第二十一話「魔王の故郷へ」.1
スプリガンの里に戻ってきた俺たちは、そのまま族長のもとに赴いた。
「どうやら、孫がお世話になったそうだな」
「いや、助けられたのはこっちだったさ。おかげで、強化付与物質は大量に手に入ったよ。地底蛇竜どころか金剛宝蛇竜がいるとは思ってなかったけどな」
ワイアームであることに変わりはなかったとはいえ。
「屋敷の外に、大きなエンチャント物質の塊があるが、あれを全部持ってきたのか?」
「ああ。ゴーレムの特性で、無機物鉱物は自由に操作できる。俺は他のゴーレムと違ってこうした思考能力があるから、なおさら自由自在さ」
自分で人型になることも、誰かの鎧に変化することも可能だ。今のところ、効率の良さという点からゴーレムトレイン以外の形態にはなっていないが、車や、いずれ飛行機だって変形可能になるだろう。前者は形を小さくすれば簡単だが、後者はいろいろ調べてみる必要はあるだろう。
航空力学は、専門外だ。
「俺たちはこれから、このエンチャント物質を持ってリスボンの里に帰還する。そうしたら、地下空間の調査に乗り出そうと思う」
「おぬしの言っていた魔子の溜まった地下空間か……」
「何か知っているのか?」
長老はしばし黙考する。レコネのほうを見るが、彼女は首を横に振った。長老が何か知っているのか、レコネのほうに心当たりはないらしい。
「少し、昔話を聞いてはくれぬか?
「昔話か?」
「ああ。魔王様が、初めてこの地に覇を唱えた時のことだ」
長老がどれほど長い期間を生きているのかわからないが、スプリガンはサイクロプスほど長命ではない。そのスプリガンの長老が昔話というのだから、さほど昔ではないと思っていた。
だが、魔王が覇を唱えた時代というと。
「マベッツ、どのくらい前?」
「おおよそ千年。調べればもっとも細かい数字を出せるが、我も生まれておらぬ時代故、今は正確な数字を出せぬな」
「それでもかなり前、だな」
現代日本で言えば鎌倉時代以前まで遡れてしまう。それほど前の時。
「そのころ、この樹海に支配者はおらなかった。サイクロプスもリスボンも、リッチもスプリガンも、それぞれの里で自由に暮らし、何か要り様のものがあれば森を歩き、ものを交換した」
「そのころは、人間との戦争もなかったんだな」
「それまではな。だが、人間の中に覇を唱える者が現れると、樹海にまでその勢力を伸ばし始めた。そのころ、魔王を名乗ることになる者が、この地に現れた」
人間の台頭に対抗するようにその者が訪れた。リッチやスプリガンといった武闘派種族を筆頭に、人間との戦いを始めた。樹海の前に国境線を造り、里を要塞化し、戦士たちを鍛えた。
「そして、その指導者となった者を、我ら魔に属する者の王――魔王と呼ぶようになったのだ」
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