第十五話「新素材を求めて」.3
「なぁ、他の地域とか、サイクロプスの里で手には入らないんだよな」
マベッツに向けて俺は聞いてみるが、彼女は首を横に振る。
「強化付与には先天性と後天性がある。サイクロプスたちは後天的に魔力を付与して強化された物質を作り出す。その点では、お主も同じじゃな」
「俺はそもそも生成するのに魔子頼りなところがあるけどな」
「だが、人魔統一国家が管理しておる坑道から採れるものは、先天的に魔子を宿し、強力な強化付与を施された状態にある」
逆に言えば、それをさらにサイクロプスや俺が鍛えることができたら、より強力な素材になりえるということだ。
問題は、それをどう手に入れるか。この周りから掘っても出る確率は低いだろう。
「人魔統一国家では、エンチャント物質は王家の専売だ。特定の店にしか卸してはおらぬだろうし、むろん所属の明らかではない我々に売ってくれるはずもない」
「じゃあ、そいつらが管理できてない野良坑道を見つけて採掘してやれば……」
「そう簡単には見つからないから、希少価値が高いのだ」
それもそうだ。だが、一つ。可能性のある場所があった。
ルツが、それを教えてくれる。
「テフノ様、マベッツ様。ならばスプリガンの里に向かいませんか?」
「スプリガン……って?」
名前は漫画や小説で聞いた覚えはある。けれどタイトルごとに設定は違うから、この世界でのスプリガンはどんな者たちかわからない。
「スプリガン、我らリッチに並ぶ旧き種族であるな。その力は巨人に匹敵するほどと言われており、かつての戦争では最前線、指揮官も務めたことがある」
「スプリガンたちは拳の賢者と呼ばれており、戦闘技術に関しては、種族全体が長けているということです」
「そんな奴らの里に行って、大丈夫なのか?」
ずいぶん野蛮な二つ名だ。戦闘種族と言われると、踏み入れた瞬間に攻撃されそうな気がするが。
「大丈夫ですよ。普段のスプリガンたちは温厚そのもの。私は今より小さいころに一度だけ、スプリガンの方にお会いしたことがありました。とても小さい方たちでしたが、纏う覇気、膝を付き高台を造って視線を合わせた父のことを考えると、とても高貴な方なんだと思いましたわ」
スプリガンを見たことない俺からすると、よくはわからない。だがこの樹海の民にとって重要な存在なのだとわかる。
「しかし、ルツよ。問題が一つあるぞ」
「何でございましょう?」
「スプリガンたちは、人魔統一国家誕生のころ……つまり五十年ほど前から、スプリガンたちの集落はもぬけの殻となり、行方不明になってしまったと聞いておるぞ」
つまり、魔に属する者たち筆頭の戦闘種族は、マベッツと同じでこの平和に馴染むことができなかったと言うことだ。
ルツは、あっ、と口元を抑えるが慌てた様子はない。
「大丈夫ですよ。私がスプリガンの方と会ったことがあるように、彼らの集落の位置も把握しておりますので」
彼女自身、あてもなく提案したわけではなかった。
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