第十八話「リッチの気持ち」.3
スプリガンの坑道は、村から少し離れた場所にあった。
村からポリュペウス山脈のほうへ四半時。歩いて行った先で見つけたのは、石造りの門だった。古代遺跡、そう呼んで差支えのないものに見える。
「スプリガンの皆さんが先祖を引き連れてここに来た時、すでにこの場所はありました。中に入ってみたところ、ワイアームの放つ魔子に影響を受けて、強化付与状態になっていました」
「じゃあ、それを回収して使っているんだ」
「どこに出荷するわけでもありませんから。かつて、このようなエンチャント物質の取引は、リッチたちが取り仕切っていたと聞いていますが」
リッチが樹海の入り口を守っていたのは、その武力故。ごく少量とは言え、防衛のためにエンチャント物質を使った武器を保有していた。
「我が杖も、その一つ。使われているのは先端部分のみで、わずかに力を増幅させる程度でしかないがの」
「エンチャント物質の生産地の多くは、人間の支配領域に分布しているんだったよな」
「だから、このような場所でエンチャント物質が多数見つかるのは、予想外であるな」
マベッツは相変わらず低いテンションのようだが、するべきことはするようだ。
俺はルツとハダンと顔を見合わせ、遺跡を調べ始めたマベッツを見守る。
「そんなに、姫君だってばれたくなかったのかな?」
「今更言うと恥ずかしいとお思いだったのでしょうか?」
「ルツさんっていうきちんとしたお姫様がいて、気後れしたとか?」
「ハダンってさ、案外容赦ないこと言うね」
もっとも、そんな気恥ずかしさや気持ちの問題ではないだろう。
もともと、同族と人間に反撃するために、俺を呼び起こした。ゾンビ、アンデットたちを準備し、攻撃に備えた。
でも、とどまった。
「本当は、マベッツだって戦いたいわけじゃないんだと思う。でも、自分のプライドや気品を保ちたくて、樹海のみんなを助ける道を選んだんだ」
もっとも、それは彼女にとって、逃げに等しい。
「だから、姫だから戦えないんだと思われたくないんじゃないかな」
「肩書きのせいで、失望されると思っていたんでしょうか」
「するわけないっての。まったく、五十年拗らせた引き篭もりは相当だな」
俺は腕を伸ばし、ハダンの肩を叩く。俺を掴んだ彼に耳打ちすると、あとは流れに身を任せる。
「じゃ、行ってらっしゃい! テフノ様!」
ぐっと体を後ろにそらしたハダンは、その場で一回転。本来なら俺を地面に当てて勢いをつけるところだが、リスボンの身体能力なら、その必要はない。
空中一回転した彼の手から放たれた俺は、高速回転しながらマベッツの隣に着弾した。
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