第十六話「守護者との邂逅」.3
「ここをさらに動かせば!」
ガンガンッ! と音が鳴る。一体何が音を鳴らしているのかわからないが、とにかくルツはこの結界の解除、結界門とやらの開錠は間近だった。
目の前の空間に歪みが発生し、光の渦が出来上がっている。
これが結界門というものだろう。扉の閂が外れていき、閉ざされた通路が開いていく。
「開きましたわ!」
「ルツ、よくやったねぇ。さすが棟梁の娘だよ」
ワシワシとマベッツの手がルツの頭を撫でる。身長はルツのほうが大きいが、今彼女は膝を付いている。だからこそ頭を撫でられるわけだが、まんざらでもなさそうだ。
ハダンに掲げられた俺は彼女の隣まで運ばれると、三本指でグッドサインを造って見せる。
「ご苦労様。これでスプリガンの集落に入れるのかな?」
「はい。魔力障壁に穴が開いている状態なので、ここを通れば問題ありません」
結界というのは、空間を歪められているわけではないらしい。あくまで集落への道を断つための壁であり、物理的な障壁だ。スプリガンの里が深い樹海の奥の奥にあるため可能だが、これが一般的な街道の途中にあったら不便極まりない。
そしてどこでも好きに作れるわけでも、作ったらそのまま放置しておいていいわけでもない。日常的な修復、メンテナンスが欠かせないらしく、決して効率がいいものではないらしい。
「里に訪れる気配アリと感じ来てみれば、なるほど三つ目のサイクロプスにリスボンの少年。加えてリッチとゴーレム・コアが一つとは、何とも奇妙な一行かな?」
入っていいのか、いけないのか。少し迷っていた俺たちの前に、結界門を通って現れた小さな影が声をかける。
八、九歳くらいの子どもと変わらない身長のリスボンより更に小さい、というかほぼ似頭身で五十センチくらいの小柄な姿をした石のような色の生物がそこにいた。
「彼が、スプリガン?」
「はい。テフノ様、こちらがスプリガンの……」
「門番のショーエンでござる。観光か、侵略か」
身長五十センチの小人から聞こえる声は、ずいぶん低く無骨な声だ。目の前の小さいのは口パクで、後ろから身長二メートルの巨漢が声を当てていると言われても納得してしまえる。
灰色のだるまのような外見だが、手足は十分ごつい。握り締めた拳に、重圧を感じる。
ハダンの腕から飛び降りると、両手両足を伸ばして彼の前に立つ。
「待ってくれ、門番のショーエン。こちらに戦闘の意思はない。このリッチは部族から追放された者で、人魔統一国家に反旗を翻そうとする立場の者だ!」
「最近、森の北側が騒がしいかと思っておったが、新たな騒動の兆しであるか」
「わざわざ火種をあろうとは思わない。戦力ではなく、相互扶助として君たちと関係を結びたくて、ここに来た」
「そうであろうな」
門番のショーエンは拳をほどき、手を後ろに伸ばす。結界門の中に手を突っ込むと、何かを掴んで動かす。すると、先ほどまで不明瞭だった結界の内側が、見えてきた。
門の入り口はこちらで開けても、実際に通り抜けるには彼の協力が必要なのだろう。エアロックのような二重構造、同族の安全を守るための措置なのだ。
「入られよ。長が対話をお望みである」
「……あれ? なんか、事前に知られていない?」
「ふむ、どうやらスプリガンの里におるのは、スプリガンだけではないようだの」
誰がいるのか、少しだけわくわくしながら、俺は門を潜った。
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