第十九話「坑道突入」.2
「ニアの実力は、わたくしもよく理解しています。わたくしが子どものころから、この子のお世話をしてきたんです。魔術の基礎も、わたくしが教えました」
「レコ姉はすごい魔術師なんだよ! うちだけじゃなくて、里のみんなの先生なの!」
そのおかげで、よく慕われているわけだ。しかし、そんな彼女がダメだと言う相手が、この坑道にはいるのか。
「だからこそ許可できません。ニアは、ここで待っていてください」
「……はい」
しょぼん、と垂れた尻尾。しかし、先生の言葉をよく聞く生徒のようで、反論は続かない。不満そうな表情はしているが、言葉はない。俯いた顔が、下からだとよくわかる。
「お手間を取らせましたね。参りましょう、テフノ殿」
「……それでいいのなら」
こちらも、異論はない。
レコネは坑道の扉に手を添えると、そこに施された魔術的施錠を解除する。誰かが勝手に入らないための措置だろう。複数人の魔術を感知するが、特定の人物と手段で解除できるようにできているようだ。
「参りましょう。坑道内は余り明るくないので、気を付けてくださいね」
「それなら大丈夫。俺光れるから」
「そうですか……え?」
俺は暗視モードになると同時に、眼の奥にある発光機能を起動。視界全体を照らせるように光を放つ。
「便利ですのね」
「ゴーレムだから」
ハダンが俺を頭の上に乗せて、坑道内へと歩を進める。
坑道内には発光性の鉱石を使ったランプが並んでいる。しかし、それでも照らせている範囲は余り広くない。レコネも自前のランプを手にしており、俺たちを先導する。
「この坑道は、そもそも坑道として掘ったものではないそうです。若りしころの族長らがこの地を訪れた時にはすでにあり、そこにワイアームが住み着いていたそうです。ゴブリンやコボルトも一緒でしたから、坑道の入り口付近の採掘をずっと行ってきました」
「それで足りるだけの量は確保できていたんだな」
「はい、必要十分。どこかに輸出するわけでもないので」
逆に言えば、足りない分を確保するには、より奥で採掘するしかない。
ワイアームに近い、危険な場所に踏み込まなければいけないのだ。
「マベッツ、そもそも強化付与物質が、どうしてドラゴンの近くで採掘できるんだ?」
「奴らは生きているだけで周囲の環境を変えられる上位神聖獣。ワイアームが洞窟に住み着いたのなら、周囲を自分好みに変えておるのであろう」
体表から放出する魔子が、環境そのものを変えてしまう。それがハイエストビーストの特徴であり、そして怪獣とも呼ばれる理由だ。
自然の法則から並外れた存在、ゆえに怪獣。
「そろそろ見えてまいります、光を少し落とせますか?」
レコネからの要請に、俺はサーチライトの光を落とした。
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