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第十四話「アザーワールド」.1



 簡易版ゴーレムトレインは、文字通り簡易版だ。

 車両は一両だけ、大きさも人間二人で余裕があればそれで十分。

 乗り込むのはマベッツとルツ、そしてハダンの三人だけ。

 この人選をしたのは、マベッツだった。


「地下空間に赴くのは、我ら三人だけにしよう」

「君たち三人だけ?」

「そうじゃ。我は言わずもがな魔子の扱いに関しては誰よりも長けている自負と自信がある。反論は?」

「ない」


 そうじゃろう、と表情筋こそ動くことはないが、嬉しそうにしているのはわかる。


「ハダンはリスボンの代表であり、これから赴く場所を知り、仲間たちに支持を出す必要があろう。何と言ったかな、皆に指示を出す、ニンゲンの工事の、その――」

「現場監督」

「そうそれじゃ! ハダンにはその才があると思わぬか?」

「異論なし」


 そうしてハダンが付いてくることも決まった。


「そしてルツ。彼女はサイクロプスであるが体が小さく、我らとともにお主に乗りやすい。彼女にはその目で魔子を観測してもらいたい」

「サイクロプスの目は特別って話だったっけ?」


 ルツの方を見ると、彼女は嬉しそうに頷く。


「はい。我らサイクロプスの目は、人間には見えぬ者も見通せますし、魔子の濃度や違いを見極められます。それは炎の中で魔子の宿った鍛造物の変化を見極めるために、鍛治の神が施したと聞いています」

「なるほど、それが君たちの先祖か」


 サイクロプスもまた、神の一柱に属する者だったと言う。ならば、サイクロプスの始祖たる存在がいたとしてもおかしくはないし、彼らの体内に宿る怪獣と同じ仕組みの心臓も、そのあたりが関係しているかもしれない。


「マベッツは、自分以外に魔子の状態を見極められるヒトが欲しかったんだな」

「そういうことである。それに」

「それに?」

「そなたの第三の目が、魔子に反応して開眼するやもしれんぞ」


 そう言われて、ルツは額を抑える。

 覚醒眼(ジャガンナ)――未だに開花しないルツの特性。

 別段急ぐ必要はないものと思われるが、マベッツは何か考えがあるようだ。


覚醒眼(ジャガンナ)についての知識は我も余り多くはない。だがその力がかつて神と肩を並べた巨人のものであるのなら、使えるに越したことはあるまい。何せ、これから向かうのは全く未知の世界なのじゃからな」


 未知、それは地下世界についてだけではない。これから遭遇するかもしれない、ウォヘブ・アオバの同類や、ヴォロードガヴィルのような他所からの外来種を含めている。


「そういえば、なんでリスボンやサイクロプスは、人魔統一国家に参加しなかったんだ?」

「ボクたちリスボンは、魔王様に独立を承認されていましたし、隠れるのは得意ですし」

「簡単なお話です。お呼びがかからなかったんです」


 リスボンは魔王の懐刀と言われるほど斥候に長けた部族だ。それが参加しなかったのは、自らの独立性故。そしてサイクロプスは、統一国家の領域から遠く離れていた故に、参加する機会がなかったのだろう。


「なら、気にする必要はないんだな」

「はい。お気兼ねなく、私たちをお導きください」


 その言葉に、俺はゴーレムトレインの上で頷いた。


「よし。じゃあ乗ってくれ。地下空間へ向けて、出発だ」



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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