第二十一話「魔王の故郷へ」.3
「興味深い内容だった。調査に役立たせてもらうよ」
「さて、昔話はこの辺りにして、未来のことを話そうか」
必要な素材を手に入れ、地下世界が魔王の故郷だと知り、あとは出発の準備を整えるだけ。そこに、スプリガンの長から提案が来る。
「おぬしの地下世界への旅、パトリニアを同行させてはもらえないだろうか」
「……ニアを?」
「あの子が強いことは、身をもって知ったのであれば、心配することはあるまい」
「同行者が増えるのは別に構わないけれど、リスクは高いぞ? 強化付与物質の防壁は、最低限中を保護できるだろう程度の期待感なんだ。確実に安全じゃない」
地下世界に充満する高濃度の魔子や、地中の圧力そのものから身を守るために強固で特別な装甲を必要とした。だがそれで確実に守れるかと言われると、保証はない。
見たことも訪れたこともない場所である以上、確信できない。
「俺が先行して環境調査をすれば安全性は上がるって言ってるんだけど……」
「未知なる世界への第一歩を、初めに踏めねば意味あるまい! テフノ一人だけ先んじるなど、我は認めんぞ」
「危ないのはわかっていますけど、やっぱり気になりますからね」
「小さいころに樹海を冒険した気持ちを思い出しますよね!」
マベッツも、ルツも、ハダンも、それぞれ最初の一歩を譲ろうとしない。
「ならば、なおさら良い。スプリガンだけではない、多くの者の血を引くあの子を、最初の到達者の末席に加えてくれ。この里に住む者たちの代表として」
「グローツヴルムの巣穴より深くて危ないところだって言ってるのになぁ」
それでも彼らがかつて魔王の配下として戦った者たちならば、地下世界への興味は断たれない。
「そのお話ですが、わたくしもご一緒して構いませんか?」
「レコネまで?」
バンシーのレコネが控えめな声で問いかけてきた。族長の話には余り横槍を入れなかった彼女が、自分の意思を示してきた。俺は族長の方を向くと、なんとなく許可が下りたような雰囲気を感じた。
「いいよ。ただし、ニアへの忠告は、そっくりそのまま君にも適用される」
「問題ありません。わたくしもかつて魔王に使えた者たちの末裔として、かの者の故郷を、一度目にしてみたいのです」
「バンシーも、魔王の配下なんだよな」
「この五十年、保護の約定は余り果たされておりませんが」
笑い話のように言うレコネだが、その結果バンシーはスプリガンに頼るしかなくなったのだろう。
もしも地下世界を開拓できれば、彼女ら自身の居場所を造れるかもしれない。
「覚悟があるのあら、一緒に行こう。魔王の故郷へ」
「はい!」
嬉しそうにはにかむレコネの表情は、歓喜に満ちていた。
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