第十九話「坑道突入」.4
「この巨体、金剛宝蛇竜と呼ばれる、特異個体ではないか?」
マベッツの疑問に、全員の視線が彼女へ向く。
何それ? という表情のルツたちに、マベッツは解説を加えた。
「宝石や貴金属を大量に捕食したワイアームが辿り着く進化形態でな、この巨体と表面に浮かんでおる宝石のような輝き。上位神聖獣がさらに進化した個体として、長年発見数の少ない研究対象とされておったわ」
「なら余計に手を出さないほうがいい。さっさと回収するもの回収して、帰るとしよう」
ハダンの頭から飛び降りると、地面に魔子を広げていく。なるほど、このワイアーム――グローツヴルムによく似た気配を感じる。だがお目当ての強化付与物質であることに変わりはない。
俺の広げた魔子とよく馴染み、形状の変化もさせやすい。
「よし、これならたくさん回収できそうだ。ゴーレムトレインを造ったらこのまま帰ろう」
「あの、テフノ様……」
「ん? 何?」
ズズズ、と何か動く音がする。ルツの視線を辿っていくと、ギラリと光る双眸がこちらを睨み下ろしていた。
「さっきまで爆睡してなかった?」
「おぬしの魔子を感じ取って、巣穴を荒されたと思ったのやもしれんな」
冷静に答えるマベッツは、直後に全速力で走り去っていた。
「全員伏せろ!」
俺の声に反応して、ルツやハダンが頭を庇うようにしゃがみ込む。同時に俺は周囲のエンチャント物質を腕に整形し直し、地面にいる俺たちを庇う。
大音響の咆哮、振り下ろされた尻尾を土の腕が受け止めた。
「なんとか……こいつを沈めさせないと……!」
「テフノ様、ボクが!」
「任せる!」
ハダンのすぐそばに、エンチャント物質で造った刃を出現させる。彼はそれを握ると、地面を蹴ってグローツヴルムの体を駆け上がる。魔王の懐刀と呼ばれたその機動力には目を見張るものがあった。宝石のような鱗は簡単には刃を通さない。
「無理して攻撃する必要はない。俺が回収できるまで、時間を稼いでくれればいい!」
「承知しています!」
「ハダンくん、私も援護を!」
ルツは懐からサイクロプスの小刀を取り出すと、それで指先を刺す。プクリと血の玉が浮かび上がると、それをグローツヴルムへ向けた。
「雷獣、招来。ブロントテリウム」
指を弾くと同時に、血の玉が飛ぶ。それは彼女の魔子を含んでおり、空中で形を成していく。
空中を走る雷の塊が、体を走るリスボンを追いかけるグローツヴルムの眼前へ迫る。
「ハダン、戻ってこい!」
「はっ!」
空中で姿勢を整えたところで、空を蹴って戻ってくる。初めて会った時はサイクロプスに襲われていた彼らが、さほど強い種族と感じる機会はなかった。
だが、空中での姿勢制御、グローツヴルムを駆け上がる速度。その種族の異名に偽りはない。
「マベッツ、やってくれるな?」
「任せておけ。ハイエストビーストに、我が冥闇魔術は効果てきめんであるが故!」
したり顔で言い放つマベッツの手の中には、漆黒の雷が球体上になって唸りを上げていた。
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