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第十六話「守護者との邂逅」.2


 リスボンの里から見ると、ここは南西方向に当たる。もともとはリスボンの里より北東、人魔統一国家との境界付近に里があったと考えると、かなり大規模な引っ越しだったようだ。


「便利な地図よのぉ。もっと広く見れるのか?」

「ああ。観測できている範囲であれば表示できるよ。今俺たちがいるところを中心にして、リスボンの集落と、スプリガンの集落は、この辺りかな」


 サイクロプスの里より、リスボンの里のほうが遠い。この辺りもポリュペウス山脈の麓にあたり、ハルガッシュ火山の影響を受けた土地だ。ヤーム樹海はまだまだ広がり、そこに住む者たちの姿を隠す。


「これが、ルツの探していた環状列石かな」

「……はい、これで間違いないようです。スプリガンの紋様が描かれています」

「確かに、彼らの種族紋が刻まれておる。数日前に起動した跡があるの」

「起動?」


 マベッツは膝を付き、環状列石――この場合、日時計型みたいな名前で呼ばれていたはず――に手を伸ばした。その表面には拳のような形の紋様が刻まれている。マベッツの言う種族紋とは、このことだろう。

 その表面に触れると、魔子が流れ込んでいく。円形に並んだ石の中央で起立する細長い石。そこに太陽光が当たることで日時計となる。

 今回は、太陽光の代わりにマベッツの魔力が注がれていた。


「何をしているんだ? さっき言っていた、起動がどうこうって」

「この環状列石は、彼らの集落へ至るための門みたいなものでな。ルツ、少し手伝ってくれるか。我の魔力では反応せぬ。おそらく種族特有の魔力波長で起動するように構築されておる」

「魔力を、この石に込めればよろしいのですか?」


 俺は膝を付いたルツの腕から降りて、二人の様子をうかがう。

 ルツが手をかざし、パチパチと雷鳴魔術で出てくるような雷の魔力が生じた。おそらく、ここに人魔統一国家の面々がやってきても起動できないようにしてあるのだろう。

 マベッツが起動できないというのは、彼女の同族であるリッチたちが、人魔統一国家側へついたせいだろう。サイクロプス、リスボン、他ヤーム樹海の者たちなら、起動できたかもしれない。


「うむ、いけそうだの」

「はい。結界門、解放します!」


 ルツの言葉に合わせ、ガンッ! と石を叩きつけるような音がした。

 ハダンはその様子を見ながら、結界門について教えてくれた。


「ボクたちはできませんが、魔術に長けた一族は里に結界を張り巡らし、特別な門で外界と繋げていると聞きます。ヤーム樹海から東、草原と谷を隔てた向こう側にあるフラシナス大森林には、アルヴァス族という者たちがおり、森全体を結界で覆っているとか」

「なんかずいぶん遠い場所の話だな」


 ヤーム樹海以東となると、統一国家側だろうか。それとも独立しているのか。

 所属勢力によっては対応の仕方は変わるだろう。尤も、そんな遠い場所の者たちと交流を持つのは、ずいぶん先になりそうだが。

 そうして話をしていれば、すでに開錠完了間近だった。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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