第十八話「リッチの気持ち」.3
「うぉ!? なんじゃ!? 攻撃か!?」
「違う違う、俺。テフノ」
若干めり込んだ体を何とか引っ張り出して土を落とした俺は、遺跡を見上げていたマベッツの横に立つ。
「なんじゃ。この遺跡を軽く調べておるところよ。なぜワイアームが住み着き、強化付与物質が採れるのか、少々気になっての」
「古代の誰かが、採掘用に調整した坑道ってことか?」
「そうじゃの。この地には、いや……おそらくこの星の各所に、このような古代の名残はある。我とそなたが出会ったあの場所もそうじゃ。誰が作ったかもしれぬ地下遺跡。追放されてからは、あそこをずっと根城とした」
和平を望んだ部族。それを拒絶した姫。五十年もの間、彼女は故郷に帰らず、あの場所でゾンビとアンデットともに過ごしたのか。
「この文様は、かつてこの大地を征服したという古代種『閻魔』のものじゃな。おそらく、ここは彼らの生産拠点の一つであろう」
「ヤマラ……聞いたこともないな」
「古代種であるからな。名も知らぬ者が大半であろう。この文様は彼らの特徴で、魔術の焼き印で描かれておる。というかエンシェント・ゴーレムの癖に知らぬのか」
古代種に関する知識を得意げに披露するマベッツだが、俺は大半聞き流す。聞いていてもよくわからない。
「君の階級が何だと言うだけで、俺たちに見捨てられるとでも思った?」
話を遮って、俺は問いかける。それまで嬉々として話していた彼女は、一気に押し黙った。少し、ずるい聞き方だったかもしれない。
「そりゃ、言ってみなきゃわからない部分ではあるだろうし、確証もなかった。けどさ、マベッツは敵じゃないってことくらい、みんなわかっていることだろう」
「だからと言って、不安がぬぐえるわけではあるまい」
スプリガンやバンシーからすると、リッチは裏切り者だ。
リスボンやサイクロプスからしてみると、いつ裏切るかわからない者だ。
その姫となったら、余計に怪しく思えてしまう。
「なら、もう大丈夫だろ? 俺は、君が姫だろうが巫女だろうが、気にしてない」
「楽観的というか、能天気というか。それでスプリガンやバンシーが納得すると思うておるのか」
「少なくとも、君が急に攻撃されることはない。されたとしても、俺が守ればいい」
そもそも、地下世界を開拓するのだって、マベッツのためだ。決して、俺個人が星の中心を目指したいからというだけではない。
「簡単に言ってくれるの、お主。この先リッチとスプリガンが交戦するようなことになれば、我は真っ先に両軍から命を狙われかねんのだぞ?」
「族長と話した感じ、そんなひどいことはしなさそうだし、バンシーのレコネは予言で不利にならなきゃ、そんなことはしないだろう。そもそも、バンシーはリッチほど長生きじゃないんだろう? 彼女自身、人間との戦争は未経験みたいだし」
恨みはいずれ忘れる――なんて無責任なことを言うつもりはない。ただ、恨みを持たずに生きていられる世界があってもいいはずだ。
少なくとも、俺はそんな世界で生きていたい。
「よいのか。面倒が増えるぞ?」
「いろんな種族を助けて回る時点で、覚悟の上さ。いずれ、スプリガンたちだって、俺の地下世界に呼び込んでやる」
「よかろう。好きにせい」
肩をすくめたマベッツは、振り返ってルツたちの方を見る。
「何をしておる。さっさと中へ入るぞ」
一瞬顔を見合わせたルツたちだが、すぐにこちらに駆け寄ってくる。
特に準備することはない。ただ、ワイアームと戦うかもしれないと言う覚悟だけは、しっかり固めていく。
「あ、見つけた! レコ姉!! うちも行っくぅぅぅ!!!」
どこからか、強烈な元気の塊が飛んできた。
突入一旦中止。
この元気に対処する。
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