第十四話「アザーワールド」.3
「――とはいってもな、鉄は道具に使えるからまだしも、金は何に使えるんだろうか」
天文学者や惑星科学者の友人に聞いたことがある。地球はその生い立ちからダイヤモンドや金が少ない惑星だが、宇宙には丸ごと希少金属でできている星があるかもしれない。
もしもそんな星が発見されたら、地球では希少とされるダイヤモンドや金の価値は鉄や銅より下落するだろう。この世界が希少金属の大量に発掘される世界だとしたら、天然資源大量発見で喜んではいられない。
「ハダン、君たち装飾品なんか身に着けているヒトがいなかったと思うけれど、そういったものはないのか?」
「ありますよ。でもそれは他の部族との交易用だったり、族長の儀式用だったりですから、ボクらが使うことはありません」
「交易用か儀式用かってことは、あまり造られていない感じか」
少なくとも、今のところ彼らの間に貨幣経済は見られない。マベッツに聞けばある程度教えてもらえるだろうが、彼女は彼女で半世紀級の引きこもりだ。実地調査は不可欠と言える。
「これから他種族と物々交換も増えるかもしれないし、金やダイヤを集めておいてもいいかもしれないな」
「なんじゃ。人間相手に商売でも始めるつもりか?」
「……やっぱり人間には、金銀財宝がいい土産なのか?」
「我ら魔に属する者にとって、金も銀も魔術の触媒じゃが、あ奴らにとって身を飾る贅沢品よ。我のように、魔術を強化する作用などありもせんのにな」
なるほど、彼女の装飾は単なる見栄ではない。地球でも宝石に魔力が宿るという話を聞いたことがあるが、この世界では魔術を助ける触媒のようだ。
「ルツたちのために、そう言った装飾品は作れないのか? 今調べているだけでも、結構な金属、宝石の埋蔵を確認できているぞ」
「ただ量だけあってもな。魔子を大量に含んだ土地で発掘された金属であれば、特殊な強化付与が施された装飾品となるじゃろう。この土地で採れるのは、どちらであろうか」
「素材によって違うのか」
「作り手の技量にもよるの。より高度な技術、魔子を操る術に長けた者の作り出した装飾品や武具の類は、時にたった一人の弱卒に軍を退ける力を与えるとされる」
ゲームで言うところの、チートアイテムっていうところか。マベッツ曰く、そのような逸品を生み出す作り手は、千年に一人の逸材だという。
魔剣、聖剣の伝説というのも、そう言った作り手に生み出されたものらしい。
「まー、我の生み出したゾンビ共が剣の一薙ぎで吹き飛ばされたときは怒りを超えてむしろ冷静になって逃げたわ。あの聖剣の担い手も、真っ当な人間なら今頃七十八十のジジイかの?」
「それ人魔統一国家を建国した勇者じゃないよね?」
だとしたらこいつは半世紀の間とんでもない奴らに喧嘩を売り続けてきたことになる。
「気にせんでよい。それより、調査はまだかかりそうなのか?」
「いや。もう終わったところだ。大体この空間の内部構造は把握できた」
ゴーレムの目の下に小さな空洞を造ると、頭の中に出来上がった地図を吹き出すつもりで力を籠める。すると、カタカタカタカタ、と音を立てて紙が排出される。もちろん、現代日本のコピー用紙みたいな上質な紙ではなく、雑草やイネ科植物に似た植物を使って作った繊維質の紙だ。
そこに草木を焼いて煤状にしたものを水に溶かした墨汁で全体の構造を記録していく。
「なんか小学校のころ使った墨汁に比べてびちゃびちゃなんだけど……なんで?」
正しい墨汁の作り方はさすがに知らないから、多分何かが足りないんだろう。
『虚空情報統合体への接続を――』
「キャンセル!」
危うく(多分)貴重な接続権を使われそうになりながら、何とか風穴の地図は完成した。
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