第二十話「材料調達完了」.1
スプリガンの坑道の奥地に存在する、上位神聖獣、ワイアーム。その特異個体である金剛宝蛇竜と戦う俺たちは、強化付与物質を回収しつつ、このドラゴンを止めようとしていた。
「マベッツ、やってくれるな?」
「任せておけ。ハイエストビーストに、我が冥闇魔術は効果てきめんであるが故!」
彼女の掌の内側には、漆黒の雷が渦巻いている。これまで相対してきた魔獣の類は、彼女の得意とする冥闇魔術が余り効かない。そのため物理的破壊力を頼りにしてきたが、今回はその拘束能力を活かせる相手だった。
「捕らえ呪え、カースド・チェーン:ボルテック・エンチャント!」
雷電魔術を組み合わせた雷の鎖が、この巨大な地下空洞内部を走る。地面ごと縫い付けようと地中から飛び出た鎖が、大きくのたうち回るグローツヴルムの体に巻き付いていく。ドラゴンらしい咆哮を上げるグローツヴルムだが、こちらへの威嚇にはならない。
「闇の稲妻、竜を落とす!」
次に現れたのは、雷でできた巨大な弓。そこに番えられる矢も、もちろん雷だ。雷の電熱、威力。それを冥闇魔術の物理特性、呪術特性を組み合わせて放つことで、さらに威力を上げると言うのが、彼女の言。
「ライトニング・サンクティオネス!」
それは、以前も使った闇の結晶による爆撃。それに雷を纏わせて放つことで強化しているのだ。バリスタの如く放たれた結晶体は、鎖に縛られた蛇竜へ直撃した。
「ふふふ、どうじゃ。これがリッチの力よ!」
「わたくしには、怒らせただけのようにしかみえませんが」
「テフノへの攻撃を防げればよいのじゃ! 構えよ!」
レコネの指摘に、マベッツは少し苦し気に応える。この威力、それこそ大魔獣が相手でも十分通用するだけのものだ。それが、グローツヴルムには全く効いていない。
相手の防御力が高すぎるのだ。
「バンシーの呪術、聴かせてもらおうかの」
「ええ、どうぞ、死なぬように、お聴きくださいませ」
聴く? と俺が疑問に思った時、マベッツはルツとハダンのもとによって何か伝える。すると、二人は耳を塞いで離れていった。
「Dadarek’ sharzhvel. Yet’e hognats yes, karogh yes k’nel.」
それは、歌のように響く。
「dzmerrayin ts’urt. Khndrum yem zhamanak tramadrek.」
呪歌と呼ばれる、魔術の一種だ。呪いを歌に込めることで相手の体内に浸透させ、より強い影響を及ぼす。それはハイエストビーストに効果は薄くとも、動きを鈍らせることは可能になる。
もしこれを普通の生物が聴けば、一瞬で呪われてしまうことだろう。
「ちなみに、何て歌ってるかわかる?」
「子守歌のようじゃの。ただし、永眠させる規模の」
呪い全般に耐性のあるリッチと、そもそも呪われる部分のないゴーレムだからこそ、平然としていられた。
そして一方で冥闇魔術に弱いハイエストビーストは、先ほどまで眠っていたこともあってか、二度寝しそうな雰囲気を醸し出していた。
「ルツ、今ならやれるか?」
「はい。お任せを!」
袖で顔を覆ったルツは、その両目に魔子を貯めこんでいた。
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