第十九話「坑道突入」.3
到達した場所は、それまでの坑道部分に比べてずいぶん広い空間だった。
坑道と言っても、その広さは人間が通れる範囲よりも格段に広く、地下鉄のトンネルと同レベル、それ以上の巨大な通路だった。
その途中にもキラキラ光る鉱石――強化付与物質が無造作に生えていた。ワイアームの放出する魔子が坑道内の岩石や鉱石に蓄積、結晶化したものだ。
「希少だ、貴重だと言われている物質がこんな床一面に広がっている光景を見ると、なんだかむなしくなるな」
ダイヤモンドの星や金の星を見つけたらこんな気持ちになるかもしれない。
そう思うほどに、大量のエンチャント物質が地面を覆っている。
東京地下にある、通称地下神殿こと放水路並みの広さの空間がある。ワイアームはミミズのように土を食って生きているらしく、長年ここに住み着いたことで、最奥の巣は今も広がり続けているという。
「こんだけ広いと、ワイアームも気づきにくそうだけど?」
「油断せぬことじゃ。上位神聖獣は、他の魔獣や聖獣らと比べても、縄張り意識が強い。いくらワイアームがハイエストビーストの中でも下級個体とは言えドラゴンには変わりない」
つまり、刃王獅子や鎚君主鰐より、上位に存在する個体ということだ。
ネメアは正面から殴り倒すことで制圧できた。ヴォロードガヴィルに追い立てられて弱っていたところに全力のライトブローをかましたことで、上下関係を刻みつけてしまった。
「ネメアには、悪いことしたかなぁ」
「おかげで討滅する必要はなくなったのじゃ。あやつも今は楽しんでおろう」
リスボンたちと仲良くやれているし、今では子どもたちに人気な守護獣と化している。食欲の塊であったヴォロードガヴィルは討滅するしかなかったが、このワイアームはどうなるか。
「万が一にも倒してしまうようなことは避けてくださいね。むろん、ハイエストビーストがそう簡単に倒せるとも思いませんが」
「だろうね」
ボフゥゥゥ、と呼吸音が聞こえてくる。それだけで俺たちにはこの洞窟内に風が吹いているように感じられる。
音響センサーと赤外線センサーで観測した姿から、脳内に3Dデータを造形していく。
頭頂高は約五メートル、体長は目算で百メートル強。地下鉄と同じくらいと言えば、その長さがわかるだろう。それが、とぐろを巻いて寝息を立てていた。
蛇と違うのは、瞼があることだろうか。
「マジでこれ生物なの? デカすぎない? サイクロプスでも丸呑みできそうだよ?」
「お父様に聞いた昔話では、とても巨大な蛇に食べられたかつての覚醒眼が、お腹を切り裂いて脱出し、その頭を殴って倒した伝承があるとか」
「なんだその脳筋の権化みたいな伝承は」
この巨体が暴れないうちに、ことを済ませよう。
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