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第十三話「地下世界へ向けて」.4


 翌日。

 トバルたちの歓迎会を終えた俺たちは、さっそく作業を開始することにした。

 ヤバルとユバルの兄弟は、サイクロプスというデカい食い扶持の増えたこの状況でしっかり食料生産と保存を行えるようになるための作業から入った。

 ここは異世界。日本の樹海とは生態系が全く違う。

 確かにここは家畜を育てたり、放牧したりするには不向きだが、動物がいないわけではない。そのほとんどが上位獣(ビースト)と呼ぶべき存在だが、魔獣やら怪獣やらでもない限りこの兄弟に心配はなかった。

 周辺地域の調査を含め、土地の改良、食料確保を任せた。

 一方で、俺とマベッツ、そしてルツ、トバル、ハダンは村の外の井戸に注目した。


「この井戸、手で掘ったんだよな?」

「もちろん。サイクロプスたちから譲り受けた掘削機を用いて、曾祖父の代に水場探しを含めて一か月ほどかけたとか」

「深さはせいぜい四、五メートルってところか。確か、このくらいだと比較的浅い井戸のはずだから……まだ地表から脱していないくらいだな」


 サイクロプスの里に向かうとき、ゴーレムトレインはかなりの深さにまで一度潜った。

 その時、大量の魔子を感知したと同時に、広大な空間らしき観測データを手に入れている。この世界は地下に近づくほど魔子は高まり、俺の能力は活発化する。

 そしておそらくだが、怪獣や魔獣と呼ばれる存在もまた、強化される。


「マベッツ、怪獣たちの魔子って、人間やみんなと同じように供給されているんだよな」

「大気から取り込んでおるのかということならその通りであるし、同時に違うともいえる。上位獣(ビースト)たちはその心臓部に、自ら魔子を生み出す機能を備えておる。どういう原理なのかは未だに解明できていないが、あの巨体や肉体を、ただの食事と筋肉だけで維持できるはずもない」


 体が巨大であればあるほど、消費するエネルギーは大きい。いくらこの樹海が緑豊かと言っても限界はある。なら、それを補う何かを持っていても、おかしくはない。


「その点では、サイクロプス、そなたらも同じじゃろう。わずかでも体内より現れる魔子が、そなたらの巨体を支えておる」

「旧き時代に、魔王よりそう告げられ、傘下に加えられたと聞いたことはありますが」

「わたくしのように小さい者もおります故、あまり実感がわきませんわね」


 顔を見合わせる親子に、まぁそうじゃろう、とマベッツも頷く。


「大量の魔子は、時に生物の体の調和を崩す毒にもなりえる。慎重に行かねば、思わぬしっぺ返しを食らうぞ」

「わかってる。帯水層が十メートル以内で、風穴が最低でも地下四十メートル地点。掘っていくとなると、それなりに時間がかかりそうだな」


 井戸から少し離れたところ。トバルが最初に木々をぶっ飛ばしてできた空き地は、昨日のゴーレムトレインの停留所兼掘削箇所になっていた。

 俺は運んでくれたルツの腕から飛び降りると、地面に手を付いた。


「ここから真下に掘っていく。みんな、覚悟はいいな」

「もちろんだよ」

「委細、抜かりなく!」


 マベッツとルツの言葉に頷き、俺は自らを変形させる。

 本当は、井戸を掘るような感覚で、トバルやハダンたち、現地の人に掘ってもらおうかとも考えた。けれど、それはまだあとでいい。多くの者たちが移動するための穴がそもそも必要だし、まだ何があるかもわからない。


「ゴーレムトレイン、簡易バージョン!」


 掘削形態に変形し、マベッツたちが後ろに乗り込んだ。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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