

「サイクロプスの代表として、見事勤めを果たすでしょう」

「俺も期待している」


 食料を詰め込み、予備のエンチャント物質も積み込んで、出発準備は完了した。

 トバルに摘ままれた俺はゴーレムトレインのてっぺんに置かれると、魔子を放出して車体を掌握する。


「出発準備完了。総員乗り込め!」


 マベッツ、ルツ、ハダン、ニア、レコネ――現状、俺たちの主要メンバーが勢ぞろいだ。

 一気に加速したゴーレムトレインは、まず中間地点となる風穴へ向けて直進した。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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