第十二話「天の啓示」.3
聖天使――マベッツはミシュ・モーガンのことをそう呼んだ。
「いやだなぁ。そんな種族名で呼ばないでくれよ。ミシュって呼んでよ」
「ではミシュ。我を人魔統一国家の覇道に反発し、故郷を追われたリッチと知ってなお、その態度を崩さぬか」
「ボクはあの国の首席顧問だからね。彼らの利益になるための行動をするし、仲の悪いヒトには、よくなってほしいと思っているよ」
カンッ、とマベッツの持つ杖が地面を叩く。
「それで、こやつに何を求める?」
「国家の首席顧問が個人に要求とか取引なんてしていいのかよ」
男装の麗人はふわっとした笑みを浮かべると、首を横に振る。
「そんな堅苦しいものじゃないさ。特別な、意志を持ったエンシェント・ゴーレム。君の存在を知覚しているのは、まだこの世界ではごくわずかだ。ボクがその一人なのは、エンジェルとしての権能のおかげなんだけど……それは、まあいいや」
「天啓頼りの奉仕種族め」
マベッツは、あまりエンジェルが好きではないらしい。基本的にノリの軽い彼女が、ここまで嫌悪感を露わにするということは、おそらく過去に対立したのだろう。
「世にも珍しいエンシェント・ゴーレムに、さらに意志が宿った。その力を使い、君は樹海の一角を吹き飛ばすほどの攻撃をして見せた。警戒するのはもちろん、友好的になろうとするのも、おかしな話じゃない」
「人魔統一国家的には、俺みたいな存在は許せるのか?」
「人も魔も、全てを受け入れることを信条とする我らがバージュリタ。許さぬ者は、平和を乱す者のみさ」
つまり、現状ではどうやってもマベッツには、この大地は生きづらい場所ということだ。
それはともかく――。
「俺に何をしろって言うんだ?」
「今のところ何も。ただ今日はご挨拶に来ただけさ。君がこれから何をするにしろ、何もしないにしろ、その存在は世界に大きな影響を与える――と思うんだよね」
「……曖昧だな」
「ヴォロードガヴィルなんて言う大魔獣を倒したんだ。君はそれを誇るだけの力を持つよ」
俺としては、あれがどれほどの脅威なのかは把握していないから何とも言えないが、褒められたと言うことだろう。
「君が何者であったとしても、これだけは覚えておいて欲しい」
「……なんだ?」
「世界は平和を望んでいる。君の友人の、かつての友人もそうさ」
俺は、マベッツをちらっと見る。彼女は微動だにしない。ただ、努めてそうしているようにも見えた。
「ならば、その平和を崩そうとしている者のことは、ミシュ様は把握していらっしゃいますか?」
この会話の中で、初めてルツが口を開いた。彼女の言葉に、ミシュは少し目を細めた。
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