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第十七話「巌の種族」.3


「感謝や挨拶はこの辺りにしておこう。そなたらが我らの里に来た理由を、お聞かせ願おう」

「そうだな。そこが本題だ」


 スプリガンの里に来たのは、強化付与(エンチャント)物質の確保のためだ。彼らから取引するなり、譲ってもらうなり、手に入れさえすれば問題ない。

 それがあれば、俺は地下空洞を超えて、魔子に溢れた地下世界へ到達できる。

 立ち上がったマベッツが、巨大な岩と化したスプリガンに向けて告げた。


「端的に言えば、そなたらの力を貸してほしい。エンチャント物質が、我らには必要なのじゃ」

「エンチャント物質……なるほど、それで我らを訪ねてきたか」

「そなたらも存じておると思うが、今この大陸東のエンチャント物質は、そのほとんどの採掘場を人魔統一国家によって管理されておる。だが、とある事情から必要とする我らは奴らに頼らず、確保したい」


 この言い分だけを見れば、まるで戦争の準備をするかのようだ。強化付与(エンチャント)の施された素材を使った武器は、通常の武器より能力が高い。

 鋼を超える強度を持ちながら羽毛のように軽い盾。大岩さえ断ち切る剣。自由自在にコントロールできる空飛ぶナイフ。その他もろもろいろいろ多数。


「魔術の才に長けるものであれば、むしろエンチャントは自分の力を阻害する要因になりかねぬから、不要で合った。だが、このゴーレムに必要なものであるゆえ、御譲りいただきたい」

「なるほど。それゆえに我らの里に」


 だが、エンチャント物質は稀少な金属と同じ扱いだ。数は少なく、高価だ。


「同じ樹海に住む者とはいえ、そう簡単に渡せるものではないことくらい、承知しているだろう」

「もちろん。対価に払えるものはさほど多くはない。何か困りごとを解決してやろうと言ってもよいが、そなたらスプリガンが解決できぬこととなれば、それは我らにも不可能じゃろうて」


 東側に進出しないのは、里の安全を優先しているからに過ぎない。


「アルヴァスの誇る『白亜の神弓隊』、ドヴェルグたちの『金剛強兵団』、ワービーストの『百獣戦隊』、スプリガンはこの大地を巡る大戦力たちに並びし『灰塵の防人』。半世紀たとうと、その伝説は朽ち果ててはおらぬだろう」

「お褒め戴き光栄の至り。リッチの姫君よ」


 今とんでもないこと、エヴェングは言わなかったか? そもそも彼は喋っているのか? それともテレパシーのようなものを送ってきているのか?

 スプリガンという種族の神秘に頭を悩ませつつ、マベッツという存在に驚きの視線を向ける。彼女はこちらを向くことなくそのまま会話を続けるのだった。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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