第二十話「材料調達完了」.4
ゴーレムトレインの形状を、一部変更した。今までは機関車のような円柱形状の先端に振動装置を形成していた。
それを鋭く尖らせ、リニアモーターカーのような流線型へと変化させる。細い先端部分が圧力に耐えられなかったため、今まで鋭くすることができなかった。
だが、エンチャント物質を手に入れたことで、振動装置をそれこそドリルのように用いることも可能だ。
「ゴーレムトレイン、直進!」
「ライトニング・サンクティオネス!」
追撃しようとしてくるグローツヴルムに、雷の矢が叩き込まれる。こちらの発進を妨害せない。ルツもそれに続き、魔眼が動きを止める。
「加速、開始!」
今度は邪魔されることなく、俺の体は出口の通路に突入した。
多少曲がりくねった部分は直進して突き破り、同時にシールドマシンのようなコーティングを周囲に塗布、坑道としての機能を維持したまま、拡張しつつ脱出する。
グローツヴルムの咆哮が地の底より響き渡るが、追ってくる気配はない。
「上位神聖獣は、よほどのことがなければ自分の領土から出ることはない。安心して、離脱せい」
「それを聞いてほっとしたよ。俺のことを追いかけて襲ってくるんじゃないかと」
グローツヴルムは一匹だけだったが、ハイエストビーストの中には群れを形成するものもいると言う。そしてその個体数の多さから、自ら狩猟を制限したり、生息域を限定したりすることで、生態系を守っている者たちもいるとか。
考えてみれば、ドラゴンだのワイアームだの、あんな大型生物が世界中に居たら、生態系ぐちゃぐちゃだろう。それを考慮した本能が、彼らには備わっているのだ。
「けど、なにより助かったよ、ニア。ありがとう」
「えへへぇ、付いてきてよかった」
照れくさそうに頭をかくニアは、レコネの膝の上にいた。後ろから抱きすくめられた状態のため尻尾は動いていないが、その代わり耳がピコピコと動いている。
一方で、姉貴分のほうは不満げな表情であったが。
「たまたまです。グローツヴルムの意識がテフノさんに向いていたから、あなたの攻撃が通っただけよ。ほんのちょっと意識が向いていたら、危ないことになっていたんだから」
「はーい!」
ニアはレコネの言葉を理解したかのように返事をするが、余り響いていないようだ。
ただ、何より彼女のおかげで助かったのは事実。無茶な耐久勝負をしなくて済んだ。
「テフノさんたちも、甘やかしたりしちゃだめですよ。この子は調子に乗ると何をしでかすかわからないのですから」
「姉というより母親じゃの。そなた」
マベッツの言葉にルツも同意と頷く。レコネは少し肩を落とし、ニアは嬉しそうに笑っていた。
「強化付与物質の回収には成功した。これで地下空間への到達手段が手に入ったから、次に進める」
「地中の圧力、大量の魔子、それに耐えられる外殻。風穴の下に向かえるの」
アカシックレコードで観測されていなかった地中の情報。そこに辿り着けば、アカシックレコードの情報は更新されるはずだ。
魔子を取り込んで強度を上げていくエンチャント物質があれば、未知の空間にも抗える。
「ゴーレムトレインの形状を再設計したら、リスボンの集落へ戻るぞ。その前に、スプリガンの里に挨拶周りくらいはしておかないとな」
「少々忙しくなりそうですね」
材料調達は完了した。
あとは、辿り着くだけだ。
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