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第十七話「巌の種族」.2


 スプリガンの長エヴェング、そしてバンシーのレコネ。

 彼らとの間には、決して敵対的な感情があるわけではない。ならば、話はなるべく早く済ませよう。


「先のころ、リスボンの里にサイクロプスの戦士複数名が襲撃をかけたことは、すでに聞き及んでいるだろうか」

「知っておる。我がレコネは樹海の浅い部分で悲劇が起きることを予言し、神の末裔が小さきものを滅ぼすとされていた。さらに言えば、魔人の暗躍、樹海の北の長の入れ替わりについても、彼女は予言を告げていた」


 この世界は、今だ高速通信は確立されていない。確かに走れば新幹線並みの速度を出せる種族も、この世界にはいることだろう。クルツアスランは、マベッツ曰く平原では音に等しい速度――つまり音速を発揮するという。

 けれど、電気技術や通信技術が発展しているわけではない。だから、このバンシーが密偵やら情報網やらを駆使して森の東側で起こっていることを知るには、相応に時間がかかる。

 予言というのは、未来視や千里眼、トバルの魔眼に似た特殊能力で間違いない。


「しかし、聞けば予言の一部は覆ったそうだな。現れるはずのない存在の介入によって」

「え?」


 バンシーの視線が、俺に注がれる。彼女は一言もしゃべっていないのだが、こちらを試すような、どこか起こっているような視線に思えた。

 予言を的中させるというのは、彼女なりのアイデンティティだったのかもしれない。それを、俺が介入したことで崩した。

 転生者という、イレギュラーであるから。


「その、俺のことを、何か予言していなかったのか? 俺たちがここに訪れることは、知っていたみたいだし……」

「彼女は再び予言を試みたところ、それまで影も形もなかったそなたが現れたと言う。内紛で傷つくリッチ、滅びるはずだったリスボン。魔人の傀儡となるサイクロプス、クルツアスランにヴォロードガヴィル――跋扈する上位獣(ビースト)たちによって荒れる樹海、そう言った予言が次々と消え、それらを率いるゴーレムの姿が浮かび上がったのだ」


 本来、俺はこの世界に存在しなかった。あのままマベッツはリッチの街に攻撃を仕掛け、リスボンとサイクロプスの対立は激化、ウォヘブ・アオバがどう介入したのかサイクロプスを味方に付け、獣たちは放し飼い。

 そういったこの樹海の混乱と荒廃が、俺の介入で消えたと言うのだ。


「それだけの予言を聞いていても、何か行動を起こそうとは思わなかったのか?」

「我らとて無敵ではない。人魔統一国家にリッチが下り、森の東から西へと移った。バンシー、ゴブリン、彼らを守ることが、最大である」


 樹海の南西側に居を構えるスプリガンたちは、北東側にまで勢力は伸ばしていない。人魔統一国家と拳を交えないようにしているのだ。

 そう言った意味では、俺の行動は考え無しに等しいのかもしれない。


「手の届かぬ場所を諦めた我らに代わり、樹海の友を守りしそなたに、我らは最大の経緯を評そう」


 とりあえず――今はそんな難しいことを考えずにいてもいい。ただ感情の、心の動くままに体を動かした結果は、今のところ良い結果に繋がっていた。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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