第十五話「新素材を求めて」.1
俺の頭の中に浮かんでいるのは、虚空情報統合体――《アカシックレコード》から俺がダウンロードしたのは、この星の概略図だ。3Dグラフィックで描かれているが、細かい地形やそこに住む者たち、経済状況などまでは知ることはできない。簡単な世界地図のようなものだ。
「俺たちがいるのは、この星の規模からするとさほど大きい大陸ではないんだな」
楕円形に近いこの大陸は、地球のオーストラリア大陸と同じ程度の大きさで、この大陸の倍以上の大きさを持つ土地は、この星の上にあと三個ほど転がっている。星自体の直径は地球の一・七倍。その分表面積も多く、海の水の量も多い。
多分、この大陸のほとんどの人は、他の大陸と関りを持ったことはもちろん、海の向こうに人が住んでいると思ったこともないかもしれない。
「先ほどから何を一人でブツブツ呟きながら納得しておる。そなた、ゴーレムのくせに何かキメたか?」
「……そういう文化はやっぱりこっちにもあるんだな。けど大丈夫だ。何らおかしくはなっていない」
アカシックレコードに常に接続し続けた場合、流れ込んでくる情報でおかしくなりそうな気はするが、幸いにも接続時間も、回数も限られている。その少ない限界値の中でやりくりするのが、俺の役目だ。
尤も、その限界値を俺は知らないのだが。
「それで、何かわかったのか?」
「ああ。マベッツは、地殻とか、星の中心とか、そのあたりの知識って何か持っているか?」
「星の、中心? 星というのは、この大地のことであろう? 中心というからに、この地が丸くできておると言うことくらいは、何となく知っておるが……」
技術、文明は近代以前とは言え、星が丸いことを証明する術はいくつもある。高い山に登って海を眺めるだけで何となく察することはできるし、そもそも地球球体説の初出は古代ギリシャだったはず。
マベッツが星の観測や自身の移動の過程で知りえたのか。とにかく、彼女は星という概念を理解している。
「その球体には、必ず中心があって、表面がある。地殻っていうのは、その表面だ」
俺は体内で砂を焼いてガラスを造ると、それを球体に加工して取り出した。印刷機になったり研磨機になったり、ゴーレムというより万能ボックスになってきた。
「このガラス玉、中は空洞なんだ。ほら」
「おっと。ふむ、確かに軽い。光もさほど曲がっておらん。これだけでも売り物になりそうだの」
「ありがとう。で、そのガラスの表面が地殻になる。さほど厚くない地表面。その下にはこの星を構成する物質が存在する」
「……ではなんだ? この星の中身は、ほとんど溶岩ということか?」
理解が速くて助かる。ただ正確には溶岩ではなく、マントルが存在し、その主成分はかんらん石だ。地球内部の音響調査や掘削探査をしていなければ、地下から溢れるもの、つまりマグマが内部に溜まっていると思っても仕方がないだろう。
「マグマもあるけど、マントルっていう地殻の下はほとんど個体だよ。もちろん、俺たちはそこまで深くを目指すわけじゃないけど」
アカシックレコードからもたらされたこの星の概略図によれば、地殻の厚さは平均して約八十キロメートル。海底でも二十キロメートルあるようで、大きさに比例するように地殻も厚い。
「魔子の供給源は、この星の中心にある」
そこに、俺たちはこれから近づくのだ。
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