第十八話「リッチの気持ち」.2
「レコネってさ、族長が話している間、何も口を挟もうとしなかったよな」
俺はハダンに担がれた状態で問いかける。正確にはハダンの頭の上に乗った状態で、特に彼の手で支えられていたりはしない。なので、絶妙にグラグラするのだが、ハダンの見事なバランス感覚で、俺は高さを保っていた。
「会話に入ってこなかったということなら、そちらのお嬢様や、あなたの下のお坊ちゃんもそうではないですか?
「ボクはただテフノ様の邪魔をしないようにと思ったので」
「私たちの代表はテフノ様なので」
ハダンとルツの言葉に、俺はどこかこそばゆくなる。神経もリンパも存在しないのに。
「二人はこんな風に謙虚でね。ただ、俺たちのことを予言したバンシーだというのに、あまり俺たちに興味がないのかなぁ、と」
「そんなことはございませんよ。ただ、観察していたのです」
「観察?」
バンシーの視線は、嫌に鋭い。本当にどこまでも見通すかのような突き刺す視線。吸い込まれそうな雰囲気のある瞳孔。
この目が、様々な未来を見通すのか。
「わたくしたちバンシーは、その力と伝承ゆえに、人間たちから恐れられ、狩られる者たちでした。反撃もしましたし、抵抗もしますが、なにせ数が多い」
「大変、だったんだな」
「ええ、森を守るリッチたちが和平を結び、防御に隙が生まれ、スプリガンの助けがなければバンシー族はどうなっていたことか」
彼女の言葉に、マベッツは少し口を曲げる。彼女はスプリガンと同じく徹底抗戦を掲げているが、同族の決定の結果、多種族に迷惑をかけたのもまた事実。
巨大な力を持った外国勢力に対し、先住民族が団結して戦っているとき。一角が崩れたり、懐柔されたりすると、対立関係にあった民族が集中攻撃を受けたり、民族浄化が行われたり、悲惨な結果が待っている。
今回の場合、樹海の者たちは決して対立関係にあるわけではない。だが、人間からしてみれば、和平を結べなかった相手はすべからく殲滅対象なのかもしれない。
「正直、わたくしはまだあなた方を信じ切れていないのです。特に、リッチの姫君。あなたの存在ゆえに」
「その、こういうのは失礼なのはわかっているのですが、本当にマベッツ様はリッチ族の姫君なのですか?」
ルツの問いかけに、俺とハダンの視線がマベッツへ向く。彼女は気まずそうにそっぽを向く。
どうやらマジらしい。
「マベッツ様は、リッチの里から追放されていると聞いていますが、自分たちの姫を追放したのですか?」
「サイクロプスの皆さんからすると、ルツさんを追放するようなものだね」
「父が知ったら驚くことでしょうね」
マベッツは二人の言葉に反応しない。ただ顔をそむけるばかり。
「マベッツ様、あなたがそのミイラの姿を取っているのは、同族の行いを恥じるがゆえなのでしょう? リッチとは言え、肉体を失った姿は本来の姿ではないのですから」
「そうなのか? 俺と出会った時から、ずっとその姿だったから、リッチ族ってのはみんなミイラみたいな姿だと思ってた」
その時、彼女は小さくため息をついた。
「……そんなわけなかろう」
力なく、そう答えた。
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